債務不履行(さいむふりこう)について詳しく解説

債務不履行とは、債務者が正当な理由なく債務(法的な義務)を履行(実行)しないことを指します。具体的には、約束した期日までに借金を返済しない、契約で定めた商品を納品しないなど、法的な義務を果たさない状態のことです。

債務不履行が発生すると、債権者は損害賠償請求や契約解除などの法的措置を取ることができます。債務整理を検討する方にとって、債務不履行の意味と法的効果を理解することは重要です。

債務不履行とは

債務不履行とは、債務者が正当な理由なく、契約や法律で定められた債務(義務)を履行(実行)しないことを指します。民法では、債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときに債務不履行が成立すると規定されています。

債務不履行の成立には、原則として債務者の「帰責事由」(故意・過失など、債務者の責任に帰すべき事由)が必要です。不可抗力(地震・台風など)や第三者の行為によって履行できない場合など、債務者に帰責事由がない場合は、債務不履行の責任を負わないこともあります。

債務不履行の成立要件

  • 債務の存在:有効な契約や法律に基づく債務が存在すること
  • 履行期の到来:債務を履行すべき期限が来ていること
  • 履行の不存在:債務者が債務を履行していないこと
  • 帰責事由:債務者に故意・過失などの責任原因があること(原則)

このリストは債務不履行が成立するための主な要件を示しています。これらの要件がすべて満たされると、債務不履行が成立し、法的な効果が発生します。

債務不履行の種類

債務不履行は、履行の態様によって以下の3つの種類に分類されます。

履行遅滞 履行期(期限)が到来しているにもかかわらず、債務者が債務を履行しない状態です。履行自体は可能ですが、期限内に履行されていない状況を指します。例えば、借金の返済期日を過ぎても返済しない場合などが該当します。
履行不能 債務の履行が物理的・法律的に不可能になった状態です。例えば、売買契約の目的物が滅失した場合や、法律の改正により履行が違法になった場合などが該当します。履行遅滞と異なり、履行自体が不可能になっています。
不完全履行 債務の履行はあったものの、その内容が契約で定められた内容に適合していない状態です。例えば、欠陥のある商品を納品した場合や、約束した品質や性能を満たしていない場合などが該当します。

上記の表は債務不履行の3つの主な種類とその内容を示しています。債務整理の文脈では、主に履行遅滞(返済期日を過ぎても返済できない状態)が問題となります。

金銭債務における債務不履行

借金などの金銭債務における債務不履行の特徴は以下の通りです。

  • 金銭債務は原則として履行不能にならない(「金銭は常に準備できる」という考え方)
  • 金銭債務の履行遅滞は、履行期が到来した時点で当然に発生する(催告不要)
  • 金銭債務の履行遅滞には、不可抗力による免責が認められにくい
  • 履行遅滞に陥ると、元本に加えて遅延損害金(利息)の支払い義務が生じる
  • 遅延損害金の利率は、契約で定められていない場合は法定利率(年3%、2020年4月以降)となる

このリストは金銭債務における債務不履行の主な特徴を示しています。金銭債務は他の債務と比べて、債務者にとって厳しい責任が課される傾向があります。

債務不履行の法的効果

債務不履行が発生すると、債権者は以下のような法的措置を取ることができます。

損害賠償請求 債務不履行によって生じた損害の賠償を請求できます。賠償の範囲は、債務不履行と相当因果関係のある損害(通常損害と特別損害)です。金銭債務の場合は、元本に加えて遅延損害金が請求されます。
強制履行 可能な場合は、裁判所を通じて債務の強制的な履行を求めることができます。金銭債務の場合は、債務者の財産に対する強制執行(差押えなど)が行われます。
契約解除 債務不履行が重大な場合、債権者は契約の解除を主張できます。解除すると、契約は最初から無かったことになり(原状回復)、既に給付した分の返還を請求できます。
同時履行の抗弁権 双務契約(両当事者が互いに債務を負う契約)の場合、相手が債務を履行するまで自分の債務の履行を拒否できる権利が発生します。
受領遅滞 債権者が正当な理由なく債務の履行を受け入れない場合、債務者は供託などにより債務から解放される可能性があります。

上記の表は債務不履行の主な法的効果を示しています。債務整理の文脈では、特に損害賠償請求と強制履行(差押えなど)が重要です。

遅延損害金(延滞金)について

金銭債務の履行遅滞の場合、元本に加えて「遅延損害金」(延滞金)が発生します。

遅延損害金の計算 元本 × 遅延損害利率 × 遅延日数 ÷ 365日
遅延損害利率 契約で定められている場合はその利率(上限あり)
定められていない場合は法定利率(2020年4月以降は年3%)
計算期間 履行期の翌日から実際に支払いがあるまでの期間
利息制限法の上限 元本10万円未満:年20%
元本10万円以上100万円未満:年18%
元本100万円以上:年15%

上記の表は遅延損害金の計算方法と利率を示しています。契約で定められた遅延損害利率が利息制限法の上限を超える場合、上限利率まで引き下げられます。

債務不履行と債務整理の関係

債務不履行(特に借金の返済遅延)が続くと、債権者からの法的措置や生活への影響が大きくなります。債務整理は、そうした状況を解決するための手段です。

債務不履行の進行と債権者の対応

  1. 返済期日の経過(債務不履行の開始)
  2. 債権者からの督促状や電話による催促
  3. 催告書(最終通告)の送付
  4. 裁判手続きの開始(訴訟、支払督促など)
  5. 債務名義の取得(判決、支払督促など)
  6. 強制執行(差押え競売など)

このリストは借金の債務不履行が進行した場合の一般的な流れを示しています。早い段階で適切な対応を取ることで、より深刻な事態を回避できる可能性があります。

債務不履行が続く場合の債務整理の選択肢

任意整理 債権者と個別に交渉して、将来利息のカットや分割返済などの条件変更を行います。裁判所を介さない私的整理の一種で、比較的早期の段階で効果的です。
特定調停 簡易裁判所を通じて債権者と返済条件の変更について話し合います。任意整理が難しい場合や、複数の債権者との一括交渉が必要な場合に有効です。
個人再生 裁判所を通じて債務を大幅に減額(最大で5分の1まで)し、残りを3〜5年で分割返済します。債務不履行が長期化し、任意整理では対応できない場合に検討します。
自己破産 裁判所に申立てを行い、債務の支払い義務をなくします。債務不履行の状態が深刻で、返済の見込みがない場合の最終手段です。

上記の表は債務不履行が続く場合の主な債務整理の選択肢を示しています。どの方法が適しているかは、債務の総額、収入状況、資産状況などによって異なります。

債務整理のタイミング

  • 返済日に遅れ始めた段階:債権者に連絡して返済計画の相談
  • 複数の返済が遅れている段階:任意整理の検討
  • 督促状が届き始めた段階:専門家(弁護士・司法書士)への相談
  • 裁判手続きの通知が届いた段階:速やかに専門家に相談し、適切な対応
  • 差押えの通知が届いた段階:個人再生や自己破産の検討

このリストは債務不履行の進行状況に応じた債務整理のタイミングを示しています。早期の段階での対応ほど、選択肢が広がり、生活への影響を最小限に抑えられる可能性が高まります。

債務不履行に関するよくある質問

一時的に返済が遅れただけでも債務不履行になりますか?

法律上は、返済期日を1日でも過ぎると債務不履行(履行遅滞)の状態になります。ただし、実務上は短期間の遅延であれば、債権者が厳しい措置を取ることは少ない傾向があります。

一時的な返済の遅れが予想される場合は、事前に債権者に連絡して状況を説明し、返済計画を相談することが重要です。多くの債権者は、誠意ある対応を示す債務者に対しては、一定の猶予を与えることがあります。

債務不履行で訴えられたらどうなりますか?

債務不履行で訴えられると、裁判所から訴状が送達され、期限内に答弁書を提出するよう求められます。答弁書を提出しないと、原則として債権者の主張通りの判決(欠席判決)が出されます。

訴えられた場合は、争う余地があれば答弁書で主張し、争う余地がなければ裁判所での和解を検討することも可能です。いずれにしても、訴状が届いたら速やかに専門家(弁護士・司法書士)に相談することをおすすめします。判決が確定すると、債権者は強制執行(差押えなど)の手続きを取ることができるようになります。

債務不履行が信用情報に与える影響は?

金融機関や信販会社は、債務不履行(延滞)の情報を信用情報機関に登録することがあります。一般的に、61日以上の延滞で「延滞情報」として登録され、「事故情報」として扱われます。

信用情報機関に延滞情報が登録されると、いわゆる「ブラックリスト」状態となり、新たなローンやクレジットカードの審査に通りにくくなります。この情報は通常5〜7年間保存され、その間は金融サービスの利用に制限がかかることがあります。延滞を解消しても、一定期間は記録が残ります。

まとめ

債務不履行とは、債務者が正当な理由なく債務(法的な義務)を履行(実行)しないことを指します。履行遅滞、履行不能、不完全履行の3つの種類があり、債務整理の文脈では主に履行遅滞(返済期日を過ぎても返済できない状態)が問題となります。

債務不履行が発生すると、債権者は損害賠償請求、強制履行、契約解除などの法的措置を取ることができます。金銭債務の履行遅滞では、元本に加えて遅延損害金(延滞金)が発生し、債務額が増加していきます。

債務不履行(特に借金の返済遅延)が続くと、債権者からの催促や法的措置が段階的に強まり、最終的には差押えなどの強制執行に至る可能性があります。このような状況を解決するためには、任意整理、特定調停、個人再生、自己破産などの債務整理の方法があります。

債務不履行の状態に陥った場合は、放置せずに早期に対応することが重要です。債権者との交渉や専門家への相談を通じて、適切な解決策を見つけることが、より深刻な事態を回避するための鍵となります。状況に応じた債務整理の方法を選択し、生活の再建を図りましょう。

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