家財道具の差押えでテレビやパソコンは持っていかれる?没収される範囲の基準と当日の部屋の中

家財道具が差し押さえられる範囲について、テレビやパソコンがどうなるか心配です

借金の滞納が続いており、裁判所から通知が届いている状況です。もうすぐ強制執行で家に「赤紙」を貼りに来るとネットで見て、恐怖で眠れません。

特に心配なのが、生活に使っているテレビやパソコン、スマホといった家電製品です。これらが全て持っていかれてしまうと、生活ができなくなりますし、仕事や子供の学校にも影響が出ます。

ドラマのように部屋中の物に赤紙を貼られて、家具も家電も全て運び出されてしまうのでしょうか。具体的に何が残せて、何が没収対象になるのか、隠してもバレるのかなど、当日の詳細を教えてください。

生活に必要な「差押禁止動産」は法律で守られており、すべてを奪われることはありません

強制執行の通知が届き、生活の基盤が崩れるのではないかとご不安なことお察しします。まず安心してください。現代の日本の法律では、生活に不可欠な家財道具まで剥ぎ取るような非人道的な差押えは禁止されています。

テレビやパソコンであっても、生活や業務に必要最小限のものは手元に残せます。逆に言えば、高価な貴金属や余剰な家電は処分の対象になりますが、実際に執行官が部屋に入った際に何を見て判断するのかには明確な基準があります。

この記事では、動産執行で「持っていかれる物」と「残せる物」の具体的な境界線と、執行官が家に来る当日の流れ、そして家財を守るために今すぐできる対策について詳しく解説します。

この記事でわかること

動産執行の現実と「差押禁止動産」のルール

「借金を返さないと、身ぐるみを剥がされる」というイメージは、昭和のドラマや漫画の影響が強いものです。現在の法制度において、債権者(貸した側)が行う「動産執行(家財道具の差押え)」は、実は非常にハードルが高く、費用対効果の悪い手段とされています。

なぜ家財道具の差押えは少ないのか

債権者が強制執行を行う主な目的は、あなたの財産を換金して借金の回収に充てることです。しかし、中古の家具や家電は、リサイクルショップでの買取価格を見ればわかる通り、市場価値が極めて低いため、差し押さえて競売にかけても、運搬費や保管料などの経費で赤字になることがほとんどです。

そのため、債権者は通常、手間がかからず確実に現金を回収できる「給与の差押え」や「銀行口座の差押え」を優先します。動産執行が行われるのは、給与先も口座も不明で、他に回収手段がない場合の「最終手段」や「嫌がらせに近い圧力」として行われるケースに限られるのが現実です。

法律で守られた「差押禁止動産」

たとえ動産執行が行われたとしても、民事執行法第131条により「差押禁止動産」が定められており、債務者とその家族の最低限の生活を守るための配慮がなされています。執行官が部屋に入ってきても、以下の条件に当てはまるものは赤い札(封印)を貼ることができません。

  • 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳、建具
  • 生活に必要な食料や燃料(2ヶ月分)
  • 現金(66万円までの金銭)
  • 職業や学習に必要な器具(農具、漁具、技術職の道具など)
  • 実印、仏壇、位牌、系譜、日記、商業帳簿

つまり、明日からの生活ができなくなるような「家具一式没収」は法律上あり得ないのです。しかし、何が「生活に欠くことができない」と判断されるかは、時代の変化や執行官の裁量によって左右される部分があります。

テレビ・パソコン・スマホは没収されるか

現代生活において必需品となっているデジタル家電は、差押えの対象になるかどうかの判断が分かれやすいポイントです。ここでは、品目ごとの具体的な判断基準を解説します。

テレビ:1台目は原則セーフ、2台目はアウト

かつてテレビは贅沢品でしたが、現在は「情報の取得に不可欠なもの」として扱われます。そのため、一家に一台(リビングにあるメインのテレビ)であれば、大型の液晶テレビであっても差押禁止動産として残されるのが一般的です。

ただし、以下のような場合は差押えの対象(赤札が貼られる対象)になる可能性があります。

  • 各部屋にテレビがあり、2台目、3台目としてカウントされるもの
  • 壁一面のホームシアターセットなど、明らかに生活必需品の範囲を超える高額な嗜好品
  • 未開封の箱に入ったままなど、転売目的と見なされるもの

パソコン:用途によって判断が分かれる

パソコンに関しては、「それがなければ仕事や生活が成り立たないか」が基準になります。近年ではテレワークや子供の学習用としての普及が進んでいるため、1台だけであれば「生活必需品」と見なされ、差し押さえられない傾向が強まっています。

しかし、以下のようなケースでは換金価値のある財産としてマークされるリスクがあります。

差押えリスク低 ・型落ちのノートパソコン
・仕事のデータが入っている業務用のPC
・子供の学習用タブレット
差押えリスク高 ・最新型の高額なゲーミングPC
・未使用または使用頻度の低いサブ機
・高値で売却可能なApple製品(MacBook Proの最新モデル等)

執行官は「中身のデータ」には興味がありませんが、「ハードウェアとしての市場価値」を見ます。プライバシー保護の観点からPC内のデータを消去する手間を嫌い、あえて差し押さえないケースも多いですが、絶対ではないことを覚えておきましょう。

スマートフォン:命綱として守られる

スマートフォンは今や、連絡手段、情報収集、決済手段など、生活の全てに関わるインフラです。そのため、個人が使用しているスマートフォン本体が差し押さえられることは、まずありません。

ただし、ここでも「余剰分」は例外です。未開封のiPhoneの在庫を自宅に多数抱えている場合や、明らかに個人使用の範囲を超える台数が転がっている場合は、在庫商品(資産)として差し押さえられる可能性があります。

家具・家電・現金の具体的な線引きリスト

テレビやパソコン以外にも、家の中にある様々な物品について、差押えの可否を整理しました。執行官が来たときに慌てないよう、ご自身の部屋を見渡しながらチェックしてください。

生活家電(冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・エアコン)

これら「白物家電」と呼ばれるものは、生活維持のために必須であるため、基本的にすべて差押禁止動産です。ドラム式洗濯機や大型冷蔵庫であっても、それが1台しかない場合は持っていかれません。

エアコンについても、取り外し費用がかかる上に中古価値が低いため、差し押さえの対象になることはまずありません。夏場の生命維持に必要な設備としても認められています。

家具(ベッド・タンス・テーブル)

家具類も同様に、生活必需品として守られます。ニトリやIKEAで購入した一般的な家具であれば、まず心配いりません。しかし、以下のような「骨董的価値」「美術的価値」があるものは例外です。

  • 有名作家による高級アンティーク家具
  • 数百万円するようなペルシャ絨毯
  • 美術品として扱われる壺や絵画

これらは「家具」ではなく「資産」と見なされ、赤紙の対象になります。

現金(タンス預金・財布の中身)

動産執行の現場で最も執行官が探すのは、実は「現金」です。家具や家電と違い、換金の手間がなくそのまま回収できるからです。

しかし、現金であっても「66万円」までは標準的な世帯の2ヶ月分の生活費相当額として、差押禁止とされています。つまり、手持ちの現金が66万円以下であれば、執行官に見つかっても没収されることはありません。66万円を超える部分のみが、その場で徴収されます。

ゲーム機・趣味の品・ペット

PlayStation 5やNintendo Switchなどの最新ゲーム機は、換金性が高いため差押えの対象になりやすい物品です。ただし、子供が使用している場合などは情状酌量されることもあります。

フィギュアやコレクション品も、市場価値が高いと判断されれば対象になります。ペット(犬や猫)については、法律上は「動産」ですが、保管や飼育の手間、動物愛護の観点から、実際に差し押さえられることは人道的にあり得ません。

ローン返済中の商品にある「所有権留保」の罠

ここまで解説した「差押禁止動産」のルールには、一つだけ大きな落とし穴があります。それは、その商品自体のローン(分割払い)が残っている場合です。

所有権留保とは何か

家電量販店のショッピングローンやクレジット分割払いで購入した商品の場合、支払いが完済されるまでは、商品の所有権は信販会社や販売店にあります。これを「所有権留保」と言います。

もし、その商品のローン支払いを滞納している場合、債権者(信販会社)は「差押え」という手続きではなく、「所有権に基づく商品の引き上げ(返還請求)」を行うことができます。

この場合は生活必需品でも持っていかれる

この「引き上げ」は、裁判所の執行官が行う差押えとは別の理屈で動きます。「お金を払っていないなら、商品は返してください」という契約上の権利行使であるため、たとえテレビやパソコン、洗濯機などの生活必需品であっても、没収(回収)される可能性があります。

特に車の場合はこれが顕著で、ローンが残っている車はほぼ確実に引き上げられます。家財道具に関しても、高額なローンの支払いが残っている場合は、差押禁止のルールが適用されない可能性がある点に注意が必要です。

執行官が家に来る当日の流れと家族への影響

実際に「動産執行」が行われる日、どのような手順で何が行われるのかをシミュレーションします。恐怖心を和らげるためにも、具体的なプロセスを知っておきましょう。

1. 執行官の訪問と解錠

執行官は事前の予告なく(あるいは直前に通知して)訪問します。債権者の代理人や、場合によっては鍵屋、運送業者を伴ってくることもあります。あなたが居留守を使ったり不在であったりしても、執行官には「解錠権限」があるため、鍵屋を使って鍵を開け、勝手に部屋に入ることができます。

チェーンロックがかかっていても切断して入室してきますので、居留守は無意味どころか、鍵の交換費用まで請求されるリスクを増やすだけです。

2. 部屋の捜索と赤紙の貼付

執行官は部屋の中を見渡し、換金価値のあるものを探します。タンスの引き出しを開けたり、金庫を探したりすることもあります。このとき、同居の家族がいる場合は「これは誰のものか」を確認されます。

明らかに家族(妻や子供)の所有物であると証明できるものについては、差押えの対象外となります。しかし、共有物や判別がつかないものは、世帯主(債務者)のものと推定されて差し押さえられることがあります。

価値があると判断された物には、「差押物件封印票」などの用紙(通称:赤紙)が貼られます。これを勝手に剥がすと「封印破棄罪」という犯罪になるため、絶対に触れてはいけません。

3. その場で運び出されるわけではない

誤解されがちですが、赤紙を貼られた家具や家電は、その場ですぐにトラックに積まれて持ち去られるわけではありません。基本的には、そのままあなたの家で「保管」することになります(使用は可能です)。

後日、その家の中で「競売」が行われ、買い手が決まった時点で初めて引き渡すことになります。多くの場合、親族や配偶者がその場で買い取る(落札する)ことで、そのまま使い続けるという解決策が取られます。

家財道具への差押えを回避する唯一の方法

動産執行は、受ける側にとってはプライバシーを侵害され、精神的なダメージが非常に大きい手続きです。しかし、執行官が家に来る前であれば、まだ回避する方法は残されています。

執行停止をかけるための「債務整理」

差押え(強制執行)を止める法的効力を持つのが、弁護士や司法書士による「債務整理」の手続きです。特に「個人再生」や「自己破産」の申立てを行うと、法律上、強制執行の手続きを中止または失効させることができます。

また、まだ裁判所からの通知が来ていない段階、あるいは「支払督促」が届いた直後の段階であれば、「任意整理」によって分割払いの和解を結ぶことで、債権者に差押えを取り下げてもらう交渉も可能です。

何もせずに当日を迎えるのが最大のリスク

一番危険なのは、「どうせ財産なんてないから」と開き直って放置することや、恐怖のあまり現実逃避をしてしまうことです。

動産執行で取られる物が少なくても、その後に続く「給与の差押え」や「口座の凍結」、そして何より「家に執行官が土足で入ってきた」という事実は、あなたとご家族の平穏な生活を完全に破壊します。執行官がドアを叩く前に、専門家に間に入ってもらい、法的なバリアを張ることが急務です。

まとめ

家財道具の差押えにおいて、テレビやパソコン、洗濯機などの生活必需品がすべて没収されることはありません。法律は最低限の生活を保障していますが、執行官が家の中を捜索するという事態自体が、生活への大きな脅威であることに変わりはありません。

大切な家族のプライバシーと平穏な暮らしを守るためには、強制執行が実行される前に借金問題の根本的な解決に着手する必要があります。手遅れになる前に、専門家の力を借りて執行を回避する手続きを進めてください。

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日本リーガル司法書士事務所の代表司法書士 計良宏之

日本リーガル司法書士事務所

監修者:代表司法書士 計良 宏之

東京都荒川区東日暮里5-17-7 秋山ビル1階

東京司法書士会所属 第8484号
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員 第1201114号

借金問題・債務整理に関する情報を、できるだけわかりやすく整理してお伝えしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。状況により最適な対応は変わるため、不安が強い場合は早めに専門家へ相談してください。

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