公正証書で強制執行されるときは裁判所から連絡なし?差し押さえまでの通知と回避手順

支払いが遅れたら裁判なしで差し押さえ?公正証書の効力が知りたい

数年前に借金の返済について公正証書を作成しました。作成時に「支払いが遅れたら強制執行を受けても異議はない」というような内容にサインした記憶があります。

現在、生活が苦しく支払いが遅れがちなのですが、この場合、裁判所からの呼び出しや事前の連絡は一切なく、ある日突然、給料や銀行口座が差し押さえられてしまうのでしょうか?もしそうなら、どうすれば回避できるのか、前兆や通知のタイミングについて教えてください。

強制執行認諾文言があれば裁判なしで即差し押さえが可能。通知のタイミングと回避策

公正証書に「強制執行認諾文言」が含まれている場合、債権者は裁判を起こして判決を得るプロセスを省略し、直ちに裁判所へ強制執行を申し立てることが可能です。つまり、裁判所への出頭命令や審理の時間は与えられません。

ただし、完全に無通告で実行されるわけではなく、手続き上、公正証書の謄本が債務者に送られる「送達」というプロセスを経る必要があります。しかし、この通知が届いた時点ですでに水面下では準備が完了しており、数日以内に差し押さえが実行される可能性が極めて高い危険な状態です。

この記事では、公正証書による強制執行の流れと、差し押さえが実行される具体的な予兆、そして今からでも間に合う回避手順について詳しく解説します。

この記事でわかること

公正証書による強制執行と裁判の違い

通常、借金の滞納から給料や預金の差し押さえ(強制執行)に至るまでには、長い時間といくつもの法的手続きが必要です。債権者はまず裁判所に訴えを起こし、法廷での審理を経て、「支払いなさい」という判決(債務名義)勝ち取らなければなりません。債務者には反論する機会があり、裁判所から呼出状が届くため、事態の進行を把握することができます。

しかし、公正証書を作成している場合は、この前提が根本から覆ります。公正証書、特に金銭の支払いに関する契約で特定の文言が含まれているものは、それ自体が「確定判決と同じ効力」を持っています。これを「債務名義」と呼びます。つまり、裁判官が下す判決文を最初から持っているのと同じ状態なのです。

なぜ「裁判なし」で実行できるのか

公正証書は、公証人という法律の専門家が、債権者と債務者双方の意思を確認して作成する公文書です。この作成プロセスにおいて、債務者が「もし支払いを怠ったら、裁判なしで直ちに強制執行を受けても構いません」と約束している場合、法はその意思を尊重し、改めて裁判をする必要はないと判断します。この約束の文言を「強制執行認諾文言」といいます。

この文言がある公正証書(執行証書)があれば、債権者は滞納が発生した時点で、裁判所に対して「訴訟」ではなく、いきなり「差押命令の申立て」を行うことができます。これが、一般的に「公正証書なら裁判なしで差し押さえられる」と言われる理由です。

通常の督促プロセスとの決定的な差

通常の借金滞納であれば、電話や郵便での督促が続き、内容証明郵便で一括請求が届き、それでも払わなければ裁判所から訴状が届く、という段階を踏みます。この期間は数ヶ月から半年以上かかることもあります。しかし、公正証書がある場合、この「数ヶ月の猶予」は存在しません。債権者が「もう待てない」と判断して手続きを開始すれば、最短数週間で強制執行まで到達します。

  • 通常の借金:督促 → 一括請求 → 裁判(呼出状) → 判決 → 強制執行
  • 公正証書あり:督促 → 強制執行の申立て → 強制執行

このように、裁判所での審理プロセスが丸ごとカットされるため、債務者が事態の深刻さに気づいたときには、すでに給料や口座が止められる直前であるケースが非常に多いのです。

水面下で進む準備と「送達」のタイミング

「裁判なし」といっても、今日滞納して明日いきなり口座が凍結されるわけではありません。債権者が強制執行を行うためには、公証役場でいくつかの書類を揃える必要があります。この準備期間中は、債務者に対して特別な連絡は行われません。これが「水面下で進む」と言われる理由です。

債権者が行う「執行文付与」の手続き

債権者はまず、手元にある公正証書の正本を持って公証役場へ行き、「執行文」というものを付与してもらいます。これは「この公正証書を使って強制執行することを許可します」という公証人のお墨付きのようなものです。このとき、債権者は債務者が支払いを怠っている事実(期限の利益の喪失)を証明または主張する必要があります。この手続きは債権者と公証人の間で行われるため、債務者に通知は来ません。

唯一の事前通知となる「送達」

強制執行を開始するための絶対条件として、公正証書の謄本(写し)と執行文が債務者に送られている必要があります。これを「送達」といいます。公証役場から債務者の住所宛てに、特別送達という特殊な郵便で書類が送られます。

この「送達」が、債務者にとって事実上の最終警告となります。この書類が届いたということは、債権者が本気で強制執行の準備を完了させたことを意味します。送達証明書が作成されてから1週間(場合によってはもっと短期間)で、債権者は裁判所に差押えの申立てを行います。

送達を受け取らなかった場合のリスク

「郵便を受け取らなければ送達は完了しないから、差し押さえもできないはずだ」と考えるのは危険です。居留守を使ったり、受取を拒否したりしても、法的には「送達された」とみなす手続き(付郵便送達や公示送達など)が存在します。これらが適用されると、債務者が書類を見ていなくても手続きは先に進み、知らない間に給料や口座が差し押さえられるという最悪の事態を招きます。

公証役場からの郵便物が不在通知に入っていた場合、それは単なる手紙ではありません。「これから強制執行をする」という宣言書です。絶対に無視せず、直ちに中身を確認しなければなりません。

あなたの公正証書は強制執行できるものか確認

全ての公正証書がいきなり強制執行できるわけではありません。手元に公正証書の控えがある場合は、今すぐ以下のポイントを確認してください。もし手元にない場合は、作成した公証役場に行けば閲覧や謄本の請求が可能です(身分証明書が必要です)。

チェック1:金銭の支払いに関する契約か

公正証書による強制執行(執行証書としての効力)が認められるのは、「金銭の一定の額の支払い」を目的とする請求権に限られます。
具体的には以下のようなものが対象です。

  • 借用書に基づく貸金返還請求(借金)
  • 離婚協議書に基づく養育費や慰謝料の支払い
  • 売買代金の支払い
  • 損害賠償金の支払い

これらのお金に関する約束であれば、要件を満たします。一方で、「土地を明け渡せ」「建物を取り壊せ」といった金銭以外の行為を求める内容については、公正証書だけでは強制執行できず、別途裁判が必要です。

チェック2:強制執行認諾文言の有無

これが最も重要なポイントです。公正証書の末尾の方に、以下のような条項があるか探してください。

「債務者がこの証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行を受けても異議のないことを認諾する」

この「認諾する」という言葉や「強制執行を受けても異議はない」というフレーズが入っていれば、その公正証書は執行力を持ちます。これがない公正証書は、単なる「証拠能力の高い契約書」に過ぎず、強制執行するには裁判を起こす必要があります。

チェック3:期限の利益喪失条項

分割払いの契約の場合、「支払いを一度でも怠ったとき」や「二回分以上滞納したとき」に残額を一括で支払わなければならない、という「期限の利益喪失条項」が定められています。

強制執行は、この「一括請求ができる状態」になって初めて申し立てることができます。ご自身の公正証書で「どのような条件で一括返済になるか」を確認してください。その条件を満たしてしまっている場合、いつ手続きが始まってもおかしくありません。

強制執行までのタイムラインと予兆

実際に滞納してから給料や預金が差し押さえられるまで、どのようなスケジュールで進むのかを解説します。裁判がない分、非常にスピーディーに展開するため、各段階での変化を見逃さないことが重要です。

1. 支払いの遅れ 指定された期日に入金がない。債権者からの督促(電話・郵便)が始まる。
2. 期限の利益喪失 公正証書の条件(例:2回滞納)を満たすと、分割払いの権利を失い、一括返済を求められる。ここが法的なGOサインとなる。
3. 執行文の付与 債権者が公証役場で手続きを行う。債務者には通知されない。
4. 公正証書の送達 【重要】公証役場から債務者へ特別送達が届く。「送達証明書」が作成される。ここが最後の防衛ライン。
5. 差押命令申立て 債権者が地方裁判所へ申立てを行う。送達から数日〜1週間程度で行われることが多い。
6. 差押命令の決定 裁判所が書類審査を行い、問題なければ差押命令を出す。
7. 第三者への送達 裁判所から勤務先(給料の場合)や銀行(預金の場合)へ差押命令書が発送される。
8. 債務者への送達 会社や銀行に届いた後、少し遅れて債務者の自宅にも差押命令書が届く。

一番の予兆は「公証役場からの通知」

上記のフローの中で、債務者が確実に気づける予兆は「4. 公正証書の送達」です。公証役場の封筒、あるいは「特別送達」と書かれた郵便物が届いたら、それは「来週には差し押さえを実行する」というカウントダウンの合図です。

これを受け取った時点で、悠長に構えている時間はありません。翌日には弁護士や司法書士に相談しなければ、給料日には手取りが減り、銀行口座からは生活費が消えている可能性があります。

勤務先や銀行に届く方が早い

非常に残酷な仕組みですが、強制執行の効力が発生するタイミングは、裁判所からの書類が「第三債務者(勤務先や銀行)」に届いた時点です。

債務者本人に「差し押さえましたよ」という通知が届くのは、勤務先や銀行への通知が完了したなのです。これは、先に債務者に知らせると預金を引き出されてしまう恐れがあるためです。

つまり、「給料が振り込まれない」「通帳の残高が0円になっている」という現象が起きて初めて、差し押さえられた事実に気づくことも珍しくありません。

自宅や職場にバレるタイミングと範囲

公正証書による強制執行が行われると、金銭的なダメージだけでなく、社会的信用やプライバシーにも大きな影響が及びます。どこまで知られてしまうのかを整理します。

職場への影響:経理担当者には確実にバレる

給与の差し押さえが行われると、裁判所から勤務先の本社や代表者宛てに「債権差押命令書」が届きます。この書類には、債権者の名前、あなたの名前、借金の額などが記載されています。

会社は法律に従い、給与から差押え分を計算して天引きし、場合によっては債権者に直接支払う手続きをしなければなりません。したがって、社長や経理担当者、人事部には確実に借金の事実と滞納の状況が知られます。また、会社に事務的な負担をかけることになるため、職場での居心地が悪くなるリスクも避けられません。

同居家族への影響:郵便物でバレる可能性大

公証役場からの「送達」や、裁判所からの「差押命令書」は、すべて特別送達という形式で自宅に届きます。これは原則として手渡しであり、同居の家族が受け取ることも可能です。

封筒には「裁判所」や「公証役場」の名前が記載されており、普段見慣れない厳格な郵便物であるため、家族が不審に思って中身を問いただしたり、場合によっては開封してしまったりする可能性が高いです。

また、給与が減ったり口座が凍結されたりすることで、生活費が渡せなくなり、結果的に説明せざるを得なくなるケースも多いです。

銀行への影響:口座凍結と信用情報

預金の差し押さえが行われると、対象となった銀行口座は一時的に凍結状態となり、出金ができなくなります。もしその銀行で住宅ローンやカードローンを組んでいる場合、銀行内の規定により、それらのローン契約にも影響が出る(一括返済を求められる、カードが利用停止になるなど)可能性があります。

強制執行を止める・回避するための緊急手順

もし公証役場からの送達を受け取ってしまった、あるいは支払いが遅れて強制執行が目前に迫っている場合、個人で債権者と交渉しても止めることは困難です。法的な強制力を止めるには、法的な対抗手段が必要です。

個人再生または自己破産の申立てを行う

強制執行を最も確実かつ迅速に止める方法は、弁護士や司法書士に依頼して「個人再生」または「自己破産」の申立てを行うことです。

これらの手続きを裁判所に申し立てると、法律の効力により、債権者は新たな強制執行ができなくなります。また、すでに行われてしまった給与差し押さえについても、手続きの開始決定が出れば「中止」させることが可能です。

  • 個人再生:手続き開始決定が出れば、給与の差し押さえは中止(ストップ)し、認可決定が確定すれば過去の差し押さえも失効します。
  • 自己破産:同時廃止事件であれば開始決定と同時に強制執行は失効(無効化)します。管財事件であれば開始決定で失効します。

任意整理では強制執行を法的に止める力はありませんが、債権者との和解交渉によって取り下げてもらうことは理論上可能です。しかし、すでに公正証書という強力な武器を持っている債権者が、条件を緩和する任意整理に応じる可能性は低いため、緊急時は個人再生か自己破産が現実的な選択肢となります。

請求異議の訴え(ハードルは高い)

「もう完済しているのに請求された」「公正証書の内容が事実と違う」といった正当な理由がある場合は、裁判所に「請求異議の訴え」を起こし、併せて「強制執行停止の申立て」を行うことで、執行を止めることができます。

しかし、単に「お金がなくて払えない」という理由ではこの訴えは認められません。公正証書の内容そのものに争いがある場合に限られるため、支払い能力の問題であれば債務整理を選ぶべきです。

時間との勝負:専門家への相談は「今日」動く

公正証書による強制執行は、前述の通りスピードが命です。公証役場から通知が来てから動き出したのでは、給与差し押さえを止めるのが間に合わないこともあります(一度差し押さえられて会社に通知が行くと、あとから止めても会社にバレた事実は消せません)。

少しでも「払えない」と感じた段階、あるいは債権者から「公証役場で手続きする」と言われた段階で、すぐに債務整理の専門家に相談してください。「公正証書がある」と伝えれば、緊急度を理解して優先的に対応してくれるはずです。

まとめ

公正証書(強制執行認諾文言付き)を作成している場合、支払いの遅れは直ちに財産の差し押さえに直結します。裁判所からの呼出状を待つ時間はなく、公証役場からの通知(送達)が届いた時点で、強制執行は目前に迫っています。

この状況を放置して給与や口座を差し押さえられると、生活基盤が崩れるだけでなく、職場や家族にも多大な影響が及びます。自力での解決が難しい段階に入っているため、法的な対抗措置が必要です。

債務整理に強いおすすめ事務所ランキングの事務所では、公正証書による強制執行の停止や回避についての相談もできるので、ご自身の状況に合った次の一歩を検討してみてください。

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日本リーガル司法書士事務所の代表司法書士 計良宏之

日本リーガル司法書士事務所

監修者:代表司法書士 計良 宏之

東京都荒川区東日暮里5-17-7 秋山ビル1階

東京司法書士会所属 第8484号
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員 第1201114号

借金問題・債務整理に関する情報を、できるだけわかりやすく整理してお伝えしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。状況により最適な対応は変わるため、不安が強い場合は早めに専門家へ相談してください。

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