免責不許可事由(めんせきふきょかじゆう)について詳しく解説

免責不許可事由とは、自己破産手続きにおいて裁判所が債務者に対して免責(債務の支払義務を免除すること)を認めない理由となる事由のことです。破産法では、債務者が一定の不誠実な行為や不適切な経済行動を行った場合、免責を認めないとしています。

免責は自己破産の最大のメリットであり、免責が認められないと自己破産の意味が大きく減少してしまいます。そのため、自己破産を検討する際には、自分の行為が免責不許可事由に該当しないかどうかを事前に確認することが重要です。

免責不許可事由の種類

破産法では、免責不許可事由を「絶対的免責不許可事由」と「相対的免責不許可事由」の2種類に分けています。それぞれの特徴と違いを見ていきましょう。

免責不許可事由の分類
  • 絶対的免責不許可事由:これに該当すると原則として必ず免責が認められない
  • 相対的免責不許可事由:これに該当しても裁判所の裁量により免責が認められる場合がある

上記の表は免責不許可事由の基本的な分類を示しています。絶対的免責不許可事由に該当する場合は原則として免責が認められませんが、相対的免責不許可事由に該当する場合は、債務者の反省の程度や事情によっては免責が認められることがあります。

破産法における規定

免責不許可事由は破産法第252条に規定されています。同条では、第1項で絶対的免責不許可事由を、第2項から第10項までで相対的免責不許可事由を定めています。

破産法第252条第1項では「裁判所は、破産者について次に掲げる事由があるときは、免責許可の決定をしない」と規定し、第2項以降では「裁判所は、破産者について次に掲げる事由があるときは、免責許可の決定をしないことができる」と規定されています。この「しない」と「しないことができる」の違いが、絶対的と相対的の違いを示しています。

絶対的免責不許可事由

絶対的免責不許可事由は、破産法第252条第1項に規定されており、これに該当すると原則として免責が認められません。主な絶対的免責不許可事由を見ていきましょう。

破産手続きにおける義務違反
  • 裁判所の呼出しに正当な理由なく出頭しないなど、破産手続きに協力しない
  • 重要な事項について虚偽の説明をするなど、説明義務に違反する
  • 財産の隠匿や虚偽の債権者名簿の提出など、破産手続きを妨げる行為をする
詐欺破産罪等の犯罪
  • 詐欺破産罪、特定の債権者に対する担保供与の罪などに該当する行為をした
  • 財産を隠匿、損壊するなど、債権者を害する目的で財産処分をした
  • 帳簿の隠匿、偽造、変造などを行った

この表は主な絶対的免責不許可事由を示しています。これらの事由は、破産手続きにおける誠実さを欠く行為や、債権者を害する行為として重大視されています。ただし、免責についての意見聴取の期日において、裁判所が特に免責を許可すべき事情があると認める場合には、例外的に免責が認められることもあります。

具体的な行為例

絶対的免責不許可事由に該当する具体的な行為例を見ていきましょう。これらの行為は、自己破産を検討する際に絶対に避けるべきものです。

  • 破産申立て直前に、自宅や車などの財産を親族や知人に無償または著しく低い価格で譲渡する
  • 預金や現金を隠す、または使い切ってしまったと偽る
  • 債権者名簿に意図的に債権者の名前を記載しない
  • 裁判所や破産管財人の質問に対して嘘の回答をする
  • 裁判所からの呼出しに正当な理由なく応じない
  • 財産目録に財産を記載しない、または価値を著しく低く申告する
  • 帳簿や領収書などの重要書類を破棄する

このリストは絶対的免責不許可事由に該当する具体的な行為例を示しています。これらの行為は「詐欺破産」と呼ばれることもあり、免責が認められないだけでなく、刑事罰の対象となる可能性もあります。

相対的免責不許可事由

相対的免責不許可事由は、破産法第252条第2項から第10項に規定されており、これに該当しても裁判所の裁量により免責が認められる場合があります。主な相対的免責不許可事由を見ていきましょう。

浪費や射幸行為
  • ギャンブルや投機的取引による財産の著しい減少
  • 贅沢な生活による浪費
  • 借金して行ったギャンブルや投機的取引
過大な借入れ
  • 返済能力を超える借入れ
  • 支払不能状態での更なる借入れ
  • 詐術を用いた信用取引
破産手続きの遅延
  • 支払不能状態であることを知りながら、破産手続きの申立てを不当に遅延させる
再度の破産
  • 過去7年以内に免責を受けたことがある
偏頗弁済
  • 一部の債権者だけに返済するなど、特定の債権者を優遇する行為
その他
  • 破産手続き開始決定前の強制執行の不当な妨害
  • 免責不許可事由に該当することを知りながら、それを隠して免責を受けた前歴がある

この表は主な相対的免責不許可事由を示しています。これらの事由に該当しても、債務者の反省の程度や事情によっては免責が認められることがあります。特に経済的に追い込まれた状況での行為や、やむを得ない事情がある場合は、裁判所が裁量により免責を認めることが多いです。

具体的な行為例と判断基準

相対的免責不許可事由に該当する具体的な行為例と、裁判所がどのような基準で判断するかを見ていきましょう。

  1. ギャンブルや投機的取引:パチンコ、競馬、FX取引などで多額の損失を出した場合。ただし、趣味の範囲内での少額のギャンブルは問題にならないことが多い。
  2. 浪費:高級ブランド品の購入や高額な旅行など、収入に見合わない贅沢な生活をしていた場合。ただし、一時的なものや特別な事情がある場合は考慮される。
  3. 過大な借入れ:返済能力を超える借入れを重ねた場合。ただし、病気や失業などやむを得ない事情がある場合は考慮される。
  4. 破産手続きの遅延:支払不能状態で新たな借入れを続けた場合。ただし、生活費のためのやむを得ない借入れは考慮される。
  5. 偏頗弁済:親族や知人など特定の債権者だけに返済した場合。ただし、少額の返済や生活に必要な債務(家賃など)の返済は問題にならないことが多い。

このリストは相対的免責不許可事由に該当する具体的な行為例と判断基準を示しています。裁判所は債務者の行為の悪質性、反省の程度、債務に至った経緯などを総合的に考慮して判断します。

免責不許可事由に該当しないための注意点

自己破産を検討している方が、免責不許可事由に該当しないようにするための注意点を見ていきましょう。

破産申立て前の注意点
  • 財産を隠したり、譲渡したりしない
  • 特定の債権者だけに返済しない
  • 新たな借入れを極力避ける
  • ギャンブルや投機的取引を控える
  • 贅沢な買い物を控える
破産手続き中の注意点
  • 裁判所や破産管財人に対して正直に情報を開示する
  • 必要な書類をすべて提出する
  • 裁判所からの呼出しには必ず応じる
  • 質問には誠実に答える
  • 指示されたことは速やかに従う
免責審尋での注意点
  • 嘘をつかず、事実を正直に話す
  • 破産に至った経緯を簡潔に説明できるようにしておく
  • 反省の意を示す
  • 再建への意欲を示す
  • 裁判官の質問には丁寧に答える

この表は免責不許可事由に該当しないための主な注意点を示しています。自己破産は経済的に再出発するための制度ですが、誠実に手続きに臨むことが重要です。少しでも不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

専門家への相談の重要性

免責不許可事由に関する判断は複雑であり、自分の行為が該当するかどうか判断することは難しい場合があります。専門家に相談するメリットを見ていきましょう。

  • 過去の行為が免責不許可事由に該当するかの判断を受けられる
  • 免責不許可事由に該当しそうな場合の対応策を提案してもらえる
  • 裁判所への説明方法についてアドバイスを受けられる
  • 自己破産以外の債務整理方法(任意整理、個人再生など)の提案を受けられる
  • 免責審尋での対応方法について事前に準備できる

このリストは専門家に相談するメリットを示しています。弁護士や司法書士は多くの自己破産事例を扱っており、免責不許可事由に関する知識や経験が豊富です。自己破産を検討している場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。

免責不許可となった場合の対応

万が一、免責不許可事由に該当し、免責が認められなかった場合、どのような対応ができるのでしょうか。主な選択肢を見ていきましょう。

即時抗告 免責不許可決定に不服がある場合、2週間以内に高等裁判所に即時抗告することができます。ただし、免責不許可事由に該当することが明らかな場合は認められない可能性が高いです。
免責不許可事由を解消しての再申立て 免責不許可の理由となった事由を解消した上で、再度自己破産の申立てを行うことができます。ただし、再申立てが認められるかどうかは裁判所の判断によります。
時間経過後の再申立て 破産法上、過去7年以内に免責を受けたことがある場合は相対的免責不許可事由となりますが、逆に言えば7年経過後は再度申立てが可能です。
個人再生への切替え 自己破産での免責が認められない場合でも、個人再生手続きに切り替えることで債務の圧縮が可能な場合があります。ただし、定期的な収入があることなど、一定の要件を満たす必要があります。
任意整理への切替え 債権者と個別に交渉して、分割払いや利息のカットなどの和解を目指す方法です。ただし、債権者の同意が必要となります。

この表は免責不許可となった場合の主な対応策を示しています。どの方法が適しているかは個々の状況によって異なりますので、専門家に相談した上で判断することをおすすめします。

免責不許可後の生活

免責不許可となった場合、債務は残ったままとなり、債権者からの請求や強制執行が再開される可能性があります。そのような状況での生活上の注意点を見ていきましょう。

  1. 債権者との個別交渉:可能であれば債権者と個別に交渉し、分割払いなどの和解を目指す
  2. 差押禁止財産の把握:給与の一部や生活に必要な家財道具など、法律で差押えが禁止されている財産を把握しておく
  3. 新たな債務を作らない:状況をさらに悪化させないために、新たな借入れは極力避ける
  4. 家計の見直し:収入と支出を見直し、可能な限り支出を削減する
  5. 専門家への継続的な相談:状況に応じた適切なアドバイスを受けるために、専門家との相談を継続する

このリストは免責不許可後の生活における注意点を示しています。免責が認められなかったとしても、諦めずに専門家と相談しながら状況の改善を目指すことが大切です。

まとめ

免責不許可事由とは、自己破産手続きにおいて裁判所が債務者に対して免責(債務の支払義務を免除すること)を認めない理由となる事由のことです。破産法では、絶対的免責不許可事由と相対的免責不許可事由の2種類を定めています。

絶対的免責不許可事由には、破産手続きにおける義務違反や詐欺破産罪等の犯罪に関する行為が含まれ、これに該当すると原則として免責が認められません。相対的免責不許可事由には、浪費や射幸行為、過大な借入れ、破産手続きの遅延などが含まれ、これに該当しても裁判所の裁量により免責が認められる場合があります。

自己破産を検討する際は、免責不許可事由に該当しないよう注意することが重要です。特に財産の隠匿や虚偽の申告は絶対に避けるべきであり、破産手続き中は裁判所や破産管財人に対して誠実に対応することが大切です。少しでも不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

万が一、免責不許可となった場合でも、即時抗告、再申立て、個人再生や任意整理への切替えなど、いくつかの対応策があります。どの方法が適しているかは個々の状況によって異なりますので、専門家のアドバイスを受けながら、最善の方法を選択することが大切です。

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