裁判上の和解(さいばんじょうのわかい)について詳しく解説

裁判上の和解とは、民事訴訟や債務整理手続きにおいて、当事者(債権者と債務者)が裁判所の関与のもとで互いに譲歩し、合意によって紛争を解決する手続きのことです。裁判所の判決を待たずに当事者間の合意で紛争を解決できるため、時間や費用を節約できる大きなメリットがあります。

裁判上の和解が成立すると、それは判決と同等の効力(既判力や執行力)を持ちます。つまり、和解内容に従わない場合は、判決と同様に強制執行が可能となります。債務整理においては、債務の減額や返済条件の緩和などについて債権者と合意するための重要な手段となります。

裁判上の和解とは

裁判上の和解とは、民事訴訟法第89条に規定されている手続きで、裁判所に係属中の訴訟や債務整理手続きにおいて、当事者同士が裁判所の立会いのもとで互いに譲歩し、紛争を自主的に解決する合意のことです。

和解は裁判所の強制ではなく、あくまで当事者の自由意思に基づく合意によるものですが、裁判所が関与することで公正な解決が図られます。裁判官は和解案を提示したり、当事者間の交渉を促進したりする役割を担います。

法的根拠 民事訴訟法第89条〜第267条
和解が可能な時期
  • 訴えの提起後から判決確定前まで
  • 控訴審や上告審でも可能
和解の当事者
  • 訴訟の原告と被告
  • 債権者と債務者
  • 必要に応じて関係する第三者
和解の内容
  • 請求の全部または一部の放棄・認諾
  • 債務の支払条件や減額
  • 紛争解決のための新たな合意

この表は裁判上の和解に関する基本情報をまとめたものです。和解は訴訟の係属中いつでも成立させることができ、当事者の合意次第で様々な内容を定めることができます。ただし、公序良俗に反する内容や明らかに違法な内容は和解内容にできません。

裁判上の和解の効力

裁判上の和解が成立すると、それは単なる当事者間の合意を超えた強力な法的効力を持ちます。主な効力について説明します。

既判力(確定判決と同等の効力)

  • 和解内容について、後に再び裁判で争うことができなくなる
  • 和解条項で定められた権利義務関係が確定する
  • 訴訟が終了する(訴訟係属の終了)
  • 同一の事項について新たな訴えの提起が制限される
  • 和解成立後、同一事項について判決が出された場合は無効となる

上記のリストは裁判上の和解が持つ既判力についての説明です。既判力とは、一度確定した判決と同じように、和解の内容について後から再び裁判で争うことができなくなる効力のことです。これにより、紛争の蒸し返しを防ぎ、法的安定性が確保されます。

執行力(強制執行の根拠となる効力)

裁判上の和解には、確定判決と同様に強制執行を可能にする執行力があります。

執行力の内容
  • 和解内容が守られない場合、強制執行により実現できる
  • 別途執行文の付与を受ける必要がない(債務名義となる)
  • 財産の差押え競売などの強制執行手続きが可能
執行の対象となる条項
  • 金銭の支払いを約束する条項
  • 物の引渡しを約束する条項
  • 特定の行為を行うことを約束する条項
執行できない条項
  • 将来の交渉を約束するだけの条項
  • 権利の確認だけを行う条項
  • 執行方法が明確でない不明確な条項

この表は裁判上の和解の執行力に関する説明です。和解内容が守られない場合、判決と同様に強制執行によって実現することができます。ただし、執行力が認められるのは、具体的な給付を定めた条項(金銭支払いや物の引渡しなど)に限られます。

形成力(法律関係を変動させる効力)

  • 契約の解除や変更を内容とする和解の場合、その効力が直接発生する
  • 権利関係の変動が和解成立時から直ちに効力を持つ
  • 登記や登録が必要な権利変動の場合、その手続きの根拠となる
  • 債務の一部免除や返済条件の変更が即時に効力を生じる

上記のリストは裁判上の和解が持つ形成力についての説明です。形成力とは、和解によって法律関係を直接変動させる効力のことです。例えば、債務の一部を免除する和解が成立した場合、その合意は即時に効力を持ち、債務が減額されます。

裁判上の和解の手続き

裁判上の和解を成立させるための一般的な手続きの流れを説明します。実際の手続きは事案や裁判所によって異なる場合がありますので、専門家に相談することをおすすめします。

和解へ至る主な流れ

  1. 訴えの提起または申立て(裁判所に訴状を提出)
  2. 裁判所からの和解勧告または当事者からの和解申出
  3. 和解条項案の作成・検討
  4. 和解期日の設定
  5. 和解期日における協議
  6. 和解条項の最終調整
  7. 和解調書の作成
  8. 和解の成立

上記のリストは裁判上の和解に至る一般的な流れです。訴訟の提起後、裁判所が積極的に和解を勧めることも多く、当事者同士も互いの主張を聞いた上で和解を検討します。和解期日では裁判官の立会いのもとで具体的な条件を協議し、合意に至れば和解調書が作成されます。

和解条項の作成

和解条項は和解の内容を具体的に記載したものであり、後のトラブルを防ぐために明確かつ具体的に作成することが重要です。

和解条項の主な記載事項 記載内容の例
債務の認否
  • 「被告は、原告に対し、金○○円の債務があることを認める。」
支払条件
  • 「被告は、原告に対し、前項の債務を次の通り分割して支払う。」
  • 「令和○年○月○日までに金○○円」「令和○年○月○日までに金○○円」
債務減額
  • 「原告は、被告に対する金○○円の債権のうち金○○円を放棄する。」
期限の利益喪失条項
  • 「被告が分割金の支払いを1回でも怠ったときは、当然に期限の利益を失い、残債務全額を直ちに支払う。」
担保設定
  • 「被告は、本和解による債務を担保するため、原告のために被告所有の不動産に抵当権を設定する。」
訴訟費用の負担
  • 「訴訟費用は各自の負担とする。」

この表は和解条項に記載される主な事項とその記載例をまとめたものです。和解条項は後のトラブルを防ぐために、支払条件や債務減額の内容を明確に記載することが重要です。特に期限の利益喪失条項は、分割払いの約束が守られない場合の対応を定める重要な条項です。

和解調書の作成と効力

和解が成立すると、裁判所書記官によって和解調書が作成されます。この調書は重要な法的文書となります。

  • 和解調書には、和解の日時、場所、出席者、和解条項などが記載される
  • 裁判官と裁判所書記官が記名押印する
  • 当事者には和解調書の正本または謄本が交付される
  • 和解調書は公文書であり、改ざんすることはできない
  • 和解調書は確定判決と同一の効力を持つ債務名義となる

上記のリストは和解調書の作成と効力についての説明です。和解調書は裁判所の公文書であり、確定判決と同等の効力を持つ重要な文書です。和解内容が守られない場合は、この調書に基づいて強制執行を申し立てることができます。

債務整理における和解の活用

債務整理の場面では、裁判上の和解が様々な形で活用されています。代表的な活用方法について説明します。

特定調停での和解

特定調停は、民事調停法と特定債務等の調整の促進のための特定調停に関する法律に基づく手続きで、債務の返済に困っている人が裁判所で債権者と話し合い、返済条件などを調整する制度です。

特定調停の特徴
  • 裁判所が当事者の間に立って話し合いを進める
  • 調停委員会が和解案を提示することもある
  • 債権者と直接対面せずに手続きを進められることも多い
  • 費用が比較的安い(収入印紙代は大体1,000円程度)
和解内容の例
  • 将来利息のカット
  • 元金の分割払い(3〜5年程度)
  • 一部元金の減額(状況により)
  • 返済条件の緩和(月々の返済額減額など)
メリット
  • 債権者全員と一度に交渉できる
  • 裁判所の関与により公平な解決が期待できる
  • 成立した調停は裁判上の和解と同じ効力を持つ

この表は特定調停における和解の特徴と内容をまとめたものです。特定調停は債務整理の一種として広く利用されており、比較的低コストで債務の調整ができるメリットがあります。調停が成立すると、それは裁判上の和解と同様の効力を持ち、法的に保護されます。

訴訟上の和解を活用した債務整理

債権者が債務者に対して訴訟を提起した場合や、債務者が債権者に対して債務不存在確認の訴えを提起した場合など、訴訟係属中の和解も債務整理に活用されます。

  • 過払金返還請求訴訟における和解
  • 貸金請求訴訟における和解
  • 保証債務に関する訴訟での和解
  • 住宅ローン債務に関する訴訟での和解
  • 連帯債務者間の求償権に関する訴訟での和解

上記のリストは訴訟上の和解を活用した債務整理の例です。例えば、過払金返還請求訴訟では、具体的な返還額について和解で合意することがあります。また、貸金請求訴訟では債務額の減額や分割払いの条件について和解が成立することがあります。

個人再生手続きにおける和解

個人再生手続きの中でも、債権者との和解が活用されるケースがあります。

  1. 債権者が再生計画案に反対した場合の個別和解
  2. 住宅資金特別条項の適用に関する金融機関との和解
  3. 債権額の確定に関する和解
  4. 再生手続き開始前の保全処分に関する和解
  5. 再生計画認可後の履行に関する和解

上記のリストは個人再生手続きにおける和解の例です。例えば、債権者が再生計画案に反対している場合、個別に和解交渉を行い、同意を得る努力をすることがあります。また、住宅資金特別条項を適用する際には、住宅ローンの返済条件について金融機関と和解することもあります。

和解のメリットとデメリット

裁判上の和解には様々なメリットとデメリットがあります。債務整理を検討する際には、これらを理解した上で和解の利用を判断することが重要です。

和解のメリット

メリット 内容
時間の節約
  • 判決を待つより早期に解決できる
  • 証拠調べなどの手続きを省略できる
  • 上訴による長期化を避けられる
費用の節約
  • 訴訟を継続するよりも弁護士費用を抑えられる
  • 証人尋問などの費用が不要になる
  • 上訴費用が不要になる
柔軟な解決
  • 判決では認められない柔軟な解決方法を採用できる
  • 分割払いなど当事者の事情に応じた条件設定が可能
  • 法律上の権利義務を超えた合意も可能
確実性
  • 判決の結果が不確実なのに対し、和解は内容が確定している
  • 上訴によって覆される心配がない
関係の維持
  • 判決による白黒つけるよりも当事者間の関係を損なわない
  • 将来的な取引関係の継続の可能性を残せる

この表は裁判上の和解のメリットをまとめたものです。特に債務整理においては、時間と費用の節約、返済条件の柔軟な設定が可能であることが大きなメリットとなります。また、判決と異なり、双方が納得する形で解決できるため、精神的な負担も軽減されます。

和解のデメリット

  • 互いに譲歩するため、全面的な勝訴よりも条件が悪くなる可能性がある
  • 法律上の権利を十分に主張できない場合がある
  • 相手方が和解に応じない場合は成立しない
  • 和解内容が不明確だと後にトラブルの原因になる
  • 和解が成立すると原則として撤回や取消しが困難
  • 和解内容に瑕疵があっても判決と同様の効力を持つ

上記のリストは裁判上の和解のデメリットについての説明です。特に債務整理においては、債権者が十分な譲歩をしない場合や、和解内容が債務者の返済能力に見合わない場合などのリスクがあります。和解を検討する際には、これらのデメリットも考慮した上で判断することが重要です。

よくある質問

裁判上の和解と裁判外の和解の違いは何ですか?

最大の違いは法的効力です。裁判上の和解は確定判決と同等の効力(既判力や執行力)を持ちますが、裁判外の和解は単なる契約に過ぎず、相手が約束を守らない場合は改めて訴訟を提起する必要があります。

また、裁判上の和解は裁判所の関与があるため公正性が担保されやすく、和解条項も明確に定められることが多いです。裁判外の和解は当事者間の交渉で柔軟に進められますが、内容が不明確だと後にトラブルの原因になることもあります。債務整理では、強制執行が可能な裁判上の和解の方が債権者の履行を確保する上で有利といえます。

和解が成立した後に、やはり条件が厳しいと感じた場合はどうすればよいですか?

原則として、裁判上の和解が成立すると、それを一方的に取り消したり撤回したりすることはできません。和解には確定判決と同等の効力があるためです。ただし、以下のような例外的な場合には、和解の無効や取消しを主張できる可能性があります。

例えば、和解の意思表示に錯誤があった場合(民法第95条)、詐欺や強迫によって和解に応じた場合(民法第96条)、和解内容が公序良俗に反する場合(民法第90条)などです。しかし、これらを理由に和解を覆すのは非常に困難です。したがって、和解条件を受け入れる前に、弁護士などの専門家に相談し、十分に検討することが重要です。

和解による分割払いの途中で支払いが困難になった場合はどうなりますか?

和解条項に「期限の利益喪失条項」が含まれている場合(多くの場合含まれています)、1回でも支払いを怠ると残債務全額の一括払い義務が生じます。その場合、債権者は和解調書に基づいて強制執行を申し立てることができます。

支払いが困難になりそうな場合は、事前に債権者に連絡して事情を説明し、支払条件の変更について交渉することをおすすめします。また、状況によっては再度裁判所に申し立てて和解条件の変更を求めることも考えられますが、債権者の同意がなければ困難です。収入が大幅に減少するなど生活状況が著しく変化した場合は、個人再生や自己破産など他の債務整理手続きの検討も必要かもしれません。いずれにせよ、支払いが困難になりそうな場合は早めに弁護士など専門家に相談することが大切です。

まとめ

裁判上の和解は、当事者が裁判所の関与のもとで互いに譲歩し、合意によって紛争を解決する手続きです。確定判決と同等の効力(既判力や執行力)を持ち、債務整理においては債務の減額や返済条件の緩和などについて債権者と合意するための重要な手段となります。

和解のメリットとしては、時間と費用の節約、柔軟な解決方法の採用、確実性、当事者間の関係維持などがあります。一方、デメリットとしては、互いに譲歩するため全面的な勝訴よりも条件が悪くなる可能性、和解が成立すると原則として撤回や取消しが困難であることなどが挙げられます。

債務整理においては、特定調停、訴

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