時効の中断(じこうのちゅうだん)について詳しく解説

時効の中断とは、進行中の時効期間をリセットして、新たに時効期間を進行させる法的効果のことです。2020年4月の民法改正により、「時効の更新」という名称に変わりましたが、実務では「時効の中断」という用語も引き続き使われています。

債務整理や過払い金請求において、時効の中断(更新)は非常に重要な概念です。債権者側は時効を中断させて債権を保全し、債務者側は中断事由の有無を確認して時効の援用が可能か判断します。

時効の中断とは

時効の中断とは、進行中の時効期間をリセットして、再度最初から時効期間が進行する効果を生じさせるものです。例えば、10年の時効期間が8年経過した時点で中断事由が発生すると、それまでの8年間は無効となり、中断事由発生時点から新たに10年の時効期間が進行します。

時効制度は、一定期間権利が行使されないときにその権利を消滅させる制度ですが、権利者が権利を行使したり、義務者が義務を承認したりした場合には、時効を進行させる基礎が失われるため、時効が中断すると考えられています。

時効中断の意義 権利の行使や義務の承認により、それまでの時効期間の進行が無効となり、新たに時効期間が進行し始めること
時効中断の効果 それまで進行していた時効期間はリセットされ、中断事由が終了した時点から新たに時効期間が進行する
中断と停止の違い 中断はそれまでの時効期間をリセットするが、停止(現在の完成猶予)は一定期間時効の完成を遅らせるだけで、それまでの期間は有効

上記の表は時効中断の基本的な概念や効果をまとめたものです。債務整理や過払い金請求を検討する際には、時効が中断していないかを確認することが非常に重要です。中断事由が発生していると、時効が完成していないため、時効の援用ができなくなる可能性があります。

時効の中断と民法改正

2020年4月1日に施行された民法改正により、これまでの「時効の中断」という概念は「時効の更新」と「時効の完成猶予」に分けられました。実質的な効果に大きな変更はありませんが、用語や構成が整理されたことで、より分かりやすくなりました。

改正前の「時効の中断」 民法第147条で規定されていた概念で、裁判上の請求差押え仮差押え仮処分、債務の承認などにより時効期間がリセットされる効果
改正後の「時効の更新」 民法第147条に相当する概念で、権利についての協議を行う旨の合意、裁判上の請求、強制執行・仮差押え・仮処分、債務の承認などにより時効期間がリセットされる効果
改正後の「時効の完成猶予」 民法第150条などに規定される概念で、裁判外の催告、協議の合意、調停・審判の申立て、破産手続参加などにより、一定期間時効の完成が猶予される効果
改正の目的 時効制度をより分かりやすくするとともに、時効の中断事由を整理し、権利者の保護を図ること

上記の表は民法改正による時効制度の変更点をまとめたものです。「時効の中断」という用語は改正後の民法では使われなくなりましたが、実務では引き続き使われることも多いため、両方の用語を理解しておくことが重要です。

なお、改正前に発生した債権・債務については経過措置があり、原則として改正前の規定が適用されます。そのため、古い債権・債務の時効を判断する際には、改正前の「時効の中断」の概念についても理解しておく必要があります。

時効の中断(更新)事由

時効の中断(更新)事由は、改正民法第147条および第148条に規定されています。これらの事由が発生すると、それまでの時効期間がリセットされ、新たに時効期間が進行し始めます。主な中断(更新)事由は以下の通りです。

  • 裁判上の請求:訴訟の提起、支払督促の申立てなど
  • 支払督促の申立て:簡易裁判所に対する支払督促の申立て
  • 強制執行、仮差押え、仮処分:債権者が債務者の財産に対して強制執行などを行うこと
  • 債務の承認:債務者が債務の存在を認めること(一部弁済、利息の支払い、債務承認書の作成など)
  • 権利についての協議を行う旨の合意:改正民法で新たに追加された事由

上記のリストは主な時効の中断(更新)事由です。特に「債務の承認」は債務整理や過払い金請求で重要な意味を持ちます。例えば、借金の一部を返済した場合や、利息を支払った場合、返済計画を立てて債務者が署名した場合などは、債務の承認として時効が中断(更新)されます。

また、「裁判上の請求」も重要な中断(更新)事由です。債権者が訴訟を提起したり、支払督促を申し立てたりした場合、時効は中断(更新)されます。ただし、訴えが却下されたり、取り下げられたりした場合は、中断(更新)の効力は生じません。

時効の完成猶予事由

時効の完成猶予とは、一定の事由がある間およびその事由が終了した後一定期間、時効の完成が猶予される制度です。改正民法で導入された概念で、従来の中断事由の一部と停止事由が統合されたものです。主な完成猶予事由は以下の通りです。

裁判外の催告 債権者が債務者に対して履行を求める意思表示をすることで、その時から6ヶ月間時効の完成が猶予されます(民法第150条)。
協議合意による猶予 当事者間で権利についての協議を行う旨の合意をした場合、その合意の時から1年を経過するまでの間、時効の完成が猶予されます(民法第151条)。
調停・審判の申立て 調停や審判の申立てをした場合、その手続きの終了後(取下げ、却下、不調など)から6ヶ月間時効の完成が猶予されます。
破産手続参加 債権者が破産手続に参加した場合、その終了の時から6ヶ月間時効の完成が猶予されます。
天災等による障害 天災その他避けることのできない事変のため裁判上の請求などができないときは、その障害が消滅した時から3ヶ月間時効の完成が猶予されます。

上記の表は主な時効の完成猶予事由です。完成猶予事由があっても、時効期間自体はリセットされず、猶予期間が経過した後はそれまでの時効期間に引き続いて時効が進行します。これは、時効の中断(更新)とは大きく異なる点です。

特に重要なのは「裁判外の催告」で、債権者が電話や手紙で支払いを求めた場合などが該当します。ただし、催告から6ヶ月以内に裁判上の請求などの更新事由がなければ、催告による猶予の効力は失われます。

債務整理と時効の中断

債務整理を検討する際、時効の中断(更新)は非常に重要な要素です。債務整理の種類によって、時効の中断(更新)との関係も異なります。

  1. 任意整理と時効の中断:任意整理の交渉過程で、債務者が債務の存在を認める発言や書面の作成をすると、債務の承認として時効が中断(更新)される可能性があります。
  2. 個人再生と時効の中断:個人再生の申立てや債権届出により、時効が中断(更新)されます。再生計画が認可されると、再生計画に従った新たな債務が発生し、元の債務の時効は問題にならなくなります。
  3. 自己破産と時効の中断:破産手続開始決定により、破産債権の時効は中断(更新)されます。ただし、免責許可決定が確定すると、債務者は債務の責任を免れるため、時効の問題は実質的に解消されます。
  4. 特定調停と時効の中断:特定調停の申立ては時効の完成猶予事由となり、調停終了後6ヶ月間は時効の完成が猶予されます。調停が成立すると、新たな債務が発生し、元の債務の時効は問題にならなくなります。

上記のリストは債務整理の各方法と時効の中断(更新)の関係をまとめたものです。債務整理を検討する際は、時効が完成しているかどうかを確認し、完成している場合は安易に債務の承認をせず、専門家に相談することが重要です。

特に注意が必要なのは、債権者との交渉中に安易に債務の存在を認める発言や書面の作成をしてしまうと、時効が中断(更新)されてしまう可能性があることです。債務整理を検討する際は、最初に専門家に相談し、適切な対応方法を確認することをおすすめします。

過払い金請求と時効の中断

過払い金請求においても、時効の中断(更新)は重要な問題です。過払い金返還請求権は不当利得返還請求権の一種であり、時効期間は「権利を行使できることを知った時から5年間」または「権利を行使できる時から10年間」のいずれか早い方となります。

過払い金返還請求権の時効 「過払い金の発生を知った時から5年間」または「過払い金が発生した時から10年間」のいずれか早い方
過払い金請求と時効の中断 過払い金の返還を求める裁判上の請求(訴訟の提起など)、貸金業者による過払い金の存在の承認などにより時効が中断(更新)されます。
取引履歴開示請求と時効 取引履歴の開示請求自体は裁判上の請求ではないため、時効の中断(更新)事由にはなりません。ただし、貸金業者が過払い金の存在を認めて返還に応じる旨を通知した場合は、債務の承認として時効が中断(更新)される可能性があります。
継続的取引と時効 継続的な貸金取引がある場合、取引終了時に一括して過払い金返還請求権が発生するとみなされ、その時点から時効が進行するという考え方があります。ただし、個別の取引ごとに過払い金が発生するという考え方もあり、判例は分かれています。

上記の表は過払い金請求と時効の中断(更新)の関係をまとめたものです。過払い金請求を検討する際は、取引終了時期や過払い金の発生を知った時期を確認し、時効が完成していないかを確認することが重要です。

特に注意が必要なのは、取引終了から長期間が経過している場合です。過払い金返還請求権は、早ければ取引終了から10年で時効が完成する可能性があります。過払い金が発生している可能性があるにもかかわらず、時効が完成しているために請求ができないというケースも少なくありません。

時効の中断に関する注意点

時効の中断(更新)に関して、債務整理や過払い金請求を検討する際に注意すべきポイントをいくつか説明します。これらを理解することで、時効に関するリスクを適切に管理できます。

  • 債務承認の範囲:一部弁済や利息の支払いだけでなく、「支払いたいが今は払えない」といった発言や、返済計画の作成なども債務の承認と判断される可能性があります。
  • 時効の個別性:複数の債務がある場合、一つの債務についての承認は、原則として他の債務の時効には影響しません。ただし、連帯債務や保証債務などは例外があるので注意が必要です。
  • 裁判上の請求の限界:訴えが却下されたり、取り下げられたりした場合、時効の中断(更新)効果は生じません。また、請求が棄却された場合も、原則として中断(更新)効果は生じません。
  • 協議合意の形式:権利についての協議を行う旨の合意は、書面によることが望ましいですが、口頭でも有効です。ただし、後でトラブルになる可能性があるため、重要な合意は書面化することをおすすめします。
  • 裁判外の催告の限界:裁判外の催告は、それだけでは6ヶ月間の完成猶予しか生じません。6ヶ月以内に裁判上の請求などの更新事由がなければ、時効は通常通り完成します。

上記のリストは時効の中断(更新)に関する主な注意点です。特に重要なのは、債務者側が安易に債務の承認をしないことと、債権者側は適切な中断(更新)手続きを取ることです。

時効に関する判断は専門的な知識が必要なため、債務整理や過払い金請求を検討する際には、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、時効に関するリスクを適切に管理できます。

よくある質問

債権者からの電話で話をしただけでも、時効は中断しますか?

電話での会話内容によります。単に債権者からの連絡を受けただけでは、時効は中断(更新)しません。しかし、その電話で債務者が債務の存在を認める発言(「支払いたいが今は払えない」「少しずつなら返せる」など)をすれば、債務の承認として時効が中断(更新)される可能性があります。

また、債権者からの電話は「裁判外の催告」として、6ヶ月間の時効完成猶予事由になる可能性があります。ただし、6ヶ月以内に裁判上の請求などの更新事由がなければ、時効は通常通り完成します。債権者からの連絡には慎重に対応し、安易に債務を認める発言をしないことが重要です。

債務整理の相談をするだけで、時効は中断しますか?

弁護士や司法書士に債務整理の相談をするだけでは、時効は中断(更新)しません。相談は債権者との間で行われる行為ではないからです。また、弁護士や司法書士には守秘義務があるため、相談内容が債権者に伝わることもありません。

ただし、弁護士や司法書士に債務整理を依頼し、その後債権者に受任通知を送付すると、その内容によっては債務の承認と判断される可能性があります。時効が完成している可能性がある債務については、事前に専門家に相談し、受任通知の内容に注意することが重要です。

時効の中断(更新)を証明するのはどちらの責任ですか?

時効の中断(更新)事由の存在を証明する責任は、時効の完成を争う側(通常は債権者側)にあります。つまり、債務者が時効を援用した場合、債権者側が時効の中断(更新)事由があったことを証明する必要があります。

例えば、債務者が「債務の承認をしていない」と主張した場合、債権者側が債務承認の事実(一部弁済の記録、債務承認書の写しなど)を証明する必要があります。このため、債権者は通常、債務の承認を書面で残すよう求めます。債務者としては、時効が完成している可能性がある債務については、安易に書面を作成したり署名したりしないことが重要です。

まとめ

時効の中断(改正民法では「時効の更新」)とは、進行中の時効期間をリセットして、新たに時効期間を進行させる法的効果のことです。主な中断(更新)事由としては、裁判上の請求、強制執行、債務の承認などがあります。

2020年4月の民法改正により、従来の「時効の中断」という概念は「時効の更新」と「時効の完成猶予」に分けられました。時効の更新はそれまでの時効期間をリセットする効果がある一方、完成猶予は一定期間時効の完成を遅らせるだけで、それまでの期間は有効です。

債務整理や過払い金請求を検討する際には、時効が中断(更新)されていないかを確認することが重要です。特に注意が必要なのは「債務の承認」で、一部弁済や利息の支払い、返済計画の作成などが該当します。これらの行為があると、時効がリセットされ、時効の援用ができなくなる可能性があります。

時効に関する判断は専門的な知識が必要なため、債務整理や過払い金請求を検討する際には、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、時効に関するリスクを適切に管理し、より効果的な債務解決につなげることができます。

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