不動産を相続する場合の手続き・費用について

不動産を相続する場合の手続きについて

相続とは、人が亡くなったときに、その人の配偶者や子などが財産を引継ぐことを指します。亡くなった方が不動産を所有していた場合、その所有権を、財産を引継ぐ相続人に移転する必要があります。これを相続登記(名義書換)と言います。

民法では、遺産を誰がいくら相続するのかについての目安である「法定相続分」を定めています。例えば、妻と娘息子一人ずつを持つ人が亡くなったとします。妻が1/2、子どもが残りの1/2を2人で分けた1/4が法定相続分ということになります。

通常は、相続する権利があることを知った時から10カ月以内に登記をして、相続税の納税をしなければいけません。

相続税は基礎控除が3000万円、それに加えて法定相続人の数×600万円が控除になりますので、相続した全資産から控除額を差し引いた残額に対してかかります。

また、配偶者の取得財産の価額が、1億6000万円、または配偶者の法定相続分の2つのうち、どちらか高い方までが非課税となる配偶者控除という制度があります。高額の資産を持っている人の場合は、この配偶者控除を使って、相続税がかからないようにすることも可能です。

不動産相続に必要な書類

不動産を相続する際に必要な書類は以下の通りです。

  • 被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本(出生時から死亡時まで一連の全ての戸籍謄本)
  • 被相続人の住民票の除票(本籍の記載のあるもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本(被相続人死亡日以降のもの)
  • 相続人全員の印鑑登録証明書
  • 不動産を相続する相続人の住民票
  • 遺産分割協議書
  • 不動産の登記事項証明書

戸籍や住民票、印鑑証明書は、本籍地や住所地の市区町村役場で取得できます。不動産の登記事項証明書は、登記所又は法務局証明サービスセンターの窓口での交付請求のほか,郵送による交付請求や,インターネットを利用してオンラインによる交付請求を行うこともできます。

「遺産分割協議書」とは、相続人全員で遺産の分け方についての話し合いをすることを遺産分割協議といい、その協議の結果を記した書面をいいます。遺産分割協議書には、相続人全員が実印を押印し、印鑑登録証明書を添付します。

不動産を相続する場合の相続税

相続税の税率は遺産の額に応じて、10%から55%まで8段階に分かれています。相続税の税率や計算方法は、国税庁のウェブサイトに掲載されています。

相続税の納付は財産を相続した相続人が行います。相続税を納付する際には「納付書」が必要となります。納付書は最寄りの「税務署」で入手し、相続人が自身で税金の計算をして記入します。

相続税の納付は、銀行や信用金庫、郵便局などの金融機関で取り扱いが可能です。税務署の窓口やコンビニでの納付もできるほか、クレジットカードで分割して支払うこともできます。

相続税は、相続する権利があることを知った時から10カ月以内に納税しなければいけません。納付期限を1日でも過ぎてしまうと、延滞税がかかってきます。

相続税以外にかかる費用

手続きにかかる費用は、登記料が15万円ほどかかります。登記料の内訳は、司法書士の報酬と登録免許税(固定資産評価額の0.4%)、そして、戸籍等の書類の交付手数料(実費)となります。

司法書士の報酬は事務所によって異なりますが、一般的に不動産の評価額が高ければ、それに比例して報酬も高くなります。

相続登記の費用を誰が払うかは相続人の話し合いで決めます。相続した不動産を売却して、売却代金を分ける場合は、皆で負担し、特定の相続人がその不動産を相続する場合は、その人が負担するケースが多いです。

不動産を分割して相続する方法

不動産の分割方法には、主に以下の4つがあります

現物分割

不動産を書く相続人に物理的に分割する方法です。例えば土地だと「分筆登記」をして完全に分ける方法が用いられています。

分筆登記とは、土地登記簿上の一個の土地の土地を分割して数個の土地にするという登記のことです。不動産が複数ある場合は、各相続人が相続する不動産を選んで分けるということもあります。

換価分割

不動産を「売却」して、その売却金額を分割する方法です。不動産を分けるのが難しい場合は、不動産を売却し、お金にして分割すると公平に分けることができます。ただし、売却金額に対して所得税と住民税がかかります。

代償分割

相続人の1人が不動産を相続し、遺産を取得していない相続人には相続すべき不動産の持分相当額の対価を金銭で支払う方法です。

共有

不動産を相続人共有の財産とする方法です。この方法は不動産を物理的に分割せずに、不動産全体を相続人がそれぞれの割合で共有します。ただし、権利関係が複雑になり、不動産を売却する際は共有者全員の同意が必要となります。

被相続人が生前に遺言書を残していた場合は、遺言書に書かれた内容に従って、遺産の受取人に指定された人が遺産を相続しますが、遺言がない場合は、被相続人の財産は、法定相続人全員が法定相続分の割合で共有している、と法的にはみなされます。相続人全員で協議して、遺産分割について同意したら、遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書を書く際は手書き、パソコンのどちらでも作成が可能ですが、相続人の名前・住所だけは手書きの方が望ましいとされています。相続人全員が各自一通ずつ原本を保管します。遺産分割協議書は、法務局で不動産の相続登記手続きを行う際、登記申請書に添付する必要があります。

日本リーガル司法書士事務所の代表司法書士 計良宏之

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