債権者平等の原則(さいけんしゃびょうどうのげんそく)について詳しく解説

債権者平等の原則とは、債務整理や破産手続きにおいて、すべての債権者を公平・平等に扱うべきという基本的な法原則です。債務者の財産が債務の全額を返済するのに不足している場合、一部の債権者だけが優遇されることなく、各債権者が公平に扱われるべきという考え方です。

この原則は、民法や破産法などの様々な法律に反映されており、債務整理手続きの根幹を成しています。ただし、担保権や優先権がある債権については例外的な扱いがあるため、必ずしもすべての債権者が同じ割合で弁済を受けるわけではありません。

債権者平等の原則とは

債権者平等の原則は、「平等弁済の原則」とも呼ばれ、債務者の財産が全ての債権を弁済するのに十分でない場合、債権者間で公平に分配されるべきという法的理念です。この原則は、特定の債権者だけが優遇されたり、特定の債権者の利益だけが保護されるような不公平な状況を防ぐためにあります。

具体的には、債務者が支払不能状態にある場合、各債権者に対して債権額に応じた比例的な弁済(按分弁済)を行うことを意味します。これにより、債権額の大小にかかわらず、各債権者は公平に扱われることになります。

債権者平等の原則の根拠法
  • 民法(民事執行法)
  • 破産法
  • 民事再生法
  • 会社更生法
  • 特定調停法

この表は債権者平等の原則が反映されている主な法律を示しています。これらの法律では、債務者の財産の公平な分配に関する規定が設けられています。

歴史的背景

債権者平等の原則は、古くは「競売法の基本原則」として発展してきました。中世ヨーロッパでは、債務者の財産を債権者間で分配する際に不公平が生じることが多く、これを解決するために平等分配の考え方が広まりました。

日本においても、明治時代の民法制定以来、この原則は債務整理制度の基本的な考え方として採用されています。現代の債務整理手続きにおいても、この原則は重要な役割を果たしています。

債権者平等の原則が適用される場面

債権者平等の原則は、主に以下のような債務整理手続きにおいて適用されます。これらの手続きでは、債務者の財産や返済能力に応じて、各債権者に公平に弁済が行われるよう定められています。

自己破産における適用

自己破産では、債務者の財産(破産財団)を換価して得た金銭を、債権者に分配します。このとき、原則として債権額に応じた比例配当が行われます。

例えば、債務者の財産が100万円で、A社に300万円、B社に200万円、C社に500万円の債務がある場合、A社は30万円、B社は20万円、C社は50万円を受け取るという形になります(単純な例として、優先権等は考慮していません)。

民事再生(個人再生)における適用

個人再生では、債務者が再生計画に基づいて返済を行いますが、この計画においても債権者平等の原則が適用されます。すべての一般債権者が同じ弁済率で返済を受けることが基本となります。

例えば、個人再生で最低弁済額が100万円の場合、1000万円の債務があれば10%の弁済率となり、各債権者は債権額の10%ずつを受け取ることになります。

任意整理における適用

法的手続きではない任意整理においても、債権者平等の原則は尊重されるべきとされています。一部の債権者だけを著しく優遇する内容の和解は、他の債権者から異議が出される可能性があります。

ただし、任意整理は債権者との個別交渉によるため、結果として債権者間で和解条件に差が生じることはあります。しかし、極端な不平等は避けるべきという考え方が基本にあります。

債務整理手続きと平等原則の適用度
  • 自己破産:厳格に適用される
  • 個人再生:原則的に適用される
  • 任意整理:尊重されるべきだが柔軟性がある
  • 特定調停:尊重されるべきだが柔軟性がある

この表は債務整理の種類ごとの債権者平等の原則の適用度を示しています。法的手続きほど厳格に適用され、任意整理のような私的整理では比較的柔軟な運用がなされています。

債権者平等の原則の例外

債権者平等の原則は基本的な法理念ですが、すべての債権が同等に扱われるわけではありません。法律上、一定の債権には優先的な地位が認められています。これらの例外について見ていきましょう。

担保権付債権

抵当権、質権、譲渡担保などの担保権が設定されている債権は、その担保物から優先的に弁済を受ける権利があります。担保権は債権者平等の原則の例外として認められています。

例えば、住宅ローンでは不動産に抵当権が設定されており、債務整理をしても、その不動産からは住宅ローンの債権者が優先的に弁済を受けることができます。

優先債権

法律によって優先的に弁済を受ける権利が認められている債権があります。これらは「優先債権」と呼ばれ、一般の債権よりも優先して弁済されます。

  • 租税債権(国税、地方税)
  • 労働債権(未払賃金など)
  • 社会保険料債権(健康保険料、年金保険料など)
  • 共益債権(破産手続きの費用など)
  • 小額債権(少額の売掛金など)

上記の優先債権は、法律で定められた順位に従って弁済されます。一般債権者への弁済は、これらの優先債権の弁済後に行われることになります。

劣後債権

一般債権よりも弁済順位が低い「劣後債権」も存在します。これらは一般債権者への弁済が完了した後に、残余財産がある場合のみ弁済されます。

  • 約定劣後債権(契約で劣後性が定められた債権)
  • 破産法上の劣後的破産債権(罰金、過料、延滞税など)
  • 利息債権・遅延損害金(破産手続開始後に発生したもの)

これらの劣後債権は、実際には債務者の財産が不足していることが多いため、弁済を受けられないケースが大半です。

破産手続きにおける弁済順位
  1. 担保権付債権(担保物の価値の範囲内)
  2. 財団債権(破産手続きの費用など)
  3. 優先的破産債権(租税債権、労働債権など)
  4. 一般破産債権(無担保の消費者金融借入など)
  5. 劣後的破産債権(罰金、延滞税など)

この表は破産手続きにおける弁済の優先順位を示しています。上位の債権が完全に弁済された後に、次の順位の債権の弁済が行われます。

債権者平等の原則に違反する行為と影響

債務者が特定の債権者だけを優遇するような行為は、債権者平等の原則に違反する可能性があります。このような行為は、法的な制裁を受けることがあります。

偏頗弁済(へんぱべんさい)

偏頗弁済とは、債務者が支払不能状態にありながら、特定の債権者だけに弁済をすることを指します。このような行為は他の債権者を害するものとして、破産法上の否認権の対象となります。

例えば、自己破産直前に親族への借金だけを返済したり、特定の業者だけに支払いを行ったりする行為は、偏頗弁済と見なされる可能性があります。

否認権(ひにんけん)

否認権とは、債務者が行った偏頗弁済などの行為を無効にして、財産を取り戻す権利です。破産管財人再生委員が行使します。

否認権の対象となる行為には、以下のようなものがあります。

  • 支払不能後の特定債権者への弁済
  • 破産手続開始前の担保権設定
  • 破産手続開始前の財産隠匿や贈与
  • 著しく不利な条件での取引

これらの行為が否認された場合、財産は破産財団に戻され、すべての債権者のために使用されることになります。

免責不許可事由との関係

自己破産において、債権者平等の原則に著しく反する行為を行った場合、免責不許可事由に該当する可能性があります。免責が認められないと、借金が帳消しにならず、生活の再建が難しくなります。

特に破産法第252条に定められている「破産手続開始の申立て前1年以内に、破産債権者を害する目的で、財産を隠匿、損壊、債権者に不利益な処分をしたとき」などの行為は、免責不許可事由となります。

債権者平等の原則に違反する主な行為
  • 特定の債権者だけに返済する
  • 親族や知人の債務だけを優先的に返済する
  • 債務整理直前に新たな借入れをする
  • 財産を隠匿したり、無償で譲渡したりする
  • 架空の債務を作り出す

この表は債権者平等の原則に違反する可能性のある主な行為を示しています。こうした行為は法的な問題を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

よくある質問

債権者平等の原則があるのに、なぜ担保権者が優先されるのですか?

担保権は、債権者と債務者の間で特定の財産に対して設定された特別な権利であり、法律上も保護されています。債権者平等の原則は主に無担保債権者間での平等を意味しており、担保権の効力を否定するものではありません。

担保権が認められる理由としては、金融取引の安全性や信用の確保があります。担保権が認められなければ、融資を受けることが難しくなる場合もあります。

任意整理で一部の債権者と和解ができない場合、債権者平等の原則に反しますか?

任意整理は、各債権者との個別交渉による和解であるため、すべての債権者と同条件で和解できるとは限りません。一部の債権者と和解できなかったとしても、それ自体が債権者平等の原則に反するわけではありません。

ただし、意図的に特定の債権者を優遇する内容の和解を繰り返し行う場合は、他の債権者から異議が出されたり、法的手続きに移行せざるを得なくなったりする可能性があります。

過払い金返還請求は債権者平等の原則に反しませんか?

過払い金返還請求は、不当に支払った利息の返還を求めるものであり、債権者平等の原則とは直接関係ありません。過払い金は本来債務者のものであり、債権者が不当に受け取った金銭を取り戻す行為です。

ただし、債務整理手続き中に過払い金が発生した場合、その処理方法については債権者平等の原則を考慮する必要がある場合もあります。

個人再生で住宅ローン特則を利用する場合、債権者平等の原則に反しませんか?

個人再生における住宅ローン特則は、住宅ローン債権を再生計画から除外し、従来通りの返済を続けることを認める制度です。これは法律で特別に認められた例外であり、債権者平等の原則に反するものではありません。

この特則は、債務者の住居を確保するという社会政策的な目的があり、また住宅ローンには通常担保権が設定されているため、例外的な取扱いが認められています。

まとめ

債権者平等の原則は、債務整理や破産手続きにおける基本的な法原則であり、債務者の財産を債権者間で公平に分配するという考え方です。すべての債権者が債権額に応じた比例的な弁済を受けることで、公平性を確保します。

ただし、担保権付債権や優先債権など、法律によって例外的に優先的な地位が認められている債権もあります。これらの債権は、一般債権よりも優先して弁済を受けることができます。

債務者が特定の債権者だけを優遇するような偏頗弁済や財産隠匿などの行為は、債権者平等の原則に違反し、否認権の対象となる可能性があります。また、自己破産においてはこうした行為が免責不許可事由に該当することもあるため、注意が必要です。

債務整理を検討する際は、債権者平等の原則を理解し、特定の債権者だけを不当に優遇するような行為は避けるべきです。適切な債務整理を行うためには、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、法律に則った手続きを進めることが重要です。

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