任意整理は1社だけ選べる?残すカードの決め方と強制解約までの猶予期間

借金が複数ある中で1社だけ選んで任意整理することは可能ですか?

現在、クレジットカード3枚とカードローン2社から借り入れがあります。返済が厳しくなってきたので債務整理を考えていますが、車のローンが残っている会社や、保証人になってもらっている奨学金は整理対象にしたくありません。

また、仕事でどうしても必要なクレジットカードが1枚あり、それまで止まってしまうと生活に支障が出ます。特定の借金だけを選んで整理することはできるのでしょうか。その場合のリスクや、残したカードがどうなるのかについても詳しく知りたいです。

可能です。整理先を選別して生活への影響を最小限に抑える手順を解説します。

任意整理は、自己破産や個人再生とは異なり、手続きする対象の債権者を自由に選べる唯一の方法です。そのため、保証人付きの借金や車のローンを除外して、金利が高いカードだけを整理することが可能です。

ただし、整理対象から外したカードであっても、信用情報の更新によって後から利用停止になるリスクがあります。どの会社を優先して整理すべきかの判断基準と、手元に残したいカードを守るための具体的な対策を確認していきましょう。

この記事では、1社だけ任意整理する場合の選び方、残したカードへの影響、手続きを進める際の注意点について、時系列に沿って具体的な手順を解説します。

この記事でわかること

整理する1社の選び方と残すべき借金

任意整理の最大の利点は、生活への影響が大きい借金を手続きの対象から外せる点にあります。しかし、やみくもに「このカードは残したい」と選んでしまうと、根本的な解決にならず、すぐに返済が行き詰まる可能性があります。まずは、ご自身の借入状況を整理し、どの会社を優先的に整理すべきか、逆にどの会社は絶対に外すべきかを判断する基準を明確にしましょう。

絶対に整理対象から外すべき借金

生活基盤を守るため、以下の条件に当てはまる借金は、原則として任意整理の対象から外す手続きをとります。これらを整理対象に含めてしまうと、資産の没収や人間関係の悪化など、取り返しのつかないデメリットが発生するためです。

  • 自動車ローン(所有権留保つき):ローン支払い中の車は、整理対象にすると信販会社に引き上げ(没収)られてしまいます。車を手元に残すには、このローンを対象外にして通常通り払い続ける必要があります。
  • 保証人がついている借金:奨学金や一部のローンなど、連帯保証人がいる借金を整理すると、債権者は保証人に対して一括請求を行います。保証人に迷惑をかけないためには、対象から外すのが鉄則です。
  • 勤務先からの借入(社内貸付):会社に知られずに解決したい場合、給与天引きの社内貸付を整理することはできません。
  • 給与振込口座がある銀行のカードローン:銀行カードローンを整理すると、その銀行口座が凍結されます。給与口座を変えられない事情がある場合は、この銀行を外すか、事前に口座変更を済ませる必要があります。

優先的に整理対象に選ぶべき会社

一方で、借金総額を減らし、月々の負担を軽くするためには、効果が高い借金を選んで整理する必要があります。以下の特徴を持つ借り入れは、優先的に手続きの対象として検討してください。

金利が高い消費者金融 年利18.0%などの高金利で借りている場合、将来利息をカットする効果が最も大きく、返済総額を大幅に圧縮できます。
リボ払い残高が多いカード リボ払いは毎月の返済額のほとんどが利息に充てられ、元金が減りません。任意整理で利息をゼロにすれば、支払った分だけ確実に元金が減るようになります。
月々の返済額が大きい会社 毎月の家計を圧迫している最大の要因を取り除くことで、手元の現金に余裕が生まれ、整理から外した他のローンの支払いを継続しやすくなります。
取引期間が長い借金 2010年以前から取引がある場合、過払い金が発生している可能性があります。過払い金で借金をゼロにできれば、実質的な負担なしで解決できるケースもあります。

1社だけ整理する場合の返済シミュレーション

例えば、A社(残高50万円・金利18%・月返済1.5万円)、B社(残高30万円・金利15%・月返済1万円)、C社(車のローン・月返済2万円)があるとします。すべて自力で返済すると月4.5万円の負担ですが、最も金利が高いA社だけを任意整理した場合どうなるか見てみましょう。

A社の将来利息をカットし、60回(5年)払い等の長期分割で和解できれば、A社の月返済額は約8,300円まで下がります。B社とC社は今まで通り払いますが、全体の返済額は月3.8万円程度になり、毎月7,000円近く負担が減ります。この浮いた分を貯蓄やB社の繰り上げ返済に回すことで、安全に完済を目指すことができます。

整理から外したカードへの影響と利用停止時期

多くの人が誤解しているのが、「整理対象から外したカードはずっと使い続けられる」という点です。確かに手続き直後は使えますが、信用情報機関(CICやJICC)の情報共有により、いずれ利用できなくなる可能性が高いのが現実です。いつまで使えるのか、どのタイミングで止まるのかを正しく理解しておきましょう。

途上与信と更新時の審査リスク

クレジットカード会社は、カードの発行後も定期的に利用者の信用情報をチェックしています。これを「途上与信」と呼びます。あなたがA社を任意整理すると、その事実(異動情報など)が信用情報機関に登録されます。

整理対象から外して手元に残したB社カードであっても、B社が途上与信を行ったタイミングで「他社(A社)で債務整理をした」という事実を知ることになります。カード会社によりますが、リスク回避のために利用限度額を下げたり、カードを利用停止(強制解約)にしたりする措置が取られることがあります。

  • 途上与信のタイミング:カード会社によって異なりますが、一般的には更新の数ヶ月前、利用限度額の増枠申請時、または3ヶ月〜6ヶ月ごとの定期チェック時に行われます。
  • カードの更新時期:有効期限が切れる際の更新審査は厳格に行われるため、このタイミングで新しいカードが発行されず、強制解約となるケースが多いです。

強制解約までの猶予期間の目安

実際のところ、整理対象外のカードが即日止まるわけではありません。弁護士が受任通知を送ってから信用情報に登録されるまで数日〜数週間かかり、さらに他社がその情報を確認するまでにはタイムラグがあります。

あくまで目安ですが、手続き開始から数ヶ月〜1年程度は今まで通り使えるケースもあります。しかし、これは「運良く使えているだけ」であり、ある日突然店頭でエラーが出るリスクと隣り合わせです。「いつ止まっても生活が回るように準備する期間」として捉え、現金払いやデビットカードへの切り替えを進める必要があります。

PayPayやスマホ決済への影響

PayPayや楽天ペイなどのスマホ決済アプリに、整理対象外のクレジットカードを紐付けている場合も同様です。カード自体が利用停止になれば、当然スマホ決済でのチャージや支払いもできなくなります。

ただし、銀行口座からの即時チャージや、セブン銀行ATMでの現金チャージであれば、信用情報の影響を受けずに利用を継続できます。今のうちに決済手段を「クレジットカード紐付け」から「銀行口座紐付け」または「現金チャージ」に変更しておくことで、突然使えなくなった時の混乱を防げます。

銀行カードローンを整理する場合の口座凍結対策

消費者金融やクレジットカードではなく、銀行のカードローンを1社だけ選んで整理する場合、最も注意しなければならないのが預金口座の凍結です。銀行は貸付金の回収を守るため、弁護士からの受任通知を受け取ると即座にその銀行にある全口座を凍結し、預金を借金の返済に充当(相殺)しようとします。

口座凍結の範囲と期間

凍結されるのは、整理対象とした銀行の「全支店の口座」です。普通預金だけでなく、定期預金や積立預金も対象になります。凍結期間は銀行や保証会社の代位弁済手続きによりますが、一般的に1ヶ月〜3ヶ月程度続くことが多いです。この間、入金はできても出金や引き落としは一切できなくなります。

給与振込口座の変更手順

もし、整理しようとしている銀行が給与の振込先になっている場合、給料日に口座が凍結されていると、生活費を一切引き出せなくなってしまいます。手続きを依頼する前に、必ず以下の手順で対策を完了させてください。

  1. 給与振込先の変更:勤務先の経理担当者に連絡し、振込先を「整理対象ではない別の銀行」に変更します。変更が反映されるタイミング(締め日)を確認し、次回の給料日が新しい口座に入金されることを確約させます。
  2. 公共料金・家賃の引き落とし変更:対象の口座から引き落とされている生活費の支払いを、別の口座やクレジットカード払い、コンビニ払いに変更します。
  3. 預金の全額引き出し:受任通知が送られる直前に、口座に残っている預金をすべて引き出し、現金として手元に残します。数百円でも残しておくと相殺されてしまいます。

この「口座変更」と「預金引き出し」が完了したことを弁護士や司法書士に伝えてから、受任通知を送ってもらうのが安全な手順です。順番を間違えると生活費を失うことになるため、専門家との打ち合わせでは必ず銀行口座の状況を共有してください。

1社だけ整理する依頼手順と必要書類

1社限定の任意整理であっても、手続きの流れ自体は通常の債務整理と大きく変わりません。しかし、対象を絞るからこその伝え方や、準備すべき書類の注意点があります。スムーズに手続きを進めるための具体的なステップを見ていきましょう。

専門家への相談時の伝え方

無料相談では、単に「借金を整理したい」と言うのではなく、「この会社だけを整理して、ここは残したい」という希望を冒頭で明確に伝えてください。特に以下の情報は、判断材料として必須になります。

  • 残したい理由:車のローンだから、保証人に迷惑がかかるから、会社にバレるから等。
  • 現在の借入状況一覧:全ての債権者名、大まかな残高、月々の返済額。
  • 家計の収支状況:手取り月収、家賃、生活費。整理しない借金の返済を続けながら、整理した借金の分割払いが可能かを計算するために必要です。

必要書類と準備物

契約にあたって最低限必要なものは以下の通りです。特定の1社だけを整理する場合でも、家計全体の状況を把握するために、全体の収支がわかる資料を求められることがあります。

本人確認書類 運転免許証、マイナンバーカード、健康保険証など。
印鑑 認印で構いませんが、シャチハタは不可です。銀行印である必要はありません。
利用明細・カード 整理したい会社のクレジットカードやキャッシングカード、直近の利用明細書やATMの控え。Web明細の場合はスマホの画面提示でも可能です。
収入証明書(場合により) 給与明細(直近2〜3ヶ月分)や源泉徴収票。返済能力を示すために必要になることがあります。

委任契約と受任通知の送付

弁護士や司法書士と委任契約を結ぶと、専門家から対象の業者に対して「受任通知」が発送されます。これが業者に届いた時点で、その会社からの督促や支払いは一旦ストップします。一方で、整理対象から外した会社には通知が送られないため、今まで通り返済を続ける必要があります。

ここで重要なのは、間違って残したい会社に通知を送られないようにすることです。契約書に記載される「相手方(債権者)」に誤りがないか、契約締結時に必ず指差し確認を行ってください。

手続き中の生活費管理と返済計画の立て直し

受任通知を送ると、整理対象とした1社への返済は一時的に止まります(和解成立までの数ヶ月間)。この期間は「返済猶予期間」とも呼ばれますが、ここで油断してお金を使ってしまうと、和解後の支払いが始まった時に破綻してしまいます。

浮いたお金の使い道と積立

整理対象への返済が止まっている間に、浮いたお金をどう管理するかが成功の鍵を握ります。推奨される使い道は以下の2つです。

  1. 弁護士費用の積立:任意整理の費用(着手金や報酬金)の支払いに充てます。多くの事務所では分割払いに対応しており、この期間中に費用を積み立てる形をとります。
  2. 他社の繰り上げ返済資金:整理しなかった他社の残高を減らすために貯蓄しておきます。あるいは、万が一の出費に備えた生活防衛資金としてプールしておきます。

やってはいけないのは、返済が止まった安心感から生活レベルを上げてしまうことです。和解が成立すれば、数ヶ月後には再び返済が始まります。今のうちに「整理後の返済額」を想定した家計で生活し、無理なく払っていけるか予行演習をしておくことが大切です。

途中で方針変更が必要になるケース

1社だけ整理して様子を見ていたものの、やはり残した他社の返済が苦しくなり、結局すべて整理することになるケースも少なくありません。これを「方針変更」と言います。

方針変更自体は可能ですが、最初からまとめて依頼していれば1回で済んだ手続き費用や手間が、二度手間になってしまいます。また、一度整理対象から外して無理をして返済を続けた期間の利息分だけ損をすることになります。「本当に1社だけで生活が再建できるか」を冷静に見極め、不安があれば最初から全社整理を検討する勇気も必要です。

同系列サービスの利用制限とポイントの扱い

借入先を選ぶ際に見落としがちなのが、企業グループや合併による「社内ブラック」の影響範囲です。A社を整理したことで、全く関係ないと思っていたB社のサービスが使えなくなることがあります。

グループ会社・合併先への影響

金融業界では再編が進んでおり、カード会社と銀行、消費者金融が同じグループであるケースが多いです。例えば、以下のような関係性に注意が必要です。

  • 銀行とその保証会社:銀行カードローンの保証会社が消費者金融の場合、その消費者金融を整理すると、保証している銀行カードローンにも影響が及び、一括請求される可能性があります。
  • クレジットカードの合併:過去に合併したカード会社の場合、旧会社でのトラブルが現在の会社にも引き継がれていることがあります。

整理対象を選ぶ際は、カードの裏面や契約書を見て「保証会社」や「提携先」を確認するか、無料相談時に専門家に全てのカードを見せて、繋がりがないかチェックしてもらうのが確実です。

貯まっているポイントはどうなる?

整理対象としたクレジットカードにポイントが貯まっている場合、受任通知が届いてカードが強制解約になった時点で、全てのポイントが失効します。数万円分のポイントが残っているなら、弁護士に依頼する直前に、商品券への交換や支払への充当、他社ポイントへの移行などで使い切ってしまうのが賢明です。

なお、整理対象から外したカードのポイントは、カードが利用停止にならない限りそのまま維持されます。しかし、前述の通り途上与信でいつ止まるかわからないため、早めに使い切る習慣をつけておくことをおすすめします。

まとめ

借金を1社だけ選んで任意整理することは、保証人や資産を守るための有効な手段です。金利が高い会社やリボ払い残高が多い会社をピンポイントで整理することで、家計の破綻を防ぎ、完済への道筋を作ることができます。ただし、残したカードも将来的に使えなくなるリスクがあるため、依存しない生活へ切り替える準備も同時に進める必要があります。

どの会社を選んで整理すべきか、またそれによってどんな影響が出るかは、個人の借入状況や契約内容によって複雑に異なります。自己判断で選別すると、思わぬところで口座凍結や一括請求のリスクを招くことになりかねません。

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日本リーガル司法書士事務所の代表司法書士 計良宏之

日本リーガル司法書士事務所

監修者:代表司法書士 計良 宏之

東京都荒川区東日暮里5-17-7 秋山ビル1階

東京司法書士会所属 第8484号
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員 第1201114号

借金問題・債務整理に関する情報を、できるだけわかりやすく整理してお伝えしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。状況により最適な対応は変わるため、不安が強い場合は早めに専門家へ相談してください。

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