財産開示手続の呼び出しを無視すると逮捕や罰金になる?欠席リスクと回避手順
財産開示手続の期日呼出状が届きましたが無視しても大丈夫でしょうか?
裁判所から「財産開示手続期日呼出状」という分厚い封筒が届きました。借金の返済を滞納している件だと思いますが、仕事も忙しいですし、正直なところ裁判所に行くのが怖いです。
手元にお金も財産も全くないので、行ったところで払えるものがありません。このまま無視して欠席した場合、罰金を取られたり警察に捕まったりすることはあるのでしょうか?
無視は絶対にNGです。書類送検や逮捕のリスクがあり前科がつきます。
財産開示手続の呼び出しを正当な理由なく無視すると、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が科される可能性があります。
かつては過料(金銭的なペナルティ)だけで済みましたが、法改正により現在は警察が介入する立派な「犯罪」となりました。実際に無視をした債務者が書類送検された事例も存在します。
この記事では、無視した場合に警察がどう動くか、どうしても行けない場合の正しい変更手順、そして財産がない場合に当日どう答えれば罪に問われないかを解説します。
この記事でわかること
無視は絶対NG。刑事罰と書類送検の現実
まず結論から申し上げますが、財産開示手続の呼び出しを無視することだけは絶対に避けてください。これは単なる「裁判の欠席」とはわけが違います。通常の民事裁判であれば、欠席しても「相手の言い分通りの判決が出る(敗訴する)」だけで済みますが、財産開示手続の欠席は「犯罪行為」として扱われるからです。
法改正で導入された「6ヶ月以下の懲役」
2020年(令和2年)4月1日に改正民事執行法が施行され、財産開示手続の運用が劇的に厳しくなりました。それまでは、正当な理由なく出頭しなくても「30万円以下の過料(行政罰)」という、いわばスピード違反の反則金のような軽いペナルティしかありませんでした。しかも、実際に過料が科されるケースも稀だったため、「逃げ得」が横行していたのが実情です。
しかし、現在の法律(民事執行法213条1項)では、以下の行為に対して「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」という刑事罰が設定されています。
- 正当な理由なく、指定された期日に裁判所へ出頭しないこと
- 出頭しても、宣誓(嘘をつかないという誓い)を拒むこと
- 宣誓したのに、正当な理由なく陳述(質問への回答)を拒むこと
- 虚偽の陳述(嘘の回答)をすること
これは「前科」がつく刑罰です。警察が捜査を行い、検察庁へ事件が送られ、起訴されれば裁判(略式含む)で刑が確定します。「たかが借金の話で警察なんて来ないだろう」と高を括っていると、取り返しのつかない事態になります。
実際にあった書類送検の事例
「法律で決まっていても、実際には捕まらないのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、法改正直後の2020年10月、神奈川県で象徴的な事件が起きました。裁判所からの財産開示手続の呼び出しに応じなかった男性が、民事執行法違反の疑いで書類送検されたのです。
このケースでは、債権者が「相手が出頭しない」と警察に被害届(告発状)を提出し、警察がそれを受理して捜査を行いました。つまり、債権者が「許さない」と判断して警察に持ち込めば、警察は動かざるを得ない仕組みが出来上がっているのです。現在では、債権回収会社や弁護士の間で「回収できない場合は刑事告発を行う」という手法が、強力な回収手段として認知されつつあります。
なぜ「逃げ得」が許されなくなったのか
なぜこれほど厳しい罰則が設けられたのでしょうか。それは、財産開示手続という制度自体が、債権者にとって「最後の砦」だからです。
債権者の怒りとコスト
財産開示手続は、誰でも簡単に申し立てられるものではありません。債権者はすでに判決や支払督促などの「債務名義(公的に権利が認められた書類)」を取得しており、それでもあなたが支払わないために、さらなる費用(申立手数料や予納郵券、弁護士費用など数万円〜十数万円)をかけてこの手続きを行っています。
債権者からすれば、「裁判で勝ったのに支払われない」「どこに財産があるかわからないから差し押さえもできない」という八方塞がりの状況を打開するために、裁判所の力を借りてあなたを呼び出しているのです。この段階での無視は、債権者の顔に泥を塗る行為であり、「もう容赦しない」と刑事告発に踏み切る引き金になりかねません。
「不出頭=罪」の構成要件
警察が動くハードルが下がった理由の一つに、犯罪の証明が容易であることが挙げられます。「詐欺罪」などは「最初から騙すつもりだったか」という内心の証明が必要で立証が難しいですが、財産開示手続の無視はシンプルです。
| 裁判所の記録 | 呼出状が債務者に適正に送達された記録(特別送達の受取記録)がある。 |
|---|---|
| 当日の記録 | 指定された期日に債務者が法廷に現れなかったという調書がある。 |
| 結論 | 「受け取ったのに行かなかった」という事実だけで、客観的に犯罪が成立する。 |
このように証拠が明白であるため、警察としても捜査が進めやすく、書類送検に至りやすいのです。「知らなかった」「忘れていた」という言い訳は、特別送達を受け取っている以上通用しません。
どうしても行けない場合の「正当な理由」と変更手順
仕事や家庭の事情で、指定された日時にどうしても裁判所へ行けないこともあるでしょう。その場合、無視をするのではなく、正しい手順で「期日変更」を申し出る必要があります。ただし、認められるハードルは非常に高いことを覚悟してください。
認められる「正当な理由」の境界線
法律上の「正当な理由」とは、社会通念上、出頭が著しく困難であると認められる事情を指します。単に「仕事が休めない」「忙しい」という理由は、原則として認められません。裁判所の呼び出しは、一般的な仕事の都合よりも優先されるべき「公的な義務」だからです。
- 認められる可能性が高い理由:本人の重病や怪我(入院中など)、親族の葬儀、天災による交通遮断など。
- 認められない理由:仕事が忙しい、会社を休むとクビになる、子供の迎えがある、交通費がない、裁判所に行きたくない、返すお金がない。
「お金がないから行っても意味がない」というのは理由になりません。財産開示手続は「返すお金を作る場」ではなく、「財産の有無を明らかにする場」だからです。
期日変更申立書の提出方法
正当な理由がある場合は、速やかに裁判所(呼出状に記載された担当書記官)へ電話連絡を入れ、事情を説明した上で「期日変更申立書」を提出します。口頭で伝えるだけでは不十分です。
申立書には、その理由を裏付ける疎明資料(証拠)の添付が必須です。病気なら診断書、葬儀なら会葬礼状など、第三者が見て客観的にわかる書類を用意してください。これらを提出し、裁判官が許可して初めて期日が変更されます。「連絡したから休んでいい」わけではない点に注意が必要です。
当日の対処法と嘘をつくリスク
「逮捕されるくらいなら行くけれど、財産なんて何もない。責められるのが怖い」という不安があるかもしれません。しかし、財産開示期日の現場は、あなたが想像しているような「借金の取り立て現場」とは少し異なります。
「財産がない」と答えることは罪ではない
非常に重要なことですが、「財産がない」と正直に陳述することは犯罪ではありません。財産開示手続の目的は「財産を見つけること」ですが、見つからなかった(=本当にない)という結果もまた、一つの成果だからです。
当日は、裁判官や債権者(代理人弁護士の場合が多い)から質問を受けます。「預金口座はどこにありますか?」「給料はどこから貰っていますか?」「保険には入っていますか?」といった質問に対し、すべて正直に「ありません」「解約しました」「現金払いのみです」と答えれば、それで手続きは終了します。怒鳴られたり、その場で身柄を拘束されたりすることはありません。
一番危険なのは「嘘」をつくこと
一方で、財産があるのに「ない」と答えたり、口座を隠したりすると、これもまた刑事罰(陳述拒絶・虚偽陳述の罪)の対象となります。
- 隠していた口座が後から発覚した場合、虚偽陳述として刑事告発される可能性がある。
- 債権者はこの手続きの前に、独自調査である程度の当たりをつけていることが多い。
- 「忘れていました」は通用しにくい。事前に提出する「財産目録」には正確に記入する必要がある。
つまり、最善の策は「出頭して、ありのままを正直に話し、隠し事をしないこと」です。これさえ守れば、少なくとも逮捕や罰金のリスクは回避できます。
開示後の差押え回避と債務整理
無事に刑事罰を回避できたとしても、問題は解決していません。財産開示手続で勤務先や口座情報を話してしまえば、数日〜数週間以内に間違いなく「強制執行(差し押さえ)」が行われるからです。
開示情報は即座に執行に使われる
債権者が高い費用をかけてこの手続きを行った目的は、あなたの給与や預金を差し押さえるためです。財産開示期日で得られた情報は、直ちに強制執行の申立てに流用されます。特に勤務先がバレると、給与の4分の1(手取り額によってはそれ以上)が毎月天引きされ、完済するまで続きます。さらに、会社に借金トラブルが露見することで、職場での立場も危うくなるでしょう。
自己破産・個人再生による対抗策
この「待ったなし」の状況を止める唯一の手段が、自己破産や個人再生といった法的な債務整理です。これらの手続きを裁判所に申し立て、開始決定が出れば、債権者による強制執行は法律上禁止・停止されます。
ただし、弁護士に依頼して「受任通知」を送るだけでは、強制執行そのものを止める効力はありません(任意の交渉で待ってもらえる可能性はありますが、相手が強硬な場合は止まりません)。財産開示手続まで進んでいる段階では、一刻も早く裁判所への申し立て準備を進める必要があります。
罰金刑になった後の生活への影響
もしあなたが「面倒だから」と無視を続け、運悪く刑事罰(50万円以下の罰金など)を受けてしまった場合、その後の生活にはどのような影響が出るのでしょうか。
「前科」による資格制限と就職の壁
罰金刑以上が確定すると、いわゆる「前科」がつきます。前科がつくと、医師、看護師、警備員、公務員、教員、宅地建物取引士など、特定の国家資格や職業に就くことが一定期間制限されます(欠格事由)。現在これらの仕事に就いている場合、失職するリスクがあります。
また、履歴書の賞罰欄に記載義務が生じるケースや、海外渡航(ビザ申請)の際に犯罪経歴証明書の内容として申告が必要になり、入国を拒否される国が出てくる可能性もあります。
借金は消えないという二重苦
さらに残酷なのは、罰金を払っても、懲役に行っても、元の借金は1円も減らないという事実です。刑事罰はあくまで「裁判所の命令に従わなかったこと」への処罰であり、借金の返済とは無関係だからです。
結果として、50万円の罰金を国に支払い、前科がついて仕事も制限され、その上で元の借金の督促と差し押さえが続くという、地獄のような状況に陥ります。この「最悪のシナリオ」だけは、何としても避けなければなりません。
まとめ
財産開示手続の呼び出しを無視することは、自ら進んで犯罪者になりに行くようなものです。どれほど行きたくなくても、必ず期日には出頭するか、どうしても無理なら正式な期日変更の手続きをとってください。
もし「返すお金がないから行くのが怖い」「勤務先を言ったら生活ができなくなる」と悩んでいるなら、出頭期日が来る前に、一刻も早く弁護士や司法書士に相談してください。専門家が介入することで、債権者との間に入って交渉を行ったり、自己破産等の申し立てによって手続き自体を回避・停止できる可能性があります。
債務整理に強いおすすめ事務所ランキングの事務所では、財産開示手続を受けてしまった緊急の事案についての相談もできるので、最悪の事態(逮捕・前科)になる前に、自分に合った次の一歩を検討してみてください。
借金問題に強い杉山事務所の無料相談
| おすすめの理由 |
|---|
| 毎月1万件以上の豊富な実績 |
| 初期費用や相談料が無料 |
| 過払い金の回収額が毎月1億円以上 |
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。状況により最適な対応は変わるため、不安が強い場合は早めに専門家へ相談してください。


