厳しい督促で精神的苦痛を受けたとき慰謝料は請求できる?違法性の判断基準と督促を止める手順
借金の督促が厳しく精神的に追い詰められています。慰謝料を請求できますか?
毎日のように電話がかかってきたり、強い口調で支払いを迫られたりして、夜も眠れず精神的に限界です。心療内科にも通い始めました。
このような過剰な取り立ては違法ではないのでしょうか。相手の業者に対して慰謝料を請求したいと考えていますが、可能でしょうか。また、この苦しい状況から解放されるにはどうすればよいか教えてください。
違法性の立証ができれば可能性はありますが、まずは督促そのものを止める手続きが最優先です
毎日の督促で心身ともに疲弊され、大変お辛い状況とお察しします。正当な理由のない執拗な取り立ては法律で禁止されており、違法行為が立証できれば慰謝料請求が認められるケースもあります。
しかし、慰謝料請求は証拠集めや裁判に時間と費用がかかる上、認められる金額よりも弁護士費用が高くなる「費用倒れ」のリスクも伴います。
まずは弁護士や司法書士に依頼して「受任通知」を送付し、最短即日で督促を法的にストップさせることが、精神的な平穏を取り戻すための最も確実で速い解決策です。
この記事でわかること
慰謝料請求ができる違法な督促のライン
借金の督促において、債権者(貸金業者や債権回収会社)は法律で定められたルールの範囲内でしか回収行為を行うことができません。単に「督促が厳しい」「回数が多い」という主観的な理由だけでは違法とは認められにくく、貸金業法第21条(取立て行為の規制)に明確に違反している事実が必要です。
具体的にどのような行為があれば違法となり、慰謝料請求の対象になり得るのか、法律の規制内容に基づき詳細に解説します。
時間帯による規制違反
貸金業法では、正当な理由なく午後9時から午前8時までの時間帯に債務者に電話をかけたり、自宅を訪問したりすることを禁止しています。夜間の休息や早朝の生活を妨害することは、精神的苦痛を与える行為として違法性が問われます。
「正当な理由」とは、債務者側から「夜9時以降に電話してほしい」と指定した場合や、日中に全く連絡がつかず所在確認ができない緊急時などに限られます。単に「仕事が終わる時間だから」といった業者側の都合で深夜に電話をすることは許されません。
執拗な追及と反復連絡
借金の返済を求めること自体は正当な権利行使ですが、その方法が社会通念上の受忍限度を超えている場合は違法となります。具体的には以下のようなケースです。
- 1日に何十回も電話をかけてくる
- 電話を切った直後に連続してかけ直してくる
- 連日連夜、執拗に自宅へ押しかける
- 「帰ってください」と退去を求めたにもかかわらず居座り続ける(不退去罪の可能性)
回数に明確な数値基準はありませんが、生活や業務の平穏を害するレベルであれば規制の対象となります。
勤務先や第三者への連絡
正当な理由なく勤務先に電話をかけたり、訪問したりすることは禁止されています。「正当な理由」とは、債務者の携帯電話や自宅に何度連絡してもつながらず、連絡をとる手段が他にない場合に限定されます。債務者と連絡がついているにもかかわらず、嫌がらせ目的で会社に電話をする行為は違法です。
また、家族や友人、親戚など、保証人になっていない第三者に対して借金の事実を知らせたり、代わりに支払うよう要求したりすることも厳しく禁じられています。「親に払ってもらえ」「夫の会社に行くぞ」といった発言は、それ自体が脅迫や強要にあたる可能性があります。
プライバシーの侵害と名誉毀損
借金の事実を周囲に漏らす行為は、プライバシーの侵害や名誉毀損として損害賠償請求の対象になります。
- 玄関ドアやポストに「金返せ」「借金滞納中」などの張り紙をする
- 近隣住民に聞こえるような大声で督促をする
- FAXやハガキなど、内容が他人の目に触れる状態で督促状を送る
- SNSなどで借金の事実を書き込む
こうした行為は、単なる貸金業法違反にとどまらず、刑法上の犯罪行為に該当する可能性も高い悪質な取り立てです。
脅迫的な言動と暴力的な態度
大声を張り上げる、乱暴な言葉を使う、暴力団の影をちらつかせるなど、債務者を威迫する言動は一切禁止されています。
- 「殺すぞ」「埋めるぞ」などの生命・身体に危害を加えるような発言
- 「子供がどうなっても知らないぞ」などの家族への脅し
- 「腎臓を売れ」「風俗で働け」などの人権を無視した資金調達の強要
- 自宅の物を壊したり、ドアを蹴ったりする暴力行為
これらは明確な違法行為であり、録音などの証拠があれば警察が動く案件となります。
慰謝料請求の現実的なハードルとリスク
違法な取り立てを受けた場合、理屈の上では慰謝料請求が可能ですが、実際に訴訟を起こして賠償金を勝ち取るまでには高いハードルが存在します。感情的に「許せない」という気持ちだけで進めると、かえって経済的な損失を被る可能性があるため、冷静な判断が必要です。
慰謝料の相場と弁護士費用のバランス
過去の判例において、違法な取り立てに対する慰謝料の認定額は、数十万円程度にとどまるケースが多く見られます。行為が悪質で長期間に及ぶ場合でも、100万円を超える慰謝料が認められることは稀です。
一方で、慰謝料請求のための裁判を弁護士に依頼する場合、着手金や成功報酬などの費用がかかります。請求額が少額であれば、弁護士費用の方が高くなり、手元に残るお金がマイナスになる「費用倒れ」のリスクが非常に高くなります。
| 慰謝料の相場 | 数万円〜50万円程度(被害の程度による) |
|---|---|
| 弁護士費用 | 着手金20万円〜 + 成功報酬 + 実費 |
| 期間 | 半年〜1年以上かかることも |
| 結論 | 経済的利益を得る目的では割に合わないことが多い |
因果関係の証明の難しさ
精神的苦痛に対して慰謝料を請求する場合、「違法な督促行為」と「精神疾患の発症・悪化」との間に明確な因果関係があることを証明しなければなりません。
医師の診断書があったとしても、「借金そのもののプレッシャー」や「仕事のストレス」、「家庭環境」など、督促以外の要因が影響している可能性を指摘されると、督促だけが原因であると断定することが難しくなります。相手側の弁護士もその点を突いて反論してくるため、裁判での立証は容易ではありません。
借金自体はなくならない
最も重要な点は、慰謝料請求をしても、あなたが抱えている借金自体は消滅しないということです。慰謝料が認められたとしても、それは借金の元本と相殺されるだけであり、残りの借金は引き続き返済義務が残ります。
また、慰謝料請求の争いをしている間も、法的な手続きをとらない限り、督促が止まるとは限りません。裁判で争っている最中に給料の差し押さえなどの強制執行を受けるリスクもあります。
まずは「借金問題を解決すること」を最優先し、その過程で相手方の違法性が極めて高い場合にのみ、付随的な対応として慰謝料を検討するのが現実的です。
精神的苦痛を証明するために必要な証拠
それでも相手業者の行為が許せず、何らかの法的措置や行政処分を求めたい場合は、客観的な証拠が不可欠です。「怖かった」「酷かった」という証言だけでは、警察も弁護士も動くことができません。以下のような証拠を確実に保存してください。
録音データ
電話での会話内容や、自宅訪問時のやり取りをICレコーダーやスマートフォンの録音アプリで記録します。特に、脅迫的な言葉、大声、暴力的な物音などは強力な証拠になります。
通話録音機能がないスマホの場合でも、スピーカー通話にして別の機器で録音するなどの工夫で記録を残せます。
詳細な記録メモ(督促日記)
いつ、誰から、どのような方法で督促があったかを詳細に記録したメモも、積み重なれば証拠能力を持ちます。以下の項目をノートやスプレッドシートに記録してください。
- 日時(年月日、開始時刻、終了時刻)
- 相手の業者名、担当者名
- 電話番号(着信履歴のスクリーンショットも保存)
- 会話の内容(言われた言葉をできるだけ正確に)
- その時の自分の心理状態や体調の変化
物的証拠
形に残るものは全て保存します。
- 督促状、催告書、電報などの郵便物(封筒も含めて保管)
- FAXの受信用紙
- 張り紙の写真
- 自宅周辺に居座っている様子の写真や動画
- 壊された物の写真
医師の診断書
精神的な被害を受けたことを証明するためには、心療内科や精神科の診断書が必要です。診断書には、単に「うつ状態」と書かれるだけでなく、可能であれば「執拗な督促によるストレスが原因である可能性が高い」といった原因に関する記載を医師に相談してみることも重要ですが、医師の判断によるため必ず記載してもらえるとは限りません。
今すぐ督促を止めて精神的負担をなくす方法
慰謝料請求は時間がかかりますが、今の精神的苦痛の原因である「督促」を止めることは、法律の手続きを使えばすぐに可能です。
受任通知の送付による即時停止
弁護士や司法書士に債務整理(任意整理、自己破産、個人再生など)を依頼すると、専門家は債権者に対して「受任通知(介入通知)」を送付します。貸金業法第21条9項により、受任通知を受け取った業者は、債務者に対して直接の督促や取り立てを行うことが禁止されています。
これは業者の自主規制ではなく、法律による強制力のある規制です。依頼したその日、あるいは翌日には電話や訪問がピタリと止まります。これにより、精神的な平穏を即座に取り戻すことができます。
すべての連絡窓口が専門家へ一本化される
受任通知送付後は、返済に関する交渉や連絡はすべて依頼した弁護士・司法書士が窓口となります。あなた自身が業者と話す必要は一切なくなります。
深夜の電話に怯えることも、ポストの督促状にビクビクすることもなくなります。勤務先への連絡も当然止まります。
返済も一時的にストップする
債務整理の手続きが始まると、和解が成立するか手続きが完了するまでの数ヶ月間、業者への返済を一時的に止めることができます。この期間を利用して、弁護士費用の積立を行ったり、乱れた生活基盤を立て直したりすることが可能です。
違法な取り立て被害の公的な通報窓口
弁護士に依頼する費用の準備が難しい場合や、債務整理をする前に違法行為そのものを告発したい場合は、以下の公的機関の窓口を利用してください。ただし、これらの窓口は業者への指導や監督を行う場所であり、あなたの借金を代わりに解決してくれるわけではない点に注意が必要です。
金融庁「金融サービス利用者相談室」
貸金業者の監督官庁である金融庁の相談窓口です。違法な取り立ての事実を報告することで、業者に対して調査が入ったり、業務停止命令などの行政処分が下されたりする可能性があります。
相談する際は、具体的な業者名、日時、担当者名、発言内容などを詳しく伝える必要があります。
日本貸金業協会「貸金業相談・紛争解決センター」
貸金業界の自主規制機関です。加盟している業者に対して、苦情の解決に向けた指導や助言を行ってくれます。相手が登録業者であれば、協会からの連絡で態度を改めるケースがあります。
警察署「生活安全課」
暴力行為、器物損壊、脅迫、不退去などの刑法犯罪に該当する場合は、警察に被害届を出すことができます。ただし、警察は「民事不介入」の原則があるため、単なる借金の返済トラブルや言葉による厳しい督促程度では動いてくれないことが多いです。
身の危険を感じるレベルの具体的な被害がある場合に、証拠を持って相談に行くべき場所です。
全国の消費生活センター
借金問題を含めた消費者トラブル全般の相談を受け付けています。専門の相談員が対処法をアドバイスしてくれたり、法テラスなどの専門機関を紹介してくれたりします。
督促停止後の生活再建シミュレーション
慰謝料請求にこだわるよりも、債務整理によって督促を止め、借金問題を根本から解決する方が、結果的に精神的な回復も早くなります。手続きを行うと生活がどう変わるのか、具体的な流れをイメージしてみましょう。
手続き開始〜1週間:静寂が戻る
専門家と契約した直後から、あれほど鳴り止まなかった携帯電話が静かになります。郵便受けには広告チラシしか入らなくなり、チャイムの音に心臓が跳ねることもなくなります。まずはしっかりと睡眠を取り、疲弊した心身を休めることができます。
1ヶ月〜3ヶ月:生活の立て直し
返済が止まっている間に、家計の状況を整理します。これまでの返済額がゼロになるため、手元の給料から生活費を確保し、無理のない範囲で弁護士費用の積立を始めます。借金のプレッシャーがない状態で、冷静にこれからの人生設計を考える時間が持てます。
3ヶ月〜6ヶ月:将来の返済計画の決定
任意整理であれば、将来発生する利息をカットし、元金のみを3〜5年(36〜60回)で分割返済する和解案をまとめます。自己破産であれば、借金を全額免除してもらうための申し立て準備を進めます。
いずれの方法でも、「いつ終わるかわからない返済」から「終わりの見える計画的な返済(または免責)」へと変わります。
解決後:新しいスタート
手続きが完了すれば、過去の借金や督促の恐怖に縛られることはありません。信用情報機関には一定期間記録が残りますが(ブラックリスト)、現金主義の生活を送ることで健全な家計管理が身につき、精神的にも経済的にも自立した生活を取り戻すことができます。
違法な業者への怒りはあるかもしれませんが、その怒りをエネルギーに変えて法的な手続きを進めることが、相手業者にとって最も嫌なことであり、あなたにとっては最大の防御となります。
まとめ
厳しい督促で精神的苦痛を受けた場合、慰謝料請求は理論上可能ですが、費用や立証の面でハードルが高く、おすすめできる解決策とは言えません。最も優先すべきは、弁護士や司法書士の力を借りて督促を即時に止め、借金問題そのものを解決することです。
受任通知を送れば、その日から直接の取り立てはなくなります。違法な行為の証拠がある場合は、債務整理の交渉材料として専門家に託すのが賢明です。
債務整理に強いおすすめ事務所ランキングの事務所では、違法性の高い督促についての相談もできるので、今の苦しい状況に合った次の一歩を検討してみてください。
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※本記事は一般的な情報提供を目的としています。状況により最適な対応は変わるため、不安が強い場合は早めに専門家へ相談してください。


