現金を相続する際の注意点
現金を相続する際の注意点
相続の中でも必ず入ってくると言ってもいい現金や預貯金ですが、現金を相続する場合、評価額が分かりやすく相続人で分配しやすい反面、評価額が分かりやすいため相続人同士のトラブルが起きたり、知らないうちに、課税対象になっている場合も少なくありません。そういったトラブルやペナルティを避けるためには現金の相続に対しての知識が必要になってきます。
■もくじ
現金を相続する際の注意点
相続での現金と預金の違いとは?
現在、相続において現金と預金の違いはほとんどなく、取り扱いはほぼ同じと考えて大丈夫です。
以前は、預金と現金での相続分の決め方が違ったため、分けて考えないといけませんでしたが、現在どちらも遺産分割の対象となっています。
遺産分割協議で現金は分配される
被相続人が残した財産を相続する場合、遺産分割協議で誰がどのくらい財産を相続するかを決め分配するようになっています。遺産分割協議では、相続人全員が参加し、全員の合意によって財産の分配が決まります。現金も遺産分割協議の対象となり、全員が合意しなければ現金を手にすることはできません。
平成28年12月からは預金も遺産分割協議の対象に
平成28年12月以前では、法定相続分によって決められた金額を直接引き出すことが可能でした。しかし、平成28年12月、預貯金も遺産分割の対象となると最高裁で判決が下されました。上記の判例以降、相続人全員の合意がなければ、法定相続分であっても口座から預金を引き出すことが難しくなりました。
相続対象の現金を隠蔽した場合
相続対象となる現金を隠蔽してしまった場合、刑事罰に処される可能性があります。タンス預金などが見つかった場合も、速やかに申告しなければ、財産を隠蔽したとみなされてしまいます。
もし、現金を隠蔽しており、税務調査が入って指摘されてしまうとペナルティとして過少申告加算税や延滞税のほか、重加算税も徴収されることになります。ペナルティを避けるためにも、現金は隠さずに申告することをおすすめします。
現金を相続するメリットとデメリット
現金を相続する場合、メリットとデメリットがどちらも存在します。両者をよく理解して対策を練り相続を開始した方が無難です。これから現金を相続する際にはぜひ参考にしてください。
現金を相続するメリット
現金を相続するメリットとして以下が挙げられます。
複数の相続人がいても公平に分配できる
遺言書で明確に相続分が分配されている場合は問題ありませんが、そうでなかった場合、財産を公平に分配しなければ、相続人同士で揉めてトラブルになってしまう可能性があります。
しかし、現金は不動産のような評価額で変わってくる財産と比べて公平に分配しやすくなっています。相続人全員で均等に分配しやすいのでトラブルを回避しやすくなります。
相続完了後すぐに利用することができる
現金を相続した場合、手続きが完了次第すぐに利用することができます。不動産などの財産の場合、売却する際に買い手を見つけたりと、現金化する為に様々な手続きが必要になってきます。
そして、不動産などを相続税の納税に回すことはできませんが、現金であればそのまま支払いをおこなうことが可能です。
現金を相続するデメリット
現金を相続する場合のデメリットとしては、主に支払いや税金に関することです。現金を相続する際に相続人同士のトラブルが起きるケースは多くありません。
現金は全てが課税の対象となる
現金を相続する際のデメリットとして税金の支払いが難しくなることが挙げられます。相続税はそれぞれの財産に対し、時価で評価されます。
しかし、現金や預貯金は金額に応じて課税対象となりますので、現金や預貯金が多ければ多いほど相続税の負担額が多くなります。
取り分の差によって相続人同士のトラブルが起こることも
現金で相続をすると、より細かく分配できるのでトラブルは起こりくくなりますが、現金や預貯金などの価値がわかりやすい財産は少しの差があるだけで、相続人同士の揉め事へと発展する可能性があるので注意が必要です。
現金にかかる相続税について
相続人が一定の額を上回る財産を相続した場合に、相続税が発生します。財産には不動産や有価証券などのほか、現金が必ず含まれると考えていいでしょう。現金は相続したそのままの金額で評価されるので、相続税の手続きもスムーズに進む場合がほとんどですが、現金の取り扱いに注意が必要な点も多く存在します。
現金を相続する場合の課税について
相続が発生した場合、受け継いだ財産の評価額が一定以上の額を超えた場合、その超過分に対して課税される仕組みになっています。
一定の額(基礎控除額)は法定相続人の数によって変わってきます。法定相続人に順位が決められていて、順位の高い人が優先的に相続人となります。配偶者は必ず相続人になり、もし、第一順位に該当する人がいない場合は、第二順位の人に相続の権利が移ることになります。
第一順位 | 子供 |
---|---|
第二順位 | 親 |
第三順位 | 兄弟姉妹 |
現金の相続税を計算する方法
相続税は、すべての財産の評価額の合計に基づき計算します。現金はいくら、不動産はいくらと分けるのでありません。
評価額は、相続税評価額で算出することになっているため、不動産や有価証券などの評価をする際に専門的な知識が必要になってきます。しかし、現金に関してはそのままの額が評価額になるので手間はかかりません。
相続税の計算方法
相続税を算出するには法定相続分に応ずる取得金額(課税対象額)がいくらになるかを確認しなければいけません。確認方法としては以下になります。
- 相続によって取得した財産の評価額を合計する。もし、相続時精算課税を利用していた場合その評価額も加える
- 上記の評価額から、葬式費用や債務を差し引く
- 被相続人が死亡する3年以内におこなわれた生前贈与の総額を上記に加える
- 上記から基礎控除額を差し引く
上記で課税対象額が確定し、法定相続分に応じた相続税を算出することができます。
法定相続分の割合
配偶者と子供 | 配偶者1/2 | 子供1/2 |
---|---|---|
第二順位 | 配偶者2/3 | 子供1/3 |
第三順位 | 配偶者3/4 | 兄弟姉妹1/4 |
相続税の税率
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
生前贈与をする際の3つのポイント
相続税を減らす手段として生前贈与があります。生前贈与とは被相続人が存命中に、自身の財産を贈与して相続税の課税対象額を少なくする方法です。
生前贈与で毎年110万円は無課税で贈与できる
生前贈与では、一定の額が超えてしまうと贈与税が課されます。この場合、贈与税の支払いをするのは財産を受け取った人です。
そして、贈与税には一定の枠(基礎控除額)が設けてあり、基礎控除は1年間(1月1日~12月31日まで)の贈与に関して110万円と決められています。年間の贈与額を110万円に収めれば課税することなく財産を渡すことができます。
現金手渡しの生前贈与は税務署に指摘される
毎年同じ時期に現金を贈与し、毎年続けてしまうと定期贈与とみなされてしまう可能性が高くなります。
現金を相続する場合は専門家にお願いする
現金を相続する場合、とくに気をつけないといけないのが、税務署の調査が入ってしまい本来支払う金額よりも高い金額を支払って損をしてしまうことです。生前贈与や定期贈与に関して詳しい専門家に依頼するのが、相続登記を成功させる近道となります。
当社には相続登記に特化した司法書士が在任しているので、まずはお気軽に相談してください。