破産債権(はさんさいけん)について詳しく解説

破産債権とは、破産手続開始前の原因に基づいて破産者に対して生じた財産上の請求権のことです。簡単に言えば、破産手続が始まる前に発生した債務者に対する借金や未払金などの債権のことを指します。

破産法第2条第5項に定義されており、破産手続において配当の対象となる債権です。破産債権者は債権届出をして破産手続に参加し、破産財団から配当を受けることができます。

破産債権の種類と優先順位

破産債権は、その性質や優先順位によっていくつかの種類に分類されます。破産法では、破産債権間の優先順位が明確に定められており、財団債権や優先的破産債権は一般の破産債権よりも優先して弁済を受けることができます。

破産手続においては、財団債権、優先的破産債権、一般の破産債権、劣後的破産債権の順に弁済されるという優先順位があります。この順位に従って破産財団からの配当が行われます。

破産債権の主な種類

財団債権
  • 破産手続の費用(破産管財人の報酬など)
  • 破産手続開始後の破産者の業務・財産に関して生じた請求権
  • 租税債権(一部)
  • 破産手続開始前3か月以内の労働債権
優先的破産債権
  • 一般の先取特権がある債権
  • 財団債権に含まれない労働債権
  • 財団債権に含まれない租税債権
一般の破産債権
  • 無担保の貸金債権
  • クレジットカード債務
  • 未払いの医療費
  • 未払いの公共料金
  • 保証債務
劣後的破産債権
  • 破産手続開始後の利息
  • 破産手続参加のための費用
  • 罰金・過料
  • 無利息の債権で期限未到来のものの法定利息相当額

この表は破産債権の主な種類とその内容を示しています。破産手続においては、上から順に優先して弁済されます。財団債権は破産債権に優先して弁済され、優先的破産債権は一般の破産債権より優先されます。

別除権との関係

抵当権や質権などの担保権を有する債権者は、別除権者として破産手続によらず担保権を行使して弁済を受けることができます。ただし、担保権の行使によって回収できなかった部分(不足額)については、破産債権として届け出ることができます。

  • 別除権:担保権を破産手続によらず行使できる権利
  • 別除権者:担保権を有する債権者
  • 別除権の対象:抵当権、質権、動産先取特権、商事留置権など
  • 不足額主義:担保権行使による回収不足分を破産債権として届出可能
  • 別除権協定:破産管財人と別除権者の合意による担保権実行方法の調整

上記のリストは別除権と破産債権の関係に関する主なポイントを示しています。担保権を持つ債権者は別除権者として特別な地位を有しますが、担保権実行によって回収できなかった部分については破産債権者となります。

破産債権の届出と調査

破産手続において破産債権者が配当を受けるためには、債権届出を行う必要があります。破産手続開始決定の公告後、裁判所が定めた届出期間内に債権届出書を提出します。

提出された債権届出に対しては、破産管財人が内容を調査し、認否を行います。この調査・認否の結果は債権者集会で報告され、債権額が確定します。

破産債権の届出手続き

  1. 届出書の作成:破産債権届出書に必要事項を記入
  2. 添付書類の準備:債権の発生原因を示す資料(契約書、取引明細等)を添付
  3. 裁判所への提出:破産手続が開始された裁判所に提出
  4. 届出期間の遵守:裁判所が定めた届出期間内に提出(通常は1〜2か月程度)
  5. 債権者集会への出席:必要に応じて債権者集会に出席(省略されることもある)
  6. 債権の確定:破産管財人の認否と他の債権者の異議を経て確定
  7. 配当の受領:破産手続終結時に配当がある場合はその受領

このリストは破産債権の届出から配当受領までの基本的な流れを示しています。債権届出を行わなければ原則として配当を受けることはできないため、期間内の届出が重要です。

破産債権の調査と認否

届け出られた破産債権については、破産管財人が調査を行い、その内容が正当かどうかを判断します(認否)。破産管財人は債権の存在や金額について認めるか否かを決定します。

破産管財人の認否の種類
  • 認める:債権の内容を全て認める
  • 一部認める:債権の一部(金額等)のみを認める
  • 認めない:債権の存在自体を認めない
  • 留保:判断を留保する(追加資料の提出を求めるなど)
債権者による異議
  • 他の債権者も他の債権に対して異議を述べることができる
  • 異議があった場合、債権確定のための訴訟が必要になることがある
債権確定の効果
  • 確定した債権額に基づいて配当が行われる
  • 破産手続における確定は他の手続にも一定の効力を持つ

この表は破産債権の調査と認否に関する主なポイントを示しています。債権が認められなかった場合や異議が出された場合には、債権確定のための訴訟が必要になることがあります。

破産債権と非破産債権の違い

破産手続においては、全ての債権が破産債権として取り扱われるわけではありません。破産債権とならない債権(非破産債権)も存在し、これらは破産手続の対象外となります。

破産債権と非破産債権を区別する最も重要な基準は、債権発生の原因が破産手続開始前にあるか後にあるかという点です。また、法律の規定により特定の債権が破産債権から除外されている場合もあります。

破産債権となるもの
  • 破産手続開始前の借入金
  • 破産手続開始前の未払金・未払費用
  • 破産手続開始前の保証債務
  • 破産手続開始前の不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 破産手続開始前の税金・社会保険料
破産債権とならないもの
  • 破産手続開始後に発生した債権
  • 非金銭債権(特定の物の引渡請求権など)
  • 破産者の養育費請求権
  • 扶養請求権
  • 破産者の相続権・遺贈に関する権利
特殊な取扱いの債権
  • 双方未履行双務契約に基づく債権(管財人の選択による)
  • 条件付債権・期限付債権(一定の評価額で届出可能)
  • 非金銭債権(金銭的評価を行って届出)
  • 継続的給付債権(一定の方法で現在価値に換算)

この表は破産債権となるものとならないものの主な例、および特殊な取扱いがされる債権を示しています。債権が破産債権に該当するかどうかは、破産手続における取扱いに大きな影響を与えます。

破産債権と免責の関係

個人の破産手続においては、裁判所から免責許可決定を受けることで、破産債権の支払義務から解放されることが一般的です。ただし、全ての破産債権が免責の対象となるわけではなく、法律で「非免責債権」として定められているものは免責後も支払義務が残ります。

破産法第253条には、免責の効力が及ばない債権(非免責債権)が列挙されています。これらの債権は、免責許可決定を受けても支払義務が残るため、債務整理を検討する際には注意が必要です。

主な非免責債権

  • 租税等の請求権:税金、健康保険料、国民年金保険料など
  • 罰金・過料等:犯罪による罰金、行政上の過料など
  • 悪意による不法行為に基づく損害賠償請求権:詐欺、横領などによる損害
  • 養育費等の請求権:子どもの養育費、配偶者の扶養料など
  • 重大な過失により生じた損害賠償請求権(裁判所が免責不適当と認めたもの)
  • 浪費・賭博等による債務(裁判所が免責不適当と認めたもの)
  • 破産手続開始前1年以内の債務の現実の有無等を隠す目的でなした行為に基づく請求権
  • 債権者名簿に記載されなかった破産債権(破産者の故意による場合)

このリストは免責の効力が及ばない主な非免責債権を示しています。これらの債権は、破産手続が終了し免責許可決定を受けた後も、破産者に対して請求することが可能です。

免責と保証人の関係

破産者が免責を受けても、その債務の保証人の責任は免除されません。破産者の債務について保証人となっている人がいる場合、債権者は保証人に対して全額の請求が可能です。

主債務者(破産者)
  • 免責許可決定により支払義務から解放される
  • 自然債務(法的強制力のない債務)は残る
保証人
  • 主債務者の免責に関わらず支払義務は継続
  • 債権者からの請求に応じる必要がある
  • 保証人が支払った場合、主債務者に求償可能だが強制力はない
物上保証人
  • 主債務者の免責に関わらず担保権の実行は可能
  • 担保となっている財産からの回収は継続

この表は破産者の免責と保証人・物上保証人の関係を示しています。主債務者が破産・免責を受けても、保証人や物上保証人の責任は免除されないため、保証人等にとっては大きな負担となる可能性があります。

破産債権の時効と利息の扱い

破産手続における破産債権の時効や利息の扱いには、通常の債権とは異なる特殊なルールがあります。破産手続開始決定があると、破産債権については時効の進行や利息の発生に関して特別な取扱いがされます。

破産債権の時効

  • 破産手続開始決定により時効の進行は中断(停止ではなく中断)
  • 債権届出により時効の中断効果が生じる
  • 破産手続終結後、新たに時効期間が進行を開始
  • 免責許可決定により法的強制力がなくなるため、実質的に時効の意味は薄れる
  • 非免責債権については通常通り時効が進行(破産手続終結後)

このリストは破産債権の時効に関する主なポイントを示しています。破産手続は時効の中断事由となるため、破産手続終結後に新たな時効期間が始まります。

破産債権の利息

破産手続開始決定があると、破産債権については原則として利息の発生が停止します。これは公平な配当を実現するためのルールです。

破産手続開始前の利息
  • 破産債権の元本に含まれる
  • 元本と同様に配当の対象となる
破産手続開始後の利息
  • 劣後的破産債権となる(配当は一般の破産債権より後)
  • 配当原資が十分にある場合のみ配当の対象となる(実務上はほとんどない)
別除権付債権の利息
  • 担保権の行使による回収の範囲内では利息も回収可能
  • 担保権実行による回収額を超える部分の利息は通常の破産債権と同様の扱い
免責後の利息
  • 免責の対象となった債権については、法的強制力がなくなるため実質的に意味がない
  • 非免責債権については通常通り利息が発生

この表は破産債権の利息に関する取扱いを示しています。破産手続開始後の利息は劣後的破産債権として扱われるため、実質的には回収が難しくなります。

破産債権に関する注意点

破産手続を検討する債務者や、債権者として破産手続に参加する際には、破産債権に関して以下の点に注意する必要があります。

債務者(破産者)の注意点

  • 免責対象外となる非免責債権の把握
  • 保証人への影響の考慮(保証人の責任は免除されない)
  • 債権者名簿の正確な作成(意図的な記載漏れは免責不許可事由になり得る)
  • 住宅ローン特則を利用する場合の注意(住宅ローンは別除権として扱われる)
  • 財産隠しなどの詐害行為の禁止(免責不許可事由となる)
  • 破産手続開始後の新たな債務の管理(破産債権とはならない)

このリストは破産手続を検討する債務者が破産債権に関して注意すべき主なポイントを示しています。特に非免責債権や保証人への影響は重要な検討事項です。

債権者の注意点

  1. 債権届出期間の厳守:期間内に届出をしないと配当を受けられない可能性
  2. 債権内容の正確な記載:債権額や発生原因の正確な記載が重要
  3. 担保権の適切な行使:別除権の行使と不足額の破産債権届出の両方を検討
  4. 債権者集会への出席:必要に応じて債権者集会に出席(省略される場合もある)
  5. 異議申立ての検討:他の債権者の債権に疑問がある場合は異議申立てを検討
  6. 配当見込みの把握:破産財団の状況から配当見込みを把握
  7. 非免責債権の取扱い:免責後も請求可能な債権かどうかの確認

このリストは破産手続に参加する債権者が破産債権に関して注意すべき主なポイントを示しています。特に債権届出期間の厳守と債権内容の正確な記載が重要です。

少額管財・同時廃止事件における破産債権

個人の破産手続には、少額管財事件や同時廃止事件があり、それぞれ破産債権の取扱いに特徴があります。

少額管財事件
  • 破産管財人が選任され、債権調査・換価・配当が行われる
  • 債権者集会が省略されることが多い
  • 配当があるケースとないケースがある
  • 手続きが簡略化されている
同時廃止事件
  • 破産管財人が選任されず、換価・配当手続きがない
  • 配当はない(財産がないか極めて少額のため)
  • 債権調査・債権者集会も行われない
  • 免責手続のみが行われる

この表は少額管財事件と同時廃止事件における破産債権の取扱いの違いを示しています。同時廃止事件では配当手続きがないため、債権者は回収を期待できませんが、免責対象外の債権については引き続き請求が可能です。

まとめ

破産債権とは、破産手続開始前の原因に基づいて破産者に対して生じた財産上の請求権のことです。破産法第2条第5項に定義されており、破産手続において配当の対象となる債権です。

破産債権は、財団債権、優先的破産債権、一般の破産債権、劣後的破産債権などに分類され、それぞれ優先順位が異なります。担保権を有する債権者は別除権者として破産手続によらず担保権を行使できますが、不足額については破産債権として届け出ることができます。

破産手続において破産債権者が配当を受けるためには、債権届出を行う必要があります。届け出られた債権は破産管財人によって調査・認否され、その結果は債権者集会で報告されます。

個人の破産手続においては、免責許可決定により破産債権の支払義務から解放されることが一般的ですが、非免責債権として定められているものは免責後も支払義務が残ります。また、破産者が免責を受けても、その債務の保証人の責任は免除されません。

破産手続を検討する際には、これらの破産債権に関する特徴と注意点を理解し、適切な判断をすることが重要です。特に非免責債権の把握や保証人への影響の考慮は、債務整理の方法を選択する上で重要な検討事項となります。

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