ハードシップ免責(はーどしっぷめんせき)について詳しく解説
ハードシップ免責とは、個人再生手続きにおいて、再生計画を完済できなくなった場合でも、やむを得ない事情があると認められれば、残りの債務の支払いを免除してもらえる制度です。「ハードシップ」とは英語で「困難」を意味し、困難な状況に陥った債務者を救済するための制度となっています。
通常、個人再生では3年から5年の再生計画に基づいて返済を続ける必要がありますが、病気や事故、解雇など予期せぬ事態により返済継続が困難になった場合に、裁判所に申し立てることで残債務の免除を受けられる可能性があります。
■もくじ
ハードシップ免責の基本的な仕組み
ハードシップ免責は民事再生法第235条の9に規定されている制度です。個人再生手続きにおいて、再生計画認可決定の確定後に債務者にやむを得ない事情が生じた場合に、残りの債務の免除を裁判所に申し立てることができます。
この制度は「再生計画による返済は始めたものの、途中で返済が困難になった」という状況を救済するためのセーフティネットとして機能しています。予期せぬ困難に直面した債務者に「再出発」のチャンスを与える重要な制度です。
ハードシップ免責の特徴 | |
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免責対象となる債務 |
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この表はハードシップ免責の基本的な特徴と対象となる債務の範囲を示しています。ハードシップ免責は個人再生手続きの一部として機能する制度であり、再生計画に含まれる債務のみが対象となります。
ハードシップ免責が認められる条件
ハードシップ免責が認められるためには、以下の条件を満たす必要があります。これらの条件は民事再生法第235条の9に規定されており、裁判所が厳格に審査します。
- 再生計画認可決定が確定していること
- 再生計画に基づく支払いを続けられないやむを得ない事情が発生していること
- 債権者の利益を不当に害しないこと
- 破産手続きが開始されていないこと
- 再生計画の変更によっても再生債権者の権利を適切に保護できないこと
上記のリストはハードシップ免責が認められるための主な条件を示しています。特に「やむを得ない事情」の存在が重要で、単なる返済意欲の低下では認められません。
「やむを得ない事情」の具体例
「やむを得ない事情」とは、債務者の責任によらない客観的な事情で、再生計画の履行が困難になった場合を指します。以下のような事例が該当します。
病気・怪我関連 |
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収入減少関連 |
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家族関連 |
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災害関連 |
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この表はハードシップ免責の「やむを得ない事情」として認められる可能性のある具体例を示しています。いずれも債務者の責任によらない外部的な要因であることが重要です。
ハードシップ免責の申立て手続き
ハードシップ免責を申し立てるには、以下の手続きを経る必要があります。申立ては債務者本人が行うこともできますが、専門的な知識が必要なため、司法書士や弁護士などの専門家に依頼することをおすすめします。
- 申立書の作成:ハードシップ免責申立書とやむを得ない事情を証明する資料を準備
- 裁判所への提出:個人再生手続きを行った裁判所に申立書を提出
- 審査・調査:裁判所が申立内容を審査し、必要に応じて調査を実施
- 債権者への通知:裁判所から債権者に申立てがあった旨を通知
- 審問期日:裁判所が債務者や債権者から意見を聴取する期日の設定
- 裁判所の判断:免責を認めるか否かの決定
- 異議申立期間:決定に不服がある場合の異議申立て(2週間)
- 確定:異議がなければ決定が確定
このリストはハードシップ免責申立ての流れを示しています。申立てから決定までは通常1~3ヶ月程度かかります。手続きの過程で裁判所からの質問に適切に回答することが重要です。
必要な資料
ハードシップ免責の申立てには、やむを得ない事情を証明するための資料が必要です。具体的には以下のような資料を準備します。
収入関連資料 |
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病気・怪我関連資料 |
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家計状況資料 |
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その他の資料 |
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この表はハードシップ免責申立てに必要な主な資料を示しています。申立ての理由によって必要な資料は異なりますので、専門家に相談して適切な資料を準備することが重要です。
ハードシップ免責が認められるケース・認められないケース
ハードシップ免責の判断は裁判所によって行われますが、過去の事例から認められるケースと認められにくいケースの傾向があります。以下にその例を示します。
認められやすいケース
- 重い病気や大きな怪我により長期間働けなくなった場合
- 会社の倒産や解雇により失業し、再就職が困難な場合
- 自然災害により住居や財産に大きな被害を受けた場合
- 家族の介護や看病のために仕事を辞めざるを得なくなった場合
- 再生計画認可後に一定期間(1年以上が目安)まじめに返済を続けていた場合
このリストはハードシップ免責が認められやすいケースの例です。いずれも債務者の責任によらない外部的な要因で、客観的に見て返済継続が困難と判断される状況です。
認められにくいケース
- 単なる浪費や贅沢による支出増加
- 返済意欲の低下や怠慢
- 再生計画認可直後からの返済遅延
- 新たな借入れによる返済資金の枯渇
- 予見可能だった収入減少(定年退職など)
- 一時的・短期的な収入減少
このリストはハードシップ免責が認められにくいケースの例です。債務者の責任による事情や、一時的な困難では認められない傾向があります。
ハードシップ免責と自己破産の違い
ハードシップ免責と自己破産はどちらも債務の免除を受けられる制度ですが、性質や効果に大きな違いがあります。以下にその主な違いを示します。
項目 | ハードシップ免責 | 自己破産 |
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前提条件 |
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免責される債務 |
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手続きの流れ |
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財産への影響 |
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資格制限 |
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信用情報 |
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この表はハードシップ免責と自己破産の主な違いを示しています。どちらが適しているかは個々の状況によって異なりますので、専門家に相談して判断することをおすすめします。
ハードシップ免責申立ての注意点
ハードシップ免責を申し立てる際には、以下の点に注意する必要があります。申立ては一度限りの「最後の手段」と考えるべきで、安易な利用は避けるべきです。
- 再生計画を誠実に履行していた実績が重要
- 申立理由が客観的に証明できる必要がある
- 債権者からの反対意見が出る可能性がある
- 認められなかった場合は破産手続きも検討する必要がある
- 手続き中も再生計画の支払いは可能な限り継続すべき
- 専門家のサポートを受けることが望ましい
- 再生計画変更との選択肢も検討する
このリストはハードシップ免責申立ての際の主な注意点を示しています。ハードシップ免責は最終的な救済手段であり、安易に申し立てるべきではありません。
ハードシップ免責と再生計画変更の選択
再生計画の履行が困難になった場合、ハードシップ免責の他に「再生計画変更」という選択肢もあります。状況によってどちらが適しているかを検討する必要があります。
再生計画変更が適する場合 |
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ハードシップ免責が適する場合 |
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この表は再生計画変更とハードシップ免責のどちらが適しているかの判断基準を示しています。どちらの選択肢が適切かは個々の状況によって異なりますので、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
ハードシップ免責は、個人再生手続きの途中で予期せぬ事態により返済継続が困難になった債務者を救済するための制度です。病気や事故、解雇など「やむを得ない事情」があると裁判所に認められれば、残りの債務の支払いを免除してもらえる可能性があります。
この制度を利用するためには、再生計画認可決定が確定していること、やむを得ない事情があること、債権者の利益を不当に害しないことなどの条件を満たす必要があります。申立ては個人再生手続きを行った裁判所に対して行います。
ハードシップ免責が認められるかどうかは、「やむを得ない事情」の内容や債務者の返済努力の実績など、様々な要素を総合的に考慮して裁判所が判断します。債務者の責任によらない客観的な事情で、誠実に返済を続けてきた場合には認められる可能性が高まります。
ハードシップ免責は債務者にとって「最後の救済手段」とも言える制度です。個人再生中に返済が困難になった場合には、まずは専門家に相談し、再生計画変更なども含めた選択肢を検討することをおすすめします。
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