清算価値保障の原則(せいさんかちほしょうのげんそく)について詳しく解説

清算価値保障の原則とは、債務整理手続き(特に個人再生)において、債権者が受け取る弁済額は、仮に債務者が自己破産した場合に配当として受け取れる金額を下回ってはならないとする原則です。

この原則は、債務者の再建を図りながらも、債権者の利益を一定程度保護するための重要なルールです。個人再生手続きを進める上で理解しておくべき基本的な概念であり、再生計画の認可に関わる重要な要件となっています。

清算価値保障の原則の基本

清算価値保障の原則は、民事再生法第174条の2第2項や同法第221条第1項などに規定されている重要な法的原則です。この原則の意義や目的を理解することは、債務整理の選択や手続きを進める上で大切です。

原則の意義と目的

清算価値保障の原則は、個人再生手続きにおいて債権者の利益を守るために設けられています。債務者は債務の大幅な減額という恩恵を受けられる一方、債権者も最低限の利益が保障されるという公平性を確保する役割を果たしています。

この原則がなければ、債権者は個人再生よりも自己破産を選択したほうが有利となる場合があり、再生手続きへの同意が得られにくくなります。そのため、再生手続きの実効性を高める上で重要な役割を担っています。

清算価値保障の原則の根拠法
原則の基本的な考え方
  • 債権者は再生計画によって、破産した場合より不利な立場に置かれるべきではない
  • 最低弁済額は「清算価値」以上でなければならない
  • 債務者と債権者双方の利益のバランスを図る

この表は清算価値保障の原則の法的根拠と基本的な考え方を示しています。この原則により、個人再生手続きの公平性と実効性が確保されています。

清算価値とは

「清算価値」とは、債務者が自己破産した場合に、債権者が配当として受け取れるであろう金額のことです。具体的には、債務者の財産を換価(現金化)して債権者に分配した場合の金額を指します。

清算価値の算定には、債務者の全財産から自己破産時に処分されない財産(破産法上の自由財産や個別の免責財産)を除いた金額をベースにします。この金額が、個人再生において債権者に対して最低限支払うべき金額となります。

清算価値の計算方法

清算価値の正確な計算は、個人再生手続きの成否を左右する重要なポイントです。基本的な計算方法と、計算時の注意点について解説します。

清算価値の基本的な計算方法

  1. 債務者の全財産を把握する
  2. 自由財産(破産法上処分されない財産)を除外する
  3. 財産の価値を評価する(市場価値ベース)
  4. 換価費用や管財人報酬などの諸経費を差し引く
  5. 優先債権(税金や社会保険料など)を差し引く
  6. 残額を無担保債権者への配当見込額(=清算価値)とする

このリストは清算価値を計算する基本的な手順を示しています。実際の計算は複雑なケースも多いため、専門家の助言を受けながら進めることが重要です。

計算対象となる財産

清算価値を計算する際には、債務者の様々な財産が対象となります。ただし、すべての財産が計算対象になるわけではありません。

計算対象となる主な財産 計算対象とならない主な財産(自由財産等)
  • 不動産(土地・建物)
  • 自動車(価値が高いもの)
  • 預貯金
  • 有価証券(株式・債券など)
  • 貴金属・美術品・骨董品
  • 生命保険の解約返戻金
  • 債務者が有する債権
  • 99万円以下の現金(自由財産)
  • 差押禁止財産(生活必需品)
  • 職業に必要な器具・道具
  • 通常の生活に必要な家財道具
  • 転売価値が低い日用品
  • 政策支給の年金
  • 差押禁止債権(一定の給与など)

この表は清算価値の計算対象となる主な財産と、計算対象とならない主な財産を示しています。自由財産や差押禁止財産は清算価値の計算から除外されます。

評価額の算定方法

財産の評価額をどのように算定するかは、清算価値を正確に計算する上で重要なポイントです。一般的には、以下のような評価方法が用いられます。

財産の種類 評価方法 特記事項
不動産 強制売却価格(市場価格の6〜7割程度) 地域や物件の状態により変動
自動車 中古車市場での売却価格 年式・走行距離により大きく変動
預貯金 残高そのまま 99万円の自由財産を考慮
有価証券 市場価格 変動リスクを考慮した評価も
生命保険 解約返戻金 小規模なものは除外される場合も

この表は主な財産の評価方法と特記事項を示しています。実際の評価は、専門家(弁護士や司法書士)の助言を受けながら進めることが重要です。

個人再生における清算価値保障の原則の適用

個人再生手続きにおいて、清算価値保障の原則はどのように適用されるのか、具体的に見ていきましょう。特に小規模個人再生と給与所得者等再生における適用の違いについても理解しておくことが重要です。

小規模個人再生の場合

小規模個人再生は、債務総額が5,000万円以下の個人が利用できる再生手続きです。この手続きでは、清算価値保障の原則が以下のように適用されます。

  • 最低弁済額:債務総額の1/5か、清算価値のいずれか大きい方
  • 清算価値が債務総額の1/5を超える場合:清算価値以上の弁済が必要
  • 清算価値が債務総額の1/5以下の場合:債務総額の1/5以上の弁済が必要
  • 最低弁済額が100万円未満の場合:100万円以上の弁済が必要
  • 弁済総額に上限はないが、清算価値を超える部分は任意

このリストは小規模個人再生における清算価値保障の原則の適用ルールを示しています。債務総額と清算価値の関係によって、最低弁済額が決まります。

給与所得者等再生の場合

給与所得者等再生は、安定した収入を得ている個人が利用できる再生手続きです。この手続きでも清算価値保障の原則は適用されますが、以下のような特徴があります。

給与所得者等再生の特徴
  • 原則として、将来の可処分所得の2年分を3年間で分割弁済
  • 清算価値保障の原則により、清算価値が可処分所得の2年分を上回る場合は清算価値以上の弁済が必要
  • 住宅資金特別条項を利用する場合は、別途要件あり
可処分所得の計算
  • 手取り収入から、生活費・住居費・教育費などの必要経費を差し引いた金額
  • 標準的な必要経費は、家族構成に応じた基準があり
  • 裁判所が認める範囲で柔軟な計算が可能

この表は給与所得者等再生における清算価値保障の原則の適用と可処分所得の計算方法を示しています。清算価値と可処分所得の2年分を比較し、大きい方を最低弁済額とします。

住宅資金特別条項と清算価値保障

住宅ローンがある場合、「住宅資金特別条項」を利用することで、住宅を手放さずに個人再生を行うことができます。この場合も清算価値保障の原則は適用されますが、計算方法に特徴があります。

  1. 住宅の価値から住宅ローン残高を差し引いた「余剰価値」を算出
  2. 余剰価値がある場合、それを清算価値に含める
  3. 住宅以外の財産の清算価値と合算して総清算価値を算出
  4. 総清算価値と最低弁済額(債務総額の1/5または可処分所得の2年分)を比較
  5. 大きい方の金額を最低弁済額として再生計画を立てる

このリストは住宅資金特別条項を利用する場合の清算価値計算の流れを示しています。住宅に余剰価値がある場合は、それも含めて清算価値を計算します。

自己破産との比較

個人再生と自己破産は債務整理の代表的な方法ですが、清算価値の観点から見ると大きな違いがあります。債務者の状況に応じた適切な選択をするためにも、この違いを理解しておくことが重要です。

清算価値から見た個人再生と自己破産の違い

比較項目 個人再生 自己破産
財産の処分 原則として財産を手放さない
(清算価値相当額を弁済)
自由財産以外の財産は換価処分
債務の減額 原則として債務の最大8割程度の減額 債務の全額免除(免責許可決定による)
弁済額 清算価値以上の金額を弁済 財産を換価した金額を配当
清算価値が高い場合 弁済額が高くなり負担が大きい 財産を失うが債務は免除
住宅などの高価値資産 住宅資金特別条項で残せる可能性あり 原則として処分対象

この表は個人再生と自己破産の主な違いを示しています。清算価値が高い場合、個人再生では弁済額が高くなる一方、自己破産では財産を失うというトレードオフがあります。

どちらが有利になるケース

債務者の状況によって、個人再生と自己破産のどちらが有利になるかは異なります。特に清算価値の観点から見たそれぞれのケースを理解しておくと、適切な選択の助けになります。

  • 清算価値が低く、安定収入がある場合:個人再生が有利(財産を保持しながら債務減額)
  • 清算価値が高く、弁済能力が低い場合:自己破産が有利(弁済負担を避けられる)
  • 住宅を残したい場合:個人再生が有利(住宅資金特別条項の活用)
  • 職業制限がある場合:個人再生が有利(自己破産による制限を避けられる)
  • 債務額が比較的少ない場合:任意整理など他の方法も検討すべき

このリストは個人再生と自己破産のどちらが有利になるケースを示しています。自分の状況に合わせて最適な債務整理方法を選ぶことが重要です。

清算価値保障の原則に関する実務上の対応

清算価値保障の原則は理論上の概念だけでなく、実務においても重要な意味を持ちます。実際の個人再生手続きを進める上での注意点や対応方法について解説します。

清算価値が高い場合の対応

清算価値が高くなると、個人再生における最低弁済額も高くなります。その結果、再生計画の履行が困難になるケースもあります。こうした場合の対応策を知っておくことが重要です。

  1. 財産の一部を任意売却して債務返済に充てる(清算価値の減少)
  2. 親族からの支援を受けて弁済資金を確保する
  3. 弁済期間を最大限延長する(小規模個人再生では最長5年まで)
  4. 住宅資金特別条項を活用して住宅ローンと切り離して検討する
  5. 場合によっては自己破産も選択肢として検討する

このリストは清算価値が高い場合の主な対応策を示しています。状況に応じて最適な方法を専門家と相談しながら選ぶことが大切です。

財産評価をめぐる実務上の問題

清算価値を算定する際の財産評価は、実務上様々な問題や争点となることがあります。以下のような点に注意が必要です。

実務上の問題 対応方法
財産評価の基準が不明確 類似事例や裁判所の運用を参考に、専門家の助言を受ける
換価費用の見積もりが難しい 過去の事例を参考に保守的な見積もりを行う
財産価値の変動リスク 申立時点での評価を基本としつつ、変動要因も考慮
債権者との評価の食い違い 客観的な資料(鑑定評価書など)を用意して説明
隠し財産の疑い 財産の全容を正直に開示し、疑念を招かない

この表は財産評価をめぐる実務上の問題と対応方法を示しています。透明性の高い手続きを心がけることで、円滑な個人再生を進めることができます。

専門家のサポートの重要性

清算価値の算定や個人再生手続き全般において、弁護士や司法書士などの専門家のサポートは非常に重要です。特に以下のような点でサポートが必要となります。

  • 財産評価の適切な方法の選択と実施
  • 清算価値の正確な計算
  • 再生計画案の作成と最適化
  • 裁判所とのやり取りや書類作成
  • 債権者との交渉や説明
  • 免責不許可事由の有無の確認
  • 手続き全体のスケジュール管理

このリストは専門家のサポートが必要となる主な場面を示しています。個人再生は複雑な法的手続きであるため、経験豊富な専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

清算価値保障の原則は、個人再生手続きにおいて、債権者が受け取る弁済額は、仮に債務者が自己破産した場合に配当として受け取れる金額を下回ってはならないとする重要な原則です。この原則は、債務者の再建を図りながらも債権者の利益を保護するための仕組みとして機能しています。

清算価値は、債務者の財産から自由財産を除いた金額をベースに計算され、この金額が個人再生における最低弁済額の基準となります。小規模個人再生では債務総額の1/5と清算価値を比較し、給与所得者等再生では可処分所得の2年分と清算価値を比較して、いずれも大きい方を最低弁済額とします。

自己破産との比較では、清算価値が高い場合は自己破産が有利になる可能性があり、低い場合は個人再生が有利になる傾向があります。また、住宅を残したい場合は、住宅資金特別条項を活用した個人再生が選択肢となります。

実務上は、財産評価の方法や清算価値が高い場合の対応など様々な問題が生じますが、専門家のサポートを受けながら適切に対処することが重要です。債務整理を検討する際は、自分の状況に合わせて最適な方法を選択し、新たな生活再建につなげることが大切です。

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