遺産相続に借金が含まれている場合の注意点
遺産相続に借金が含まれている場合の注意点
受け継いだ遺産の中に借金が含まれていた場合、財産を引き継いだ相続人はその借金を代わりに返済しないといけません。
そのため、遺産の中に借金が含まれていないかを確認することが重要です。
遺産の中にもし、借金が含まれていた場合は、相続放棄をおこなうことによって借金を相続しなくてよくなります。
遺産に借金が含まれていないかの確認の仕方や相続放棄の手続きの流れを知っていくことが、負の遺産を相続しないために重要です。
■もくじ
遺産相続には借金も含まれる
遺産相続とは、被相続人(亡くなった人)の遺産を全て相続することをいいます。
遺産には、現金や預金・不動産などのプラスの遺産のほかに、マイナスの財産も含まれてきます。
マイナスの財産が高額だった場合、生活に大きな影響がでてしまう可能性があります。そのことから、遺産相続の際はプラスの財産のみではなくマイナスの財産がいくらあるのかを調べる事が大切です。
プラスの財産を調べる方法
現金や預貯金の確認は金融機関で残高証明書を発行してもらう
被相続人が使っていた銀行などの金融機関へ行き預貯金の残高が分かる残高証明書を発行してもらいます。また、株式なども残高証明書を発行してもらえるので、証券会社に申請をおこないます。
不動産の確認は市区町村役場で固定資産課税台帳を発行してもらう
不動産については、市区町村役場から納税通知書が届いているので、通知書によって被相続人の所有している土地や建物を確認することができます。
もし、納税通知書が見つからない場合は、市区町村に出向き固定資産課税台帳を発行してもらい確認することができます。
また、登記されていない不動産が見つかる可能性もあるので、遺品の中に不動産売買契約書がないか確認してください。
マイナスの財産を調べる方法
通帳や郵便物を確認する
借金がある場合、預金口座からの引き落としが一般的なので、通帳を確認して、毎月一定額の引き落としがないか確認してください。
また郵便物の中に、カード会社からの督促状や請求が含まれていないかを確認してください。
不動産の登記簿謄本を確認
不動産の登記簿を確認して、不動産を担保にしていないか調べる事ができます。
もし、抵当権が設定されていた場合、被相続人が不動産を担保にして高額の借金をしている可能性があります。
不動産を相続した場合、その不動産を担保にしていないかどうかを確認した方が無難です。
信用情報機関に問い合わせる
信用情報機関でクレジット会社や消費者金融からの借り入れの情報を確認することができます。
手数料は1000円程度で、情報を開示してもらえ、借り入れの状況を調査することができます。
遺産相続したときの対処法
プラスの財産が多ければ単純承認
遺産を調査し、プラスの財産が明らかに多い場合は単純承認で問題ありません。
単純承認とは、通常の相続のことで、被相続人の財産を相続人が全て受け継ぐことをいいます。
単純承認では、プラスの財産のほかマイナスの財産も受け継ぐことになりますが、調査をしてプラスの財産が明らかに多いので安心して相続することができます。
注意してほしいのが、預貯金はあまり残っておらず不動産が多い場合です。不動産がなかなか売れないと、相続人自身の預貯金を使い、借金を返済をする必要があります。
相続する際には、財産の性質にも注意してください。
マイナスの遺産を相続したときの対処法
マイナスの財産が多ければ相続放棄
調査をして、借金がプラスの財産よりも明らかに多い場合には、相続放棄することで対処できます。
相続放棄とは、全ての財産を放棄することをいい、プラスの財産も放棄することになります。
預貯金や不動産を相続することはできませんが、被相続人の借金の支払いも支払う必要がなくなります。
マイナスの財産が多ければ相続放棄
遺産の調査を進めると、借金をしていることは分かったが、正確な金額が分からず、プラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合は、限定承認の手続きをするのが一般的です。
限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を返済する仕組みになっており、プラスの財産とマイナスの財産の両方を受け継ぐことになります。
借金の金額によっては、残ったプラスの財産を相続できる場合もありますが、限定承認をおこなうには、相続人全員の合意のもと、相続人全員で限定承認の手続きを進める事になります。
限定承認の手続きは、1番複雑なので通常司法書士などの専門家に依頼して手続きを進めます。
相続放棄の注意点
相続放棄する際には以下の点に気をつけてください。
相続放棄をするには裁判所での手続きが必要
相続放棄は、相続開始してから3カ月以内に家庭裁判所で手続きする必要があります。
熟慮期間の3カ月の間に相続放棄するか、他の手続きをおこなうかを決めなければいけません。
相続放棄の手続きをおこなう場合、相続放棄申述書を作成し、他の必要書類と一緒に家庭裁判所へ提出します。
必要書類 | 被相続人の戸籍の附表か住民票の除票・申述人の戸籍謄本・被相続人の死亡が確認できる戸籍謄本 |
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相続放棄は撤回できない
相続放棄を選択する場合、相続できる権利を全て放棄することになります。やり直しはできず、相続放棄の手続きをおこなうと、撤回して他の手続きをおこなうことはできなくなります。
相続権が他の親族に移動する
相続放棄をした場合、他の相続人に相続する権利が移ります。他の相続人の相続分が増えたり、相続人ではない親族が新たに相続人の権利を持つことがあります。
被相続人の借金を免れるためには、相続の権利をもつすべての相続人が相続放棄をしなければいけません。
親族間のトラブルを避けるためにも、相続を知ったらすぐに連絡を取り合い、意見を合わせて相続放棄をするのが無難です。
相続放棄の手続き方法・必要書類
借金が多く、相続放棄をしたい場合はどのように手続きを進めるべきか、相続放棄の手続きの必要種類と手続きの流れは以下になります。
必要書類を揃える
手続きに必要書類
- 被相続人の死亡が分かる戸籍謄本
- 被相続人の住民票か戸籍附表
- 申述人の戸籍謄本
申述人が第二順位、第三順位の相続人の場合、集める戸籍が多くなります。
相続放棄申述書に必要事項を記入し、家庭裁判所に提出する
必要書類が集まったら、相続放棄申述書を作成します。
相続放棄申述書は、家庭裁判所のホームページでダウンロードでき、記載する際の見本も載っているので参考にしてください。
相続放棄の申述書の作成が完了したら、必要書類全て合わせて家庭裁判所に提出します。
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。郵送もでき提出には800円の収入印紙が必要になってきます。
相続放棄の照会書を返送する
必要書類が集まったら、相続放棄申述書を作成します。
相続放棄の申立てをおこなうと、相続放棄をしたかどうかの照会書が約1~2週間後に送られてきます。
相続放棄の意思の確認、被相続人が亡くなった日をいつ知ったかなどの調査をされます。
申立書に矛盾がある場合、裁判所で説明を求められる場合もあるので、正確に回答して、裁判所に返送しましょう。
相続放棄申述受理通知書が交付される
照会書を返送し、問題がなければ相続放棄申述通知書が郵送されます。この通知が届いたら相続放棄の手続きは完了です。
借金を相続した場合の相続税の計算
単純承認の手続きで、借金を相続してしまった場合、相続税では借金などのマイナスの財産はプラスの財産から差し引き計算します。
借金は債務控除となる
相続税は、相続財産の価格から、亡くなった人が残した借金や葬式にかかった費用などを差し引いて課税価格を計算します。このことを債務控除といいます。
プラスの財産 | 土地等・建物・現金・預貯金・有価証券・生命保険金・その他の財産 |
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マイナスの財産 | 借金などの債務・葬式費用 |
相続税の計算の仕方は純資産価額から、基礎控除(3000万円+法定相続人の数×600万円)を差し引いた金額を課税遺産総額といいます。この金額に対して相続税が課税されます。
相続に借金が含まれている場合は専門家に相談する
相続に借金が含まれており、いくら借金があるのが不安な方は、どの手続きを選べばいいか分からないと思います。受け継いだはいいが借金の遺産の方が多く、生活に影響がでてしまったというケースも少なくありません。
相続を失敗しないためにも、相続の知識を持った専門家に依頼することが、相続で失敗しない手段の一つです。被相続人に借金が含まれていて、どの手続きを選べばいいか分からないときは当社にご相談してください。
当社在籍の現役司法書士が相続人の状況に合わせ最適なご提案をさせていただきます。