支払督促(しはらいとくそく)について詳しく解説

支払督促とは、債権者が裁判所に申立てを行い、債務者に対して支払いを命じる裁判所の命令のことです。通常の訴訟手続きよりも簡易・迅速に債権回収を図るための制度で、民事訴訟法上の特別な手続きとして規定されています。

債務者からの異議申立てがなければ短期間で債務名義を取得でき、強制執行が可能になります。債務整理を検討している方にとっては、支払督促を受け取った場合の対応を知っておくことが重要です。

支払督促とは

支払督促とは、債権者が簡易裁判所に申立てを行い、裁判所が債務者の言い分を聞かずに発する支払命令のことです。民事訴訟法第382条から第402条に規定されており、通常の訴訟よりも簡易・迅速に債権回収を図るための制度です。

この手続きの大きな特徴は、債務者が一定期間内に異議を申し立てなければ、裁判所の判決と同じ効力を持つ「債務名義」となり、それに基づいて強制執行(財産の差押えなど)が可能になる点です。

法的根拠 民事訴訟法第382条〜第402条
管轄裁判所 債務者の住所地を管轄する簡易裁判所
申立人(債権者)のメリット
  • 通常の訴訟より手続きが簡単・迅速
  • 訴訟より申立て費用が安い
  • 債務者が異議を出さなければ早期に債務名義を取得できる
  • 時効の中断(更新)効果がある
相手方(債務者)の主な対応
  • 支払いに応じる
  • 異議申立てを行う(通常訴訟に移行)
  • 無視する(仮執行宣言付き支払督促が確定)

上記の表は支払督促の基本的な特徴をまとめたものです。支払督促は債権者側にとって便利な制度ですが、債務者側にとっては注意が必要です。特に、支払督促を無視すると債務名義が確定し、財産の差押えなどの強制執行を受ける可能性があります。

支払督促の仕組み

支払督促の手続きは主に以下のステップで進行します。債権者側と債務者側、それぞれの立場での流れを理解することが重要です。

  1. 債権者が簡易裁判所に支払督促の申立てを行う
  2. 裁判所が申立内容を審査し、要件を満たしていれば支払督促を発する
  3. 裁判所から債務者に支払督促が送達される
  4. 債務者は支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立てができる
  5. 債務者が異議申立てをした場合、手続きは通常訴訟に移行する
  6. 債務者が異議申立てをしなかった場合、債権者は仮執行宣言付き支払督促の申立てができる
  7. 仮執行宣言付き支払督促が債務者に送達される
  8. 債務者は仮執行宣言付き支払督促を受け取ってから2週間以内に異議申立てができる
  9. 債務者が異議申立てをしなかった場合、支払督促が確定して債務名義となる
  10. 債権者は確定した支払督促に基づいて強制執行ができる

上記のステップは支払督促の一般的な流れです。最近では、「支払督促申立てオンラインシステム」が導入され、インターネット経由で申立てができるようになり、債権者側の利便性が向上しています。

支払督促の特徴として、債務者の言い分を聞かずに発せられるという点があります。そのため、債務者側には異議申立ての機会が2回(支払督促に対する異議と仮執行宣言付き支払督促に対する異議)用意されています。債務者が異議申立てを行えば、通常訴訟に移行するため、債権者側としては根拠のない請求をしにくい仕組みになっています。

支払督促を受け取った場合の対応

支払督促を受け取った場合、債務者はいくつかの選択肢があります。状況に応じて適切な対応を取ることが重要です。

支払いに応じる 債務の内容が正しく、支払う意思と能力がある場合は、督促に従って支払いを行います。支払いを証明する領収書などは必ず保管しておきましょう。
異議申立てを行う 債務の内容に不服がある場合や、時効が完成している場合などは、2週間以内に異議申立てを行います。異議申立ては簡易な書式で可能で、理由の記載は必要ありません。
債務整理を検討する 支払いが困難な場合は、任意整理や個人再生、自己破産などの債務整理を検討します。支払督促を受け取ったら早めに弁護士や司法書士に相談しましょう。
無視する(非推奨) 何も対応しないと、仮執行宣言付き支払督促が確定し、債務名義となります。その結果、財産の差押えなどの強制執行を受ける可能性があるため、無視することは避けるべきです。

上記の表は支払督促を受け取った場合の主な対応方法です。特に重要なのは、支払督促を無視しないことです。内容に不服がある場合でも、まずは異議申立てを行い、その後で具体的な対応を検討しましょう。

また、支払督促には2週間の異議申立て期間があるため、受け取ったらすぐに対応することが重要です。期間を過ぎると異議申立てができなくなり、支払督促が確定してしまいます。不安な場合は、早めに弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

異議申立ての方法と効果

支払督促に対する異議申立ては、債務者の重要な権利です。異議申立ての方法や効果について理解しておきましょう。

  • 異議申立て期間:支払督促または仮執行宣言付き支払督促を受け取ってから2週間以内
  • 異議申立て方法:異議申立書を裁判所に提出(郵送可)
  • 異議申立書の記載事項:事件番号、当事者の氏名、「支払督促に異議を申し立てます」という文言
  • 異議の理由:理由の記載は必要なく、単に「異議あり」という意思表示だけで有効
  • 異議申立ての効果:手続きが通常訴訟に移行する
  • 訴訟への移行:異議申立て後、管轄裁判所(通常は簡易裁判所)での訴訟手続きが始まる
  • 異議申立て後の対応:裁判所からの呼出状に従って期日に出頭し、具体的な主張や証拠を提出

上記のリストは支払督促に対する異議申立ての主なポイントです。異議申立ては比較的簡単な手続きで、特別な理由を記載する必要はありません。「支払督促に異議を申し立てます」という一文だけでも有効です。

異議申立ての最大の効果は、手続きが通常訴訟に移行することです。これにより、債権者は債権の存在や金額について証明責任を負うことになり、債務者も自分の主張を裁判所で行うことができます。債務者にとっては、裁判所で公正な判断を受ける機会を得られるという大きなメリットがあります。

支払督促と時効の関係

支払督促と時効の関係は、債務整理や過払い金請求を検討する上で重要なポイントです。支払督促は時効の中断(更新)事由となるため、時効の管理に影響します。

支払督促による時効の中断(更新) 支払督促の申立ては、民法上の「裁判上の請求」に該当し、時効の中断(更新)事由となります。
中断(更新)の効果が生じる時点 支払督促の申立て時点で時効の中断(更新)効果が生じます。
時効中断(更新)の確定要件 支払督促が確定するか、異議申立て後の訴訟で勝訴判決が確定する必要があります。申立てが取り下げられたり、却下されたりした場合は、中断(更新)効果は最終的に生じません。
異議申立てと時効 債務者が異議申立てをしても、時効の中断(更新)効果自体は否定されません。手続きが訴訟に移行し、その判決内容によって最終的な効果が決まります。
時効が完成している場合 債務者が時効の援用をすれば、債権者の請求は認められません。ただし、時効の援用は債務者が明示的に行う必要があります。

上記の表は支払督促と時効の関係をまとめたものです。債務者側が時効の完成を主張する場合には、支払督促に対して異議申立てを行い、その後の訴訟手続きの中で時効の援用を主張する必要があります。

また、債権者側は時効が完成しそうな債権を回収するために、支払督促を利用することがあります。そのため、支払督促を受け取った際には、債務の発生時期を確認し、時効が完成している可能性がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

債務整理と支払督促

債務整理を検討している方が支払督促を受け取った場合の対応について説明します。債務整理の種類によって対応が異なるため、状況に応じた適切な判断が必要です。

任意整理と支払督促 支払督促を受け取った債務を任意整理の対象にすることは可能です。まず異議申立てを行い、その後で弁護士や司法書士に相談して任意整理の手続きを進めましょう。専門家に依頼すると、受任通知が債権者に送られ、裁判外での交渉が始まります。
個人再生と支払督促 支払督促を受けた債務も個人再生の対象となります。個人再生の申立てを行うと、支払督促手続きは中止されます(民事再生法第39条)。ただし、すでに差押えが行われている場合は、中止命令を裁判所に申し立てる必要があることもあります。
自己破産と支払督促 支払督促を受けた債務も自己破産の対象となります。破産手続開始決定がされると、支払督促手続きを含むすべての債権回収手続きは中止されます(破産法第42条)。
特定調停と支払督促 支払督促を受けた債務も特定調停の対象となります。特定調停の申立てを行うと、裁判所の判断で支払督促手続きを中止するよう命じることができます(特定調停法第13条)。

上記の表は債務整理の各方法と支払督促の関係をまとめたものです。いずれの方法でも、まずは支払督促に対する異議申立てを行い、その上で債務整理の手続きを進めることが基本です。

支払督促を無視して債務整理を進めようとすると、その間に支払督促が確定し、財産の差押えなどの強制執行を受ける可能性があります。特に任意整理の場合は、交渉中でも法的な強制力はないため、支払督促に対しては必ず異議申立てを行うことが重要です。

過払い金請求と支払督促

過払い金請求を行う際に支払督促を利用するケース、または債権者から支払督促を受けた際に過払い金があると判明したケースについて説明します。

  1. 過払い金請求での支払督促の利用:過払い金返還請求の方法として支払督促を利用することも可能です。ただし、貸金業者が異議申立てをする可能性が高いため、最初から訴訟を提起することが一般的です。
  2. 支払督促に対する過払い金の主張:債権者から支払督促を受けた際、取引履歴を確認したところ過払い金が発生していると判明した場合は、異議申立てを行い、その後の訴訟手続きの中で過払い金の主張をすることができます。
  3. 相殺の主張:債務と過払い金が存在する場合、債務者は相殺の主張をすることができます。債務額より過払い金が多ければ、債務は消滅し、差額の返還を求めることができます。
  4. 弁護士・司法書士への相談:過払い金の計算は複雑なため、支払督促を受けた際に過払い金の可能性があると思われる場合は、弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

上記のリストは過払い金請求と支払督促の関係をまとめたものです。特に重要なのは、支払督促を受けた際に過払い金の可能性があると思われる場合は、まず異議申立てを行い、その後で過払い金の有無を専門家に確認してもらうことです。

異議申立てを行わずに支払督促が確定してしまうと、後から過払い金が判明しても、支払督促に基づく債務の強制執行を受ける可能性があります。過払い金を別途請求することはできますが、手続きが複雑になるため、まずは異議申立てを行うことが重要です。

よくある質問

支払督促を無視するとどうなりますか?

支払督促を無視すると、仮執行宣言付き支払督促が発せられ、それも無視すると支払督促が確定します。確定した支払督促は債務名義となり、債権者は強制執行(財産の差押えなど)ができるようになります。

また、支払督促が確定すると、その内容について原則として争えなくなります。そのため、内容に不服がある場合でも、まずは期間内に異議申立てを行うことが重要です。支払督促を無視することはリスクが大きいため、必ず何らかの対応をしましょう。

支払督促の異議申立て期間を過ぎてしまいました。どうすればいいですか?

支払督促の異議申立て期間(2週間)を過ぎてしまった場合でも、仮執行宣言付き支払督促に対する異議申立て(2週間)の機会があります。仮執行宣言付き支払督促を受け取ったら、すぐに異議申立てを行いましょう。

両方の期間を過ぎてしまい、支払督促が確定した場合は、「異議申立てができなかったことについてやむを得ない事由がある」と認められれば、支払督促の送達から2週間以内に限り、督促異議の申立てができる場合があります(民事訴訟法第397条)。ただし、「やむを得ない事由」の認定は厳格なため、専門家に相談することをおすすめします。

支払督促の内容に間違いがあります。どうすればいいですか?

支払督促の内容に間違いがある場合(債務の金額が実際より多い、すでに支払い済みの債務が含まれている、そもそも債務が存在しないなど)は、まず異議申立てを行いましょう。異議申立ては内容に関わらず単に「異議あり」という意思表示だけで有効です。

異議申立て後、手続きは通常訴訟に移行するので、その中で具体的な主張や証拠を提出することができます。債務の金額や存在に関する証拠(領収書、返済記録など)があれば、それらを準備しておきましょう。不安な場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

支払督促は、債権者が簡易裁判所に申立てを行い、債務者に対して支払いを命じる裁判所の命令です。通常の訴訟よりも簡易・迅速に債権回収を図ることができるため、多くの債権者に利用されています。

支払督促を受け取った債務者は、内容が正しければ支払いに応じることができますが、内容に不服がある場合や支払いが困難な場合は、2週間以内に異議申立てを行うことが重要です。異議申立てを行うと手続きは通常訴訟に移行し、裁判所で公正な判断を受ける機会が得られます。

支払督促を無視すると、支払督促が確定して債務名義となり、財産の差押えなどの強制執行を受ける可能性があります。そのため、内容に不服がある場合でも、まずは期間内に異議申立てを行い、その後で具体的な対応を検討することが重要です。

債務整理を検討している方が支払督促を受け取った場合は、まず異議申立てを行い、その上で弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。過払い金の可能性がある場合も同様に、まず異議申立てを行い、その後で専門家に過払い金の有無を確認してもらうことが大切です。

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