マンション管理費の滞納で競売になる?区分所有法59条のリスクと家を守る交渉手順

マンションの管理費と修繕積立金を滞納しており競売になると言われたが本当か

分譲マンションに住んでいますが、生活費が苦しくなり、管理費と修繕積立金を半年ほど滞納してしまっています。先日、管理会社から届いた催告書に「このままでは法的措置を講じ、競売の手続きに入ります」と書かれていました。

住宅ローンは銀行へ毎月遅れずに支払っています。ローンの残債がまだ数千万円残っている状態で、たかだか数十万円の管理費滞納のために、マンションが競売にかけられることなど本当にあるのでしょうか。脅し文句だと思いたいのですが、万が一家を失うことになったらと考えると夜も眠れません。

住宅ローンの支払い有無に関係なく管理費滞納だけで競売は実行されます

管理費や修繕積立金の滞納が続くと、管理組合は「区分所有法59条」に基づいて競売を申し立てることが可能であり、これは住宅ローンの返済状況とは無関係に進められる非常に強力な手続きです。

たとえ滞納額が数十万円であっても、管理組合の総会決議を経れば競売手続きは現実に実行され、所有権を失うリスクが目前に迫っています。すぐに管理組合または管理会社へ連絡を入れ、誠意を持って分割支払いの交渉を行うことが、家を守るための唯一の回避策です。

この記事では、マンション管理費滞納特有の競売リスクである「59条競売」の仕組みと、法的措置を取られるまでのタイムライン、そして実際に競売を回避するために今日から行うべき交渉の手順について具体的に解説します。

この記事でわかること

管理費滞納で家を失う「59条競売」とは

多くの人が「住宅ローンさえ払っていれば家は安泰だ」と考えていますが、分譲マンションにおいてはその常識が通用しません。管理費や修繕積立金は、マンションという共同住宅を維持するための「生命線」であるため、法律(建物の区分所有等に関する法律)によって強力な回収手段が認められています。

特に恐ろしいのが「区分所有法59条」に基づく競売請求です。これは、特定の区分所有者が義務違反(滞納など)をすることで、他の居住者の共同生活に著しい支障をきたす場合、その人の部屋を強制的に競売にかけて敷地外へ退去させることができるという制度です。

通常の競売と何が違うのか

一般的な借金滞納による競売と、管理費滞納による59条競売には、決定的な違いがあります。それが「無剰余取消し」の適用の有無です。

通常、債権者が競売を申し立てても、その不動産を売却した金額が住宅ローンの残債(抵当権)より少なく、申立人に配当が回らないと見込まれる場合、裁判所は「無益な競売」として手続きを取り消します。これを「無剰余取消し」と呼びます。そのため、オーバーローン状態の家は、少額の借金では競売にかかりにくいという現実がありました。

しかし、区分所有法59条に基づく競売は、この「無剰余取消し」の対象になりません。目的が「債権の回収」だけでなく「問題のある居住者を排除して共同利益を守る」ことにあるため、たとえ住宅ローンが満額残っていても、売却代金が1円も管理組合に入らなくても、競売手続きは進められます。つまり、「ローンがいっぱい残っているから競売なんてできないだろう」という読みは完全に外れることになります。

先取特権という強力な権利

管理費には「先取特権(さきどりとっけん)」という権利も法律で付与されています。これは、裁判所の判決を得る前であっても、管理費の滞納があるという事実だけで、お部屋の差押えを申し立てることができる権利です。

通常の借金であれば、裁判を起こして判決を取り、その後に差押えという長いプロセスが必要です。しかし管理費の場合、管理規約や議事録などの書類さえ揃えば、いきなり競売の手前である差押えまで手続きが一気に進む可能性があります。管理組合が本気になれば、あなたが思っているよりも遥かにスピーディーに家を失う手続きが完了してしまうのです。

法的措置の種類 概要とリスク
支払督促 裁判所から支払いを命じる書類が届く。異議を申し立てないと判決と同じ効力を持ち、給与や口座の差押えが可能になる。
先取特権の実行 判決なしで不動産の競売を申し立てる手続き。一般の債権回収よりも迅速に行われる。
59条競売 区分所有法59条に基づき、滞納者を退去させるための競売。住宅ローン残債に関わらず実行される最終手段。

滞納から競売開始までのタイムライン

管理費を滞納してから実際に競売が開始されるまでには、いくつかの段階があります。どの段階で食い止めるかによって、解決の難易度と交渉相手が変わってきます。現在ご自身がどのフェーズにいるのかを冷静に判断してください。

フェーズ1:初期滞納(1ヶ月〜3ヶ月)

最初の引き落とし不能が発生すると、管理会社からハガキや電話での連絡が入ります。管理人が常駐しているマンションであれば、郵便受けの前などで直接声をかけられることもあります。

この段階では、まだ「うっかり忘れ」として扱われることが多く、すぐに支払えば大きな問題にはなりません。しかし、3ヶ月を超えると「悪質な滞納者」としてリストアップされ、管理組合の理事会で議題に上がり始めます。督促状の内容も事務的な通知から、法的措置を匂わせる警告文へとトーンが変わります。

フェーズ2:警告と公表(3ヶ月〜6ヶ月)

滞納が半年近くになると、管理会社から内容証明郵便が届きます。これは「いつ、誰に、どのような督促をしたか」を郵便局が証明するもので、裁判の証拠作りが始まったことを意味します。

また、マンションによっては管理規約に基づき、エントランスの掲示板や回覧板などで「管理費滞納者」として部屋番号や氏名が公表されることがあります。近隣住民に知れ渡ることで精神的なプレッシャーを受けますが、これは法的措置の前段階として行われる正当な業務執行とみなされるケースが多いです。

フェーズ3:法的措置の決議(6ヶ月〜1年)

内容証明を無視し続けると、管理組合は定期総会または臨時総会を開き、「59条競売の申立て」について決議を行います。この決議には区分所有者および議決権の4分の3以上の賛成が必要ですが、常習的な滞納者に対しては他の住民も厳しい目を向けているため、可決される可能性が非常に高いです。

総会で決議されると、管理組合は弁護士に依頼し、裁判所へ競売の申立てを行います。この段階に至ると、未払い分の管理費だけでなく、弁護士費用や遅延損害金(年10〜18%程度)も上乗せして請求されるため、支払総額は一気に膨れ上がります。

フェーズ4:競売開始決定(1年〜)

裁判所が競売の開始を決定すると、自宅に「競売開始決定通知」が届き、登記簿にも「差押」と記載されます。その後、執行官と不動産鑑定士が自宅を訪問し、室内の写真撮影や調査(現況調査)が行われます。

この調査を拒否することはできず、鍵を開けない場合は鍵屋によって強制解錠されます。ここまで来ると、単独での解決は極めて困難となり、家を失うカウントダウンが始まります。

管理組合に訴えられる前の交渉準備

59条競売を回避するためには、管理組合が「弁護士に委託する前」に和解することが鉄則です。弁護士が入ると交渉は法的にドライなものになり、柔軟な分割払いが認められにくくなります。まずは手元にある情報を整理し、理事会への接触準備を整えましょう。

1. 正確な滞納額と遅延損害金の把握

督促状や通帳の履歴を確認し、以下の項目を正確に数字で出してください。

  • 管理費の滞納合計額
  • 修繕積立金の滞納合計額
  • 駐車場代・駐輪場代の滞納合計額(ある場合)
  • これまでの遅延損害金(管理規約で利率を確認)

管理会社へ電話し、「現在までの未払い総額と内訳を教えてほしい」と伝えれば、明細を出してもらえます。このとき、曖昧にせず「支払いの意思があるため、正確な金額を知りたい」と伝えることが重要です。

2. 管理規約の確認

入居時に受け取った「管理規約」を探し出し、滞納に関する条項を確認してください。特に「遅延損害金の利率」「法的措置の着手時期(何ヶ月滞納で措置するか)」「氏名公表のルール」などが記載されています。相手のルールを知ることで、交渉の期限が見えてきます。

3. 支払可能額の算出

家計の収支を見直し、毎月の通常管理費にプラスして、いくらなら上乗せして返済できるかを計算します。「ボーナスで一括」などの不確実な約束は絶対に避けてください。毎月確実に支払えるギリギリの金額(例:通常管理費2万円+滞納分1万円=計3万円)を算出します。

管理組合側は「早期回収」を望んでいますが、何より恐れているのは「約束が守られないこと」です。実現不可能な計画を提示して破綻すると、即座に法的措置へ移行されます。

理事会への分割払い提案と合意手順

準備ができたら、実際に行動に移します。管理費滞納の交渉相手は、管理会社の担当者(フロントマン)ではなく、最終決定権を持つ「管理組合の理事長」です。しかし、いきなり理事長の部屋を訪ねるのは迷惑になるため、正しいルートでアプローチします。

手順1:管理会社経由で「支払計画書」を提出する

まずは管理会社に連絡し、「滞納分についての支払計画書を理事会に提出したい」と伝えます。口頭での約束は議事録に残りにくいため、必ず書面で提出します。

【支払計画書に記載すべき項目】

  • 氏名・部屋番号・提出日
  • 滞納総額の確認
  • 滞納してしまった理由(簡潔に、病気・減給などやむを得ない事情があれば記載)
  • 支払計画(毎月○日に、通常分○○円+滞納分○○円を支払う)
  • 完済予定年月
  • 誓約事項(一度でも遅れたら法的措置を受けても異議はない旨)

この書面があることで、次回の理事会で「この居住者は支払う意思があり、具体的な計画も出している。一旦競売は見送ろう」という議論になりやすくなります。

手順2:理事会での説明を申し出る

書面だけでは不安な場合や、滞納額が大きく長期分割(2年以上など)になりそうな場合は、理事会に出席して直接事情を説明させてほしいと申し出るのも有効です。

理事会のメンバーも同じマンションの住人です。直接顔を合わせて誠心誠意謝罪し、再建への意志を見せることで、情状酌量の余地が生まれることがあります。ただし、感情的にならず、あくまで「どうやって支払うか」という数字の話に終始してください。

手順3:合意書を締結する

理事会で分割払いが承認されたら、管理組合との間で「債務承認弁済契約書」などの合意書を取り交わします。これには、支払計画のほか、期限の利益の喪失条項(1回でも遅れたら残額を一括請求される)が含まれるのが一般的です。

この合意書は法的にも強い拘束力を持ちます。これ以降は1日の遅れも許されないと肝に銘じてください。万が一遅れそうなときは、必ず期日前に連絡を入れなければ、即座に競売手続きが再開されます。

どうしても払えないときの最終手段

すでに収入が途絶えている、あるいは滞納額が大きすぎて分割でも支払える見込みがない場合、時間を引き延ばしても遅延損害金が増えるだけです。家を守ることに固執せず、ダメージを最小限に抑える方法へ切り替える必要があります。

任意売却で競売を回避する

競売で落札されると、市場価格の6〜7割程度でしか売れないことが多く、多額の借金が残ってしまいます。また、強制退去の日程も一方的に決められます。

そこで検討すべきなのが「任意売却」です。これは債権者(銀行や管理組合)の合意を得て、一般市場価格に近い金額で自宅を売却する方法です。競売よりも高く売れる可能性が高く、引越し費用を売却代金から捻出できるよう交渉できるケースもあります。

管理組合としても、競売より任意売却の方が回収額が増える可能性があるため、協力してくれることが多いです。不動産会社や弁護士を通じて「任意売却を進めるので競売申立てを待ってほしい」と交渉します。

個人再生で家を残せるか検討する

他に借金(カードローンなど)があり、それが原因で管理費が払えない場合、「個人再生」という債務整理手続きが選択肢に入ります。個人再生には「住宅ローン特則」があり、住宅ローンを払い続けながら他の借金を大幅に減額できます。

ただし、管理費の滞納分は個人再生でも減額されません。管理費は「共益債権」として扱われ、手続きに関わらず全額支払う必要があります。しかし、他の借金が5分の1程度になれば、浮いたお金で管理費の滞納を解消できるかもしれません。この手法が使えるかどうかは、専門家によるシミュレーションが必要です。

リースバックを利用する

自宅を不動産会社や投資家に売却し、その後は賃貸として家賃を払いながら住み続ける「リースバック」という方法もあります。売却代金で管理費の滞納を一括返済できれば、競売を取り下げてもらえます。

ただし、毎月の家賃が周辺相場より高くなるケースや、売却価格がローン残債を下回る場合は利用できない(銀行の承諾が得られない)などのハードルがあります。管理費すら払えない状況で家賃が払えるのか、慎重な計算が必要です。

管理費滞納にまつわる危険な誤解

管理費の滞納については、インターネット上にも誤った情報や古い常識が散見されます。誤った判断で事態を悪化させないよう、よくある誤解を正しておきましょう。

よくある誤解 現実のリスク
ローンが残っていれば競売されない 前述の通り、59条競売はローン残債に関係なく実行されます。無剰余取消しの適用外です。
5年経てば時効になる 管理費の時効は5年ですが、管理組合は内容証明や支払督促を送って時効を中断(更新)させます。放置して逃げ切ることは不可能です。
少額だから裁判費用で赤字になるはず 59条競売の目的は「排除」なので赤字でもやります。また、裁判費用や弁護士費用も請求されるため、最終的に負担するのは滞納者自身です。
自己破産すれば払わなくていい 滞納分は免責される可能性がありますが、所有権がある限り翌月からの管理費は発生し続けます。結局は手放さない限り負担は消えません。

延滞金の上限がない場合もある

消費者金融の借金には利息制限法という上限金利がありますが、管理費の遅延損害金は「管理規約」で定められた利率が適用されます。多くのマンションでは年14.6%程度ですが、中には「違約金」としてさらに高額なペナルティを課す規約になっている場合もあります。

放置すればするほど、元金よりも遅延損害金の方が重くのしかかり、完済が物理的に不可能になっていきます。「たかが数万円」と甘く見ず、1ヶ月でも早く止めることが経済的損失を最小限にする唯一の道です。

まとめ

マンション管理費の滞納は、金額の大小にかかわらず、区分所有法59条という強力な法律によって自宅を競売にかけられる深刻な事態です。住宅ローンを支払っているからといって安心できる要素はひとつもありません。

管理組合から法的措置の予告が来ているなら、猶予はほとんどありません。今すぐ支払計画書を作成し、管理会社を通じて理事会へ交渉を申し入れてください。もし、すでに自分たちだけでは交渉が難しい、あるいは他の借金もあって八方塞がりだという場合は、法律の専門家に間に入ってもらうことも検討すべきです。

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日本リーガル司法書士事務所の代表司法書士 計良宏之

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監修者:代表司法書士 計良 宏之

東京都荒川区東日暮里5-17-7 秋山ビル1階

東京司法書士会所属 第8484号
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員 第1201114号

借金問題・債務整理に関する情報を、できるだけわかりやすく整理してお伝えしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。状況により最適な対応は変わるため、不安が強い場合は早めに専門家へ相談してください。

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