動産執行の当日は鍵屋が無理やり開ける?執行官が部屋で行う捜索手順と不在時の現場実態
動産執行の現場では具体的に何が行われるのでしょうか?
借金の滞納が続き、ついに動産執行の予告が届きました。テレビドラマのように怖い人が土足で踏み込んで家具を運び出したり、家中の引き出しをひっくり返されたりするのでしょうか。
妻や子供も同居しているので、当日の現場がどのような修羅場になるのか不安で眠れません。執行官が来る日の具体的な流れと、現場で何をされるのか、留守にしていたらどうなるのかといった実態を教えてください。
事務的な手続きで進み、価値ある物がなければ短時間で終了します。
動産執行は裁判所の執行官が行う法的手続きであり、ドラマのような暴力的な取り立てや怒号が飛び交うような現場にはなりません。執行官はあくまで中立的な立場で、換金価値のある財産があるかどうかを淡々と確認するだけです。
一般的な家庭であれば、差押え禁止財産の範囲内で生活必需品は守られるため、実際に持ち出される物が何もなく「執行不能」として数十分で終わるケースが大半です。
この記事では、執行官がインターホンを押してから帰るまでの詳細なドキュメントと、不在時の強制開錠、家族への配慮など、当日の現場実態について解説します。
この記事でわかること
執行官が到着するまでの緊張と準備
動産執行の日時は、事前に予告される場合と、抜き打ちで来る場合がありますが、債権者(貸金業者など)が立ち会いを希望するケースでは、事前に日程調整の連絡が入ることが一般的です。当日の朝、どのような心構えで待てばよいのか、現場の実情を整理します。
当日のメンバー構成と役割
インターホンが鳴ったとき、ドアの向こうには通常、以下のメンバーが待機しています。大人数で押し寄せるわけではありませんが、それぞれの役割を理解しておきましょう。
| 執行官 | 裁判所の職員です。手続きの責任者であり、部屋の中を捜索して差押える物を決定する権限を持ちます。中立的な立場で淡々と職務を遂行します。 |
|---|---|
| 債権者の代理人 | お金を貸している側の担当者です。執行官の補助として立ち会うことがありますが、債務者に対して直接脅したり取り立てたりすることは禁じられています。 |
| 立会人(証人) | 誰もいない部屋に入る場合や、公正さを保つために呼ばれる第三者です。自治体職員や鍵屋が兼ねることもあります。 |
| 鍵屋 | 債務者が不在、または居留守を使ってドアを開けない場合に備えて同行します。開錠技術を持つ専門業者です。 |
部屋の片付けと貴重品の管理
執行官が来るからといって、部屋を綺麗に掃除しておく義務はありません。しかし、足の踏み場もない状態だと、捜索のために物を移動させられることになり、かえって時間がかかってしまいます。スムーズに終わらせるためには、最低限の通路を確保しておくと良いでしょう。
また、現金や通帳、実印などの重要書類は、机の上に出しっぱなしにせず、所定の場所にしまっておきます。隠蔽工作とみなされるような極端な隠し場所(床下や屋根裏など)に移す必要はありませんが、目につく場所に大金が置いてあれば、その場で差押えの対象となる可能性があります。
執行官は生活実態を確認しに来るため、普段通りの生活空間で構いません。過度に恐縮して玄関で土下座をしたり、逆上して怒鳴り散らしたりしても状況は好転しません。冷静に対応することが、結果的に最も早く手続きを終わらせるコツです。
不在時は鍵屋による強制開錠が行われる
動産執行の最大の特徴であり、最も恐れられているのが「解錠(強制開錠)」の権限です。居留守を使えばやり過ごせるという考えは、動産執行においては通用しません。
インターホンへの反応がない場合
執行官が到着し、インターホンを押しても応答がない場合、まずは数分間の待機と呼びかけが行われます。「裁判所の執行官です。いらっしゃいますか」と声をかけ、ドアをノックします。
それでも反応がない場合、執行官は「不在」または「居留守」と判断し、同行している鍵屋に解錠を指示します。これは法律(民事執行法)に基づいた正当な行為であり、住人の許可なく鍵を開けて入室することが認められています。
オートロックのマンションであっても、管理人に事情を説明してエントランスを通過し、玄関ドアの前まで到達します。どのようなセキュリティであっても、裁判所の執行命令があれば物理的に突破されると考えてください。
チェーンロックや特殊鍵の対応
U字ロックやドアチェーンがかかっている場合、中に人がいることは明らかです。この状態で応答しない場合、チェーンを切断してでも入室することが可能です。実際にチェーンが切断されるケースは稀ですが、「拒めば物理的に壊される」というプレッシャーの中で、最終的には自ら開けざるを得ない状況になります。
最近のディンプルキーや電子錠であっても、プロの鍵屋であれば数分から数十分で解錠します。鍵を壊して開けた場合、その後の施錠や鍵交換の費用は、最終的に債務者の負担(執行費用として請求)になることが一般的です。
居留守を使って鍵を壊されるよりも、在宅しているのであれば素直に応対し、鍵を開けたほうが経済的なダメージも精神的なショックも少なくて済みます。不在時に勝手に入られるほうが、何を見られたか分からず不安が残るでしょう。
部屋の中での捜索手順と見る場所
いよいよ執行官が部屋に入ります。靴を脱いで上がるのが一般的ですが、このとき執行官の目は、部屋全体を見回して「換金価値のある動産(物)」を探しています。
土足で踏み込まれることはあるか
日本の住宅事情において、執行官が土足で部屋に上がり込むことは通常ありません。スリッパを持参するか、靴下のまま入室します。彼らも公務員であり、住人の感情を無駄に逆撫でするような行為は避けます。
ただし、ゴミ屋敷のように床が見えない状態や、土間が続いているような特殊な構造であれば例外もあり得ます。基本的には、引越し業者の見積もりのような雰囲気で、部屋の動線に沿って淡々と確認が進みます。
タンスや引き出しは開けられるか
執行官には捜索の権限があるため、タンス、クローゼット、キッチンの棚、冷蔵庫の中などを開けて確認することが可能です。しかし、実務上は「明らかに換金価値がありそうな場所」に限定されます。
- リビングのサイドボード(貴金属や時計がありそうな場所)
- 書斎の引き出し(現金や有価証券がありそうな場所)
- 金庫(必ず開けるよう指示されます)
- クローゼット(ブランドバッグや毛皮がありそうな場所)
一方で、下着が入っているタンスや、子供の勉強机、冷蔵庫の中身などを執拗に漁ることは稀です。目的は「売れる物を探すこと」であり、プライバシーを侵害することではありません。明らかに安価な衣類しか入っていないと判断されれば、引き出しを開けずにスルーされることも多々あります。
家族や同居人への配慮
現場に家族がいる場合、執行官は可能な限り配慮してくれます。たとえば、子供が泣いている前で無理やりおもちゃを取り上げたり、病人が寝ている部屋を無理に捜索したりすることは避ける傾向にあります。
「子供部屋は見ないでほしい」と伝えれば、明らかに高価な物を隠していない限り、入り口から覗くだけで済ませてくれることもあります。ただし、これは執行官の裁量による温情措置であり、権利として拒否できるわけではありません。
差押え品の決定と赤紙の貼り付け
部屋の捜索を行い、換金価値があると判断された動産が見つかった場合、その場で差押えの手続きが行われます。これがいわゆる「赤紙(封印票)」の貼り付けです。
その場で持ち出されるわけではない
映画などでは、家具に赤紙を貼った直後に運び出されるシーンがありますが、実際の動産執行では、その場で持ち出されることはほとんどありません。
差押えられた動産は、債務者(あなた)を保管人として指定し、「そのまま使い続けて良いが、勝手に処分してはいけない」という状態で部屋に残されます。これを「使用許可」といいます。後日、競売の日程が決まった段階で、買い受け人が引き取りに来るか、執行官が売却手続きを行います。
したがって、動産執行の当日に部屋が空っぽになることはありません。テレビや冷蔵庫にシールが貼られるだけで、その日の生活はこれまで通り続けられます。
差押えの対象になる物の基準
執行官が探しているのは、中古市場で確実に値がつく物です。リサイクルショップで数千円にしかならないような家具家電は、差押えても運搬・保管コストのほうが高くつくため、対象外となります。
| 狙われる物 | 現金(66万円を超える分)、貴金属、高級時計、ブランドバッグ、骨董品、絵画、未開封の高級酒、大型の4Kテレビなど |
|---|---|
| スルーされる物 | 一般的な家具(ベッド、ソファ、テーブル)、製造から5年以上経過した家電、衣類、パソコン(データ保護のため)、エアコン(取り外し費用がかかるため) |
現代の一般的な家庭において、執行官が目を光らせるような高価な動産があるケースは稀です。ほとんどの家財道具は「差押え禁止財産」か「無価値(超過差押えの禁止)」と判断され、リストに載ることはありません。
何も取るものがない「執行不能」の流れ
実際の動産執行の現場では、捜索の結果、差押えるべき物が何ひとつ見つからないというケースが圧倒的に多いです。これを「執行不能(不能調書)」と呼びます。
執行不能が決まる瞬間の会話
執行官が一通り部屋を見回し、「めぼしい物はありませんね」と判断すると、債権者の代理人に確認を取ります。「今回は不能ということでよろしいですか?」といったやり取りが行われます。
債権者側も、無理に古いテレビを持っていっても換金できずに赤字になることを理解しているため、素直に了承することがほとんどです。この時点で、動産執行の手続きは終了となります。
現金がないかの最終確認
家財道具に価値がない場合、最後に現金の有無を確認されることがあります。「財布の中身を見せてください」「自宅に現金を保管していませんか」と聞かれます。
このとき、手持ちの現金が66万円以下であれば、それは「標準的な世帯の2ヶ月分の生活費」として差押え禁止財産とみなされ、没収されません。財布に入っている数万円程度の生活費であれば、そのまま手元に残せます。正直に見せても取られることはないので、隠さずに提示しましょう。
結果として、何も取られず、部屋の状況も変わらず、執行官と鍵屋、債権者が撤収していくことになります。所要時間は早ければ10分〜20分程度です。
現場で現金を支払うことは可能か
執行官が来たことで、「なんとか穏便に済ませたい」「少しでも払うから帰ってほしい」と思うかもしれません。現場での交渉や支払いは可能なのでしょうか。
執行官への直接支払いは原則不可
執行官は集金人ではないため、その場で借金の一部を受け取って帰るということは原則として行いません。彼らの任務はあくまで「動産の差押え」です。
ただし、債権者の代理人が同行している場合、その代理人に対して「今日1万円だけ払うので、執行を取り下げてもらえませんか」と交渉することは物理的には可能です。しかし、ここまで手続きが進んでいる段階で、少額の支払いで執行停止に応じる債権者は少ないでしょう。
その場で全額弁済すれば止まる
唯一、執行を確実に止められるのは、請求されている金額(元金+利息+遅延損害金+執行費用)の全額をその場で用意できる場合です。
現金で全額を提示し、債権者がそれを受け取れば、執行を取り下げて帰ってもらうことができます。もし動産執行の当日にまとまったお金が用意できたなら、執行官が入室する前に玄関先で申し出るべきです。そうすれば、部屋の中を見られることもなく、手続きは終了します。
執行後の生活への影響
動産執行が「不能」で終わった場合、とりあえず家財道具は守られましたが、借金が消えたわけではありません。債権者は「家には金目の物がなかった」という事実を確認しただけであり、次は給与の差押えや、銀行口座の差押えへとターゲットを移す可能性があります。
また、不在時に強制開錠された場合、鍵の交換費用などが借金に上乗せされるリスクもあります。動産執行は「終わりの始まり」ではなく、債権回収プロセスの一通過点に過ぎません。何事もなく終わったとしても、根本的な解決のためには次のアクションが必要です。
まとめ
動産執行の現場は、感情的な衝突よりも事務的な確認作業が中心です。高価な貴金属や大量の現金がない限り、身ぐるみ剥がされるような事態にはなりません。しかし、自宅まで公権力が及ぶという事実は、精神的に大きな負担となります。
動産執行が空振りに終わっても、借金の返済義務は残ります。給与差押えなどの次の強制執行を防ぐためには、早急に弁護士や司法書士に相談し、個人再生や自己破産といった法的な解決策を講じる必要があります。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。状況により最適な対応は変わるため、不安が強い場合は早めに専門家へ相談してください。


