一部免責(いちぶめんせき)について詳しく解説
一部免責とは、破産手続きにおいて裁判所が債務の一部だけを免除し、残りの債務については支払い義務を残す制度です。通常の破産手続きでは全ての債務が免除される「全部免責」が原則ですが、特定の状況下では「一部免責」が適用されることがあります。
一部免責は主に、債務者に一定の支払能力があると判断された場合や、免責不許可事由に該当する行為があったものの情状を考慮して一部の免責が認められる場合などに適用されます。債務者にとって全部免責よりは不利ですが、全く免責されないよりは有利な結果となります。
一部免責が適用される場合
一部免責が適用されるのは主に以下のような場合です。これらの状況においては、裁判所が債務者の事情を考慮して一部の債務のみを免除するという判断を下すことがあります。
免責不許可事由の存在 | 浪費や賭博など免責不許可事由に該当する行為があったが、情状を考慮して一部免責が認められる場合 |
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一定の支払能力 | 債務者に一定の収入や財産があり、全額ではなくとも一部の返済能力があると判断された場合 |
裁量的判断 | 裁判所が債務者と債権者の事情を総合的に考慮して、一部免責が適当と判断した場合 |
特定の債権の除外 | 税金や養育費など、法律上免責されない債務がある場合 |
一部免責の判断は裁判所の裁量に委ねられており、債務者の経済状況や債務発生の経緯、返済努力の程度などが総合的に考慮されます。債務者にとって有利な判断を得るためには、誠実な対応と十分な説明が重要です。
一部免責と全部免責の違い
一部免責と全部免責の主な違いは以下の通りです。債務整理を検討する際には、これらの違いを理解して最適な選択をすることが重要です。
全部免責 |
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一部免責 |
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一部免責は全部免責の「例外」として位置づけられており、裁判所が特別に認める場合に適用されます。債務者にとっては全部免責に比べて不利ですが、全く免責されないという最悪の事態は避けられるというメリットがあります。
免責されない債務の種類
破産手続きにおいて、法律上当然に免責されない債務があります。これらは一部免責・全部免責に関わらず、破産後も支払い義務が継続します。
- 租税債権(所得税、住民税など)
- 罰金・過料・刑事訴訟費用
- 養育費・婚姻費用の分担
- 故意または重過失による不法行為に基づく損害賠償債務
- 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償債務
上記の債務は法律上「非免責債権」として定められており、破産手続きによって免除されることはありません。これらの債務がある場合は、破産後も返済計画を立てる必要があります。
一部免責の判断基準
裁判所が一部免責を判断する際の基準は明確に法定されているわけではありませんが、過去の判例や実務から以下のような要素が考慮されることが分かっています。
量的基準(金額的な判断)
債務者の支払能力 | 現在の収入や将来の収入見込み、保有財産などから判断される返済可能額 |
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債務総額との均衡 | 債務総額と免責される額のバランス(通常、全債務の20〜50%程度が免責されるケースが多い) |
免責不許可事由の該当額 | 浪費や賭博などによって作られた債務の額 |
裁判所は債務者の経済状況を詳細に分析し、返済可能な金額を算出します。その上で、債務総額との均衡を考慮して免責される金額を決定します。
質的基準(情状による判断)
- 債務発生の経緯(生活費のための借入か、浪費・賭博のための借入か)
- 債務者の返済努力の程度(これまでどれだけ誠実に返済してきたか)
- 免責不許可事由の悪質性(故意か過失か、社会的非難の程度など)
- 債務者の生活状況(病気や失業など、やむを得ない事情があるか)
- 債権者側の事情(取立ての方法が適切だったかなど)
裁判所は単に金額的な判断だけでなく、債務発生の経緯や債務者の生活状況なども総合的に考慮して一部免責の可否や範囲を判断します。債務者の誠実さや返済への意欲も重要な要素となります。
一部免責の手続き
一部免責の手続きは、通常の破産手続きの流れの中で行われます。主な流れは以下の通りです。
破産申立て | 裁判所に破産および免責の申立てを行います。この段階で一部免責を希望する場合はその旨を記載します。 |
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破産手続開始決定 | 裁判所が破産手続きの開始を決定し、破産管財人が選任されます(管財事件の場合)。 |
債権者集会・調査 | 債権者が集まり、債権の確認や債務者の事情聴取が行われます。破産管財人による財産調査も行われます。 |
免責審尋 | 裁判所が債務者から直接事情を聴取し、免責の可否を判断するための審尋が行われます。 |
免責許可決定 | 裁判所が審理の結果、全部免責または一部免責の決定を下します。一部免責の場合は、免責される債務と残る債務が明示されます。 |
一部免責を希望する場合や、免責不許可事由に該当する可能性がある場合は、早い段階で弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。専門家のサポートを受けながら適切に対応することで、より有利な結果を得られる可能性が高まります。
一部免責決定後の対応
一部免責が決定された場合、免責されなかった部分については引き続き返済義務があります。この場合の対応方法としては以下のようなものがあります。
- 分割返済の交渉:債権者と交渉して、残債務について無理のない分割返済の合意を得る
- 再度の債務整理:状況によっては、残債務について個人再生や任意整理などの別の債務整理手続きを検討する
- 収入増加の努力:就労や転職などにより収入を増やし、返済能力を高める
- 生活設計の見直し:支出を見直して返済に充てられる資金を確保する
一部免責後の返済については、無理のない計画を立てることが重要です。再度の返済不能に陥らないよう、収入と支出のバランスを考慮した返済計画を立てましょう。
一部免責に関するよくある質問
一部免責について、債務者からよく寄せられる質問とその回答をまとめました。債務整理を検討する際の参考にしてください。
一部免責と全部免責はどちらが多いですか?
実務上は全部免責が圧倒的に多く、一部免責はかなり例外的なケースです。特に免責不許可事由がない場合は、原則として全部免責が認められます。
一部免責の割合はどのくらいですか?
ケースバイケースですが、過去の裁判例では債務総額の20〜50%程度が免責されるケースが多いようです。ただし、債務者の状況や裁判所の判断によって大きく異なります。
一部免責後の返済期間は?
法律上は特に定められておらず、債権者との交渉次第です。実務上は3〜5年程度の分割返済となるケースが多いですが、状況により異なります。
一部免責を避けるには?
免責不許可事由に該当する行為(浪費・賭博など)を避け、借入れは生活に必要な範囲に留め、返済に誠実に取り組むことが重要です。問題が生じた場合は早めに専門家に相談しましょう。
一部免責と個人再生の違いは?
個人再生は計画的に債務の一部を減額して残りを返済する手続きですが、一部免責は破産手続きの中で裁判所が債務の一部のみを免除するものです。手続きの性質や適用場面が異なります。
一部免責に関して不明な点がある場合は、債務整理に詳しい弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら最適な債務整理の方法を選択しましょう。
まとめ
一部免責とは、破産手続きにおいて裁判所が債務の一部だけを免除し、残りの債務については支払い義務を残す制度です。通常は全ての債務が免除される全部免責が原則ですが、免責不許可事由がある場合や債務者に一定の支払能力があると判断された場合などに、例外的に一部免責が適用されることがあります。
一部免責の判断基準としては、債務者の支払能力や債務総額との均衡などの量的基準と、債務発生の経緯や返済努力の程度などの質的基準が考慮されます。裁判所は債務者と債権者の事情を総合的に考慮して、免責される債務の範囲を決定します。
一部免責の手続きは通常の破産手続きの流れの中で行われ、破産申立て、破産手続開始決定、債権者集会・調査、免責審尋を経て、最終的に裁判所が免責許可決定を下します。一部免責が決定された場合、免責されなかった部分については引き続き返済義務があります。
一部免責を避けるためには、免責不許可事由に該当する行為を避け、借入れは生活に必要な範囲に留め、返済に誠実に取り組むことが重要です。また、債務整理を検討する際には、早い段階で専門家に相談し、自分の状況に最適な方法を選択することをおすすめします。
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