給与の差押え(きゅうよのさしおさえ)について詳しく解説

給与の差押えとは、債務者が借金の返済を滞らせたときに、債権者が裁判所を通じて債務者の給与から直接回収する強制執行手続きのことです。債務整理や過払い金請求を検討する方にとって、給与差押えは深刻な事態であり、その仕組みや対応策を理解することが重要です。

この手続きは民事執行法に基づいて行われ、債権者は債務名義(判決や支払督促など)を取得した上で、債務者の勤務先に対して給与の一部を債権者に支払うよう命じる差押命令を申し立てます。債務者の生活維持のため、差し押さえられる金額には一定の制限が設けられています。

給与差押えの基本概念

給与差押えは、債務者が債務を履行しない場合に、債権者が裁判所を通じて債務者の給与から直接債権を回収する法的手続きです。これは強制執行の一種であり、債務者の意思に関わらず行われます。

給与差押えを行うためには、債権者はまず債務名義を取得する必要があります。債務名義とは、債務の存在と内容を公的に証明する文書で、判決や支払督促、公正証書などがこれに該当します。

法的根拠 民事執行法第151条〜第153条
必要な書類
  • 債務名義(判決、支払督促など)
  • 執行文
  • 差押命令申立書
差押えの効果 債務者の勤務先が給与の一部を債権者に直接支払う

この表は給与差押えの基本的な枠組みを示しています。差押えは債務者の給与を直接的に対象とするため、債務者の生活に大きな影響を与える可能性があります。

給与差押えの手続きと流れ

給与差押えの手続きは、債権者が裁判所に申立てを行うことから始まります。申立てが認められると、裁判所から債務者の勤務先に差押命令が送達され、勤務先は命令に従って給与の一部を債権者に支払うことになります。

給与差押えは継続的に行われるのが特徴で、債務が完済されるまで毎月の給与から一定額が差し押さえられ続けます。また、同時に複数の債権者から差押えを受けることもあります。

  1. 債権者が債務名義を取得する(裁判や支払督促など)
  2. 債権者が執行文の付与を受ける
  3. 債権者が債務者の勤務先を特定する
  4. 債権者が裁判所に差押命令を申し立てる
  5. 裁判所が差押命令を発令する
  6. 命令が債務者と勤務先に送達される
  7. 勤務先が給与から一定額を差し押さえる
  8. 勤務先が差押金を債権者に支払う

上記は給与差押えの一般的な流れを示しています。差押えが開始されると、債務の完済または差押えの解除がない限り継続されます。

差押えの対象と限度額

給与差押えには、債務者の生活維持のために一定の制限が設けられています。すべての給与を差し押さえることはできず、法律で定められた計算式に基づいて差押可能額が決まります。

差押えの対象となるのは、給料、賞与、各種手当などの定期的な収入です。ただし、退職金や年金については異なる規定が適用される場合があります。

給与額(手取り) 差押可能額
33万円以下の部分 給与の1/4まで
33万円超〜66万円以下の部分 給与の1/3まで
66万円超の部分 給与の1/2まで

この表は2023年3月現在の給与差押えの限度額を示しています(民事執行法第152条)。実際の差押額は、この限度内で裁判所が決定します。なお、税金や社会保険料などを控除した手取り額が対象です。

例えば、手取り給与が30万円の場合、差押可能額は7.5万円(30万円×1/4)となります。同様に、手取り給与が40万円の場合は、33万円までの部分が8.25万円(33万円×1/4)、33万円を超える7万円の部分が2.33万円(7万円×1/3)で、合計10.58万円が差押可能額となります。

給与差押えへの対応策

給与が差し押さえられることで経済的に困難な状況に陥った場合、いくつかの対応策が考えられます。状況に応じて適切な対策を取ることが重要です。

  • 債権者との交渉(任意整理)
  • 差押禁止債権の範囲変更申立て
  • 執行異議の申立て
  • 個人再生手続きの申立て
  • 自己破産の申立て

最も基本的な対応策は、債権者と直接交渉して返済計画を立て直すことです。これにより差押えを解除できる可能性があります。しかし、複数の債権者がいる場合や交渉が難しい場合は、法的な債務整理が必要になることがあります。

また、生活が著しく困難になる場合は、「差押禁止債権の範囲変更申立て」により、差押え額の減額を裁判所に求めることも可能です(民事執行法第153条)。この申立てが認められると、法定の差押可能額よりも少ない金額に減額されることがあります。

債務整理による給与差押えの解決

給与差押えを受けている場合、債務整理によって問題を解決することができます。債務整理の種類によって効果は異なりますが、いずれも差押えを止めることが可能です。

特に重要なのは、個人再生や自己破産を申し立てると、「中止命令」や「包括的禁止命令」により差押えを含むすべての債権回収行為が一時的に止まる点です。また、債務整理が成立すれば、差押えは解除されます。

債務整理の種類 給与差押えへの効果
任意整理 債権者と合意すれば差押えを解除できる
個人再生 申立てにより差押えが停止、再生計画認可で解除
自己破産 申立てにより差押えが停止、免責決定で解除

この表は各債務整理手続きが給与差押えに与える効果をまとめたものです。状況に応じて最適な債務整理方法を選択することが重要です。

なお、債務整理を行う場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家に依頼すると、受任通知の送付により債権者からの取立てが止まるという効果も期待できます。

よくある質問

給与が差し押さえられると勤務先にはどのように伝わりますか?

給与差押えが行われると、裁判所から勤務先に「差押命令」という書類が送達されます。これにより勤務先の経理担当者や上司など、給与支払いに関わる部署に差押えの事実が伝わります。

また、勤務先は差押命令に従って給与から一定額を差し引き、債権者に支払う義務を負います。この処理のために社内で情報が共有される可能性があります。プライバシーの問題はありますが、法的な手続きであるため勤務先が差押えを拒否することはできません。

給与差押えによって解雇されることはありますか?

労働基準法第17条では、「賃金の差押えを理由とする解雇」を禁止しています。つまり、給与差押えを理由として従業員を解雇することは法律違反となります。

ただし、実務上は給与差押えによる事務負担の増加や会社の信用に関する懸念から、職場での立場が不利になるケースもあります。また、借金問題が業務に影響を与えるなど別の理由で人事評価に影響することもあるため、早めに債務問題を解決することが重要です。

複数の債権者から給与差押えを受けた場合はどうなりますか?

複数の債権者から給与差押えを受けた場合、原則として差押えの申立てが先に行われた債権者が優先されます(「先着手主義」といいます)。最初の債権者の債権回収が完了した後、次の債権者の差押えが有効になります。

ただし、一部の債権(税金、養育費など)には優先権があり、通常の債権に優先して差し押さえられることがあります。複数の差押えを受けている状況では、任意整理や法的債務整理によって総合的に解決することを検討した方が良いでしょう。

まとめ

給与差押えは、債務者が返済を滞らせた場合に債権者が裁判所を通じて行う強制執行手続きです。債務者の給与から一定額を直接回収する強力な手段であり、債務者の生活に大きな影響を与えます。

差押えには法律で定められた上限があり、給与(手取り)の全額を差し押さえることはできません。33万円以下の部分は1/4、33万円超〜66万円以下の部分は1/3、66万円超の部分は1/2が上限となります。これにより、債務者の最低限の生活は保障されています。

給与差押えを受けた場合の対応策としては、債権者との直接交渉、差押禁止債権の範囲変更申立て、各種の債務整理手続きなどがあります。特に個人再生や自己破産の申立てを行うと、中止命令などにより差押えを止めることができます。

給与差押えを受けている場合は、早急に対応することが重要です。放置すると生活がさらに困難になるだけでなく、職場での信用問題にも発展する可能性があります。弁護士や司法書士などの専門家に相談し、自分の状況に合った最適な解決策を見つけることをおすすめします。

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