退職金も差し押さえになる?引かれる金額の計算と会社にバレずに見込み額を出す手順
退職金が差し押さえられるか不安・見込み額の出し方が分からない
借金の返済が遅れており、裁判所から通知が届いています。給料だけでなく、将来受け取る退職金まで差し押さえられてしまうのでしょうか?
もし差し押さえになった場合、全額没収されてしまうのか、手元にいくらか残るのかが心配です。具体的な金額を知っておきたいのですが、計算方法が分かりません。
また、弁護士への相談を検討しているのですが「退職金見込額」が必要だと言われました。会社に証明書を請求すると借金などの事情がバレてしまいそうで怖くて頼めません。会社に知られずに自分で見込み額を調べる方法はあるのでしょうか?
原則4分の1が差し押さえ対象ですが手続きにより評価額が変わります
退職金も給料と同様に債権者による差し押さえの対象となる財産であり、強制執行が行われた場合は原則として支給額(手取り)の4分の1が回収に充てられます。
ただし、自己破産や個人再生などの債務整理手続きを行う場合は、退職金の評価額は「支給見込み額の8分の1」として扱われることが多く、手元に残せる可能性が高まります。
この記事では、強制執行で引かれる金額の計算シミュレーションと、会社に怪しまれずに退職金見込額を算出するための就業規則の確認手順について詳しく解説します。
この記事でわかること
退職金が差し押さえられる条件とタイミング
借金を滞納していても、ある日突然、何の予告もなく退職金が差し押さえられるわけではありません。給料や預金口座の差し押さえと同様に、法的な手続きを経て初めて実行されます。まずは、ご自身の状況が差し押さえの危険領域にあるかを確認し、どのタイミングで退職金が狙われるかを理解しておきましょう。
差し押さえが実行される前提条件
退職金に対する強制執行(差し押さえ)が行われるには、債権者が「債務名義」を取得している必要があります。具体的には、以下のいずれかの書類が裁判所から発行・送達されている状態です。
- 確定判決(裁判で貸金業者が勝訴した判決文)
- 仮執行宣言付支払督促(督促に対して異議を申し立てず確定したもの)
- 和解調書(裁判上の和解をした後に支払いが遅れた場合)
- 調停調書(調停で合意した後に支払いが遅れた場合)
- 公正証書(強制執行認諾文言付きで作成したもの)
単に督促状や催告書が届いている段階では、すぐに退職金を押さえられることはありません。しかし、裁判所からの特別送達を放置して判決が確定してしまうと、いつでも強制執行が可能な状態になります。特に、定年退職が近い年齢の方や、勤続年数が長く多額の退職金が見込まれる方の場合、債権者が給料差し押さえとセットで退職金の差し押さえを狙ってくる可能性があります。
在職中と退職後で変わる差し押さえのタイミング
退職金の差し押さえは、実際に退職金が支払われるタイミングで効力を発揮します。しかし、差し押さえ命令自体は「将来支払われる予定の退職金」に対しても行うことが可能です。
| 状況 | 解説 |
|---|---|
| すでに退職済み (未払い) |
退職金がまだ支払われていない場合、会社に対して差し押さえ命令が送達されると、会社は退職金の一部を本人ではなく債権者に支払う義務が生じます。 |
| すでに退職済み (受取済み) |
すでに本人の銀行口座に振り込まれた退職金は、「退職金」ではなく「預金」として扱われます。この場合、預金口座の差し押さえによって全額が回収されるリスクがあります(預金には4分の1制限がないため)。 |
| 在職中 (退職予定なし) |
まだ働いている場合でも、将来の退職金請求権を差し押さえることは法的に可能です。ただし、退職時期が未定であれば回収の実効性が低いため、債権者が積極的に行うケースは限定的です。ただし、給料差し押さえのついでに退職金も合わせて差し押さえ手続きをしてくることは十分に考えられます。 |
最も注意が必要なのは、退職金を受け取って自分の銀行口座に入った直後です。このタイミングで口座の差し押さえを受けると、生活費として保護される範囲を超えて、残高のすべてを持っていかれる可能性があります。
【計算手順】強制執行でいくら持っていかれる?
もし実際に退職金への強制執行が行われた場合、全額が没収されるわけではありません。法律により、債務者の生活を守るために差し押さえが禁止されている範囲(差押禁止債権)が定められています。ここでは、具体的な計算方法を見ていきましょう。
原則は「手取り額の4分の1」まで
民事執行法により、給料や退職金の差し押さえ可能額は、原則として手取り額(税金や社会保険料を控除した後の金額)の4分の1までと定められています。残りの4分の3は、生活を守るために手元に残されます。
計算式:
差し押さえ可能額 = 退職金の手取り額 × 1/4
例えば、退職金の手取り額が1,000万円だった場合、差し押さえられるのは250万円までです。残りの750万円はご自身で受け取ることができます。ただし、借金の残額が250万円未満であれば、その残額分だけが差し押さえられ、残りは戻ってきます。
具体的な計算シミュレーション
退職金の手取り額ごとに、差し押さえられる金額(債権者に支払われる額)と、手元に残る金額(守られる額)を試算してみます。
| 退職金手取り額 | 差し押さえ額 (最大) |
手元に残る額 (最低保証) |
|---|---|---|
| 200万円 | 50万円 | 150万円 |
| 500万円 | 125万円 | 375万円 |
| 1,000万円 | 250万円 | 750万円 |
| 2,000万円 | 500万円 | 1,500万円 |
この「4分の1ルール」は、民間企業の退職金だけでなく、公務員の退職手当にも適用されます。ただし、確定拠出年金(iDeCoや企業型DC)や中小企業退職金共済(中退共)などは、法律で差し押さえそのものが禁止されている場合があります。ご自身の退職金がどの制度に基づいているかを確認することも重要です。
「4分の1」を超える例外ケース
例外として、養育費や婚姻費用などの支払いが滞って差し押さえを受ける場合は、手取り額の2分の1(半分)まで差し押さえが可能となります。借金(貸金業者からの借り入れ)の場合は4分の1ですが、離婚後の養育費未払いなどが原因の場合は、より多くの金額が差し押さえられる点に注意してください。
自己破産・個人再生での「資産評価」は計算が違う
ここまでは「債権者による強制執行」で取られる金額を解説しましたが、ここからは「弁護士に依頼して債務整理(自己破産や個人再生)をする場合」の退職金の扱いについて解説します。実は、債務整理の手続きにおいては、強制執行の「4分の1」とは全く異なる計算ルール(評価基準)が適用されます。
自己破産の場合の「8分の1」ルール
自己破産手続きでは、退職金は「将来受け取る権利がある資産」とみなされ、その価値を換算して債権者への配当に充てる必要があります。しかし、まだ退職していない現役社員の場合、全額を資産として計上するのは過酷すぎるため、以下の基準で評価額を大幅に圧縮することが認められています。
- 退職予定がない場合:
退職金見込み額の8分の1を資産として計上する。 - すでに退職が決まっている場合:
退職金見込み額の4分の1を資産として計上する。 - すでに退職金を受け取っている場合:
現金または預金として、手元に残っている全額が資産評価の対象となる。
多くの裁判所では、この「見込み額の8分の1」の金額が20万円を超える場合のみ、その金額を積み立てて支払う(または自由財産の拡張を申し立てる)ことで、退職金そのものを解約せずに守ることが可能です。
例:退職金見込み額が160万円の場合
160万円 × 1/8 = 20万円
この場合、20万円の価値があるとみなされますが、自由財産(99万円以下の現金など)の範囲内として処理できれば、実際に20万円を支払わずに済むケースもあります。
個人再生の場合の「清算価値」
個人再生(借金を大幅に減額して分割返済する手続き)でも同様に、退職金見込み額の8分の1を「清算価値」として財産目録に計上します。個人再生では財産を処分する必要はありませんが、「持っている財産の総額(清算価値)以上の金額を返済しなければならない」というルール(清算価値保障の原則)があります。
つまり、退職金見込み額が800万円ある場合、その8分の1である100万円が資産とみなされます。もし他に資産がなければ、個人再生での最低返済額は100万円となります。退職金を守りながら、借金を整理できる非常に有効な手段です。
会社にバレずに「退職金見込額」を自分で出す手順
債務整理を検討する際、弁護士や裁判所から「現在の退職金見込み額」を正確に把握するよう求められます。しかし、会社の人事や経理担当者に「退職金見込額証明書」を請求すると、「辞めるつもりなのか?」「借金があるのか?」と勘繰られるリスクがあります。
会社にバレずに見込み額を算出するには、就業規則(退職金規程)を確認し、自分で計算するのが最も安全です。以下の手順で進めてください。
1. 就業規則(退職金規程)を入手・閲覧する
労働基準法により、常時10人以上の労働者を使用する使用者は就業規則を作成し、労働者に周知させる義務があります。以下の場所や方法で確認できるはずです。
- 社内イントラネット、ポータルサイトの規定集
- 総務部や人事部にある共有ファイル
- 入社時に配布された社員ハンドブックや雇用契約書
- 休憩室や執務室の所定の掲示場所
誰にも見られずに確認したい場合は、イントラネットでの閲覧が最適です。物理的なファイルを見る場合は、休憩時間や残業時間など人が少ないタイミングを狙いましょう。
2. 計算式と係数を確認する
退職金規程には、必ず計算式が記載されています。一般的な計算式は以下のいずれかのパターンが多いです。
| 計算式パターン | 詳細 |
|---|---|
| 基本給連動型 | 退職時の基本給 × 勤続年数係数 × 退職事由係数 (例:基本給30万円 × 10.0 × 0.8 = 240万円) ※「自己都合退職」の係数を使う点に注意してください。会社都合より低く設定されているのが一般的です。 |
| ポイント制 | 累積ポイント数 × ポイント単価 (例:5,000ポイント × 1,000円 = 500万円) ※ポイント通知書などが定期的に配布されているか確認してください。 |
| 定額制 | 勤続年数に応じた固定金額 (例:勤続10年なら150万円、20年なら400万円など表で決まっている) |
3. 自分のデータを当てはめて試算する
規程の計算式に、ご自身の現在のデータを当てはめます。必要な数字は給与明細や入社年月日から拾い出せます。
- 現在の基本給:手当を含まない「基本給」の欄を見る。
- 勤続年数:入社日から現在までの年数(端数は規程により切り上げか切り捨てか確認)。
- 支給率(係数):別表として添付されていることが多いので、「自己都合」の欄を見る。
この計算結果をメモに残し、「就業規則に基づく概算額」として弁護士に伝えれば、初期の相談段階では十分な資料として扱ってもらえます。
証明書の提出を求められたときの言い訳と代替策
自分で計算した概算額ではなく、どうしても会社発行の「退職金見込額証明書」が必要になる場面があります。主に、個人再生の申し立てや自己破産の管財事件などで、裁判所から厳密な証拠を求められた場合です。このとき、会社に怪しまれずに証明書を入手するための言い訳と、どうしても頼めないときの代替策を紹介します。
会社への依頼時に使える自然な理由(言い訳)
「借金の整理に使う」とは口が裂けても言えません。ライフプランニングやローン審査など、前向きまたは事務的な理由を用意しましょう。
- 住宅ローンの審査:
「住宅ローンの仮審査で、退職金を返済原資の一部として申告する必要があるため、見込み額の証明がほしいと言われました」 - 保険の見直し・ライフプラン相談:
「ファイナンシャルプランナーに老後の資金計画を相談しており、正確な退職金見込み額を持ってくるように言われました」 - 賃貸契約の審査(高齢の場合):
「親の賃貸契約の保証人になるにあたり、資産証明の一つとして求められました」
特に「住宅ローンの審査」は、金融機関から求められることが実際にあるため、最も不自然さが少なく、担当者も深く追求しにくい理由です。
証明書発行を拒否された・制度がない場合の代替策
会社によっては「退職が決まっていない人には発行しない」という運用をしている場合もあります。また、そもそも退職金制度がない会社や、中小企業退職金共済(中退共)に加入している場合もあります。
- 退職金規程のコピーを作成する:
証明書が出ない場合、就業規則の該当ページ(計算式が書かれた部分)のコピーと、自分の計算書(計算根拠を書いたメモ)をセットにして提出することで、裁判所に認めてもらえるケースが多くあります。 - 中退共の場合:
会社ではなく「中小企業退職金共済事業本部」から送られてくる「退職金共済手帳」や、年に一度届く「お知らせ」のハガキで掛金月額や納付月数を確認し、中退共のホームページにあるシミュレーションで計算した結果を提出します。これなら会社を通さずに済みます。 - 確定拠出年金(DC/iDeCo)の場合:
運営管理機関のWEBサイトにログインし、現在の資産残高が分かる画面をプリントアウトすれば、それが証明書代わりになります。 - 退職金制度がない場合:
雇用契約書や就業規則に「退職金なし」と記載されているページのコピーを提出します。記載がない場合は、会社に「退職金制度の有無に関する証明書」を一筆書いてもらう必要がありますが、これは「制度がないことの確認」なので、「ローンの審査で必要」という理由が通りやすいです。
退職金を守るために今すぐできる対策
退職金が強制執行で差し押さえられるのを防ぐには、債権者が裁判所で「債務名義」を取る前に行動を起こす必要があります。また、すでに差し押さえの危険が迫っている場合でも、正しい対処法を知っていれば被害を最小限に抑えられます。
早期の債務整理で差し押さえを回避する
弁護士や司法書士に債務整理を依頼し、「受任通知」を送付することで、債権者からの督促や取り立ては一時的にストップします。さらに、以下の効果が期待できます。
- 任意整理:
裁判所を通さない交渉手続きです。退職金を処分の対象にせず、将来利息のカットと分割払いで解決を図れます。退職金には一切手を付けずに済みます。 - 個人再生:
前述の通り、退職金見込み額の8分の1相当額を支払総額に組み込むことで、退職金を満額守りながら借金を大幅に減らせます。住宅ローンがある家も守れる可能性が高いです。 - 自己破産:
退職金見込み額が少ない場合(8分の1が20万円以下など)は、自由財産として手元に残せる可能性が高いです。仮に超えていても、自由財産拡張の申し立てにより守れるケースがあります。
退職金を受け取ってしまった後の注意点
もしすでに退職金が振り込まれてしまった場合、そのお金は「現金・預金」となり、原則として99万円を超える部分は自己破産において処分の対象となります。また、債権者による口座差し押さえのリスクも最大化します。
この段階で借金返済のために退職金を使い切ってしまう前に、すぐに専門家に相談してください。手元にある現金を「個人再生の弁済原資」や「自己破産の管財予納金」として適切に運用することで、生活再建の道が開ける可能性があります。
一番やってはいけないのは、特定の債権者(友人や一部の業者)だけに退職金を使って返済してしまうことです(偏頗弁済)。これをやってしまうと、その後の自己破産などが認められなくなる恐れがあります。
まとめ
退職金は強制執行の対象となり、原則として手取りの4分の1が差し押さえられますが、債務整理の手続き内では8分の1評価などの特例により、多くを手元に残せる可能性があります。会社に知られずに見込み額を出すには、就業規則を活用した自己計算が有効です。
もし会社への証明書請求が難しい場合でも、代替書類での対応や言い訳の工夫で乗り切れるケースがほとんどです。退職金が全額なくなることを恐れて問題を放置するよりも、専門家の知恵を借りて資産を守る方法を探るほうが得策です。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。状況により最適な対応は変わるため、不安が強い場合は早めに専門家へ相談してください。


