同時廃止(どうじはいし)について詳しく解説

同時廃止とは、自己破産手続きにおいて、破産手続開始決定と同時に破産手続きを終了させる処理のことです。配当の見込みがない(換価できる財産がほとんどない)場合に適用される簡易な破産手続きで、専門用語では「同時廃止事件」と呼ばれます。

一般的な破産手続きでは破産管財人が選任され、財産の調査・換価・配当などの手続きが行われますが、同時廃止の場合はそれらの手続きが省略されるため、比較的短期間かつ低コストで自己破産手続きを完了させることができます。

同時廃止の基本的な仕組み

同時廃止は、破産法上の特別な処理方法です。通常の破産手続きでは破産手続開始決定後に破産管財人が選任され、財産の調査・換価・配当といった一連の手続きが行われますが、同時廃止では破産手続開始決定と同時に破産手続きが終了します。

破産法第216条第1項に基づき、「破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるとき」、すなわち換価できる財産がほとんどなく、債権者への配当の見込みがない場合に適用されます。

法的根拠 破産法第216条第1項
適用条件 破産財団(換価できる財産)をもって破産手続きの費用を支弁するのに不足すると認められるとき
手続きの特徴
  • 破産管財人が選任されない
  • 債権者集会が開かれない
  • 財産の調査・換価・配当手続きが省略される
  • 破産手続開始決定と同時に破産手続きが終了する
  • その後は免責手続きのみが進行する
手続きの期間 申立てから免責許可決定まで通常3〜6ヶ月程度
予納金 通常15,000円〜20,000円程度(裁判所によって異なる)

上記の表は同時廃止の基本的な仕組みを示しています。同時廃止では破産管財人が選任されないため、裁判所に納める予納金も少額で済みます。また、手続きが簡略化されるため、通常の破産手続きよりも短期間で完了することが多いです。

同時廃止が適用される条件

同時廃止が適用されるのは、主に以下のような条件を満たす場合です。裁判所が債務者の資産状況や破産原因などを総合的に判断して、同時廃止とするかどうかを決定します。

  • 処分可能な資産がほとんどない場合(現金や預金が20万円程度以下)
  • 99万円を超える自由財産拡張の申立てが認められる見込みがある場合
  • 破産手続きの費用(管財人報酬など)を捻出できるほどの資産がない場合
  • 債権者に配当できるほどの資産がない場合
  • 給与所得者など、収入や職業が安定している場合
  • 破産原因が生活費や医療費、ギャンブル以外の理由による場合
  • 詐害行為や財産隠しの疑いがない場合
  • 免責不許可事由がない、または少ない場合

このリストは同時廃止が適用される主な条件を示しています。特に重要なのは資産状況で、換価できる資産がほとんどない場合に同時廃止となる可能性が高くなります。ただし、最終的な判断は裁判所が行います。

同時廃止とならないケース

反対に、以下のような場合は同時廃止とならず、管財事件通常管財または少額管財)となる可能性が高くなります。

資産状況
  • 不動産を所有している場合
  • 高額な預貯金や有価証券を保有している場合
  • 自動車など換価価値の高い財産を所有している場合
  • 生命保険の解約返戻金が高額な場合
債務状況
  • 債務額が非常に高額(数千万円以上)な場合
  • 債権者数が多い(20社以上)場合
  • 事業者破産の場合
  • 国税や地方税の滞納が多額にある場合
破産原因
  • ギャンブルや浪費が主な原因の場合
  • 詐害行為(財産隠しなど)の疑いがある場合
  • 破産直前に高額な借入れをしている場合
  • 免責不許可事由に該当する可能性が高い場合
その他
  • 過去に破産歴がある場合
  • 債権者から反対されている場合
  • 裁判所が詳細な調査が必要と判断した場合

上記の表は同時廃止とならない主なケースを示しています。これらに該当する場合は、破産管財人が選任される「管財事件」となることが多く、手続きに時間とコストがかかります。特に換価できる財産がある場合や、破産原因に問題がある場合は、管財事件となる可能性が高くなります。

同時廃止手続きの流れ

同時廃止の手続きの流れを時系列で見ていきましょう。通常の自己破産手続きよりも簡略化されていますが、基本的な流れは同じです。

  1. 事前準備:必要書類の収集、資産状況の確認など
  2. 弁護士・司法書士への相談:状況説明と方針決定
  3. 自己破産申立書の作成:資産や負債の状況などを記載
  4. 裁判所への申立て:申立書類の提出と予納金の納付
  5. 裁判所による審査:書類審査や面接などによる審査
  6. 破産手続開始決定:裁判所が破産手続きの開始を決定
  7. 同時廃止決定:破産手続開始と同時に破産手続きの廃止を決定
  8. 免責審尋:裁判官との面接による免責についての審査
  9. 免責許可決定:裁判所が免責(借金の支払い義務の免除)を決定
  10. 確定:決定から2週間経過で確定

このリストは同時廃止の基本的な手続きの流れを示しています。同時廃止では破産管財人が選任されないため、債権者集会や財産の調査・換価・配当といった手続きが省略されます。そのため、通常の破産手続きよりも短期間で完了することが多いです。

必要な書類と準備

同時廃止を含む自己破産の申立てには、多くの書類が必要です。主な必要書類は以下の通りです。

申立書類
  • 破産申立書
  • 債権者一覧表
  • 財産目録
  • 収入・支出一覧表
  • 陳述書(破産に至った事情の説明)
添付書類
  • 戸籍謄本、住民票
  • 給与明細書(直近数か月分)
  • 源泉徴収票(過去2、3年分)
  • 課税証明書、納税証明書
  • 預金通帳(過去1年分)のコピー
  • クレジットカード利用明細
  • 健康保険証のコピー
  • 運転免許証のコピー
  • 借入れに関する契約書など
事前準備
  • 債務状況の把握:すべての借入先と借入額の確認
  • 資産状況の確認:不動産、預貯金、有価証券などの確認
  • 収支状況の整理:毎月の収入と支出の整理
  • 破産原因の整理:借入れに至った経緯の整理

上記の表は自己破産申立てに必要な主な書類と事前準備を示しています。実際に必要な書類は裁判所によって異なる場合がありますので、弁護士や司法書士に相談するとよいでしょう。同時廃止を希望する場合でも、通常の自己破産と同様の書類が必要です。

同時廃止のメリットとデメリット

同時廃止には、通常の破産手続き(管財事件)と比較して、いくつかのメリットとデメリットがあります。自己破産を検討する際は、これらを理解した上で適切な方法を選択することが重要です。

メリット

  • 手続きが簡略化されるため、短期間で完了することが多い
  • 予納金が少額(15,000円〜20,000円程度)で済む
  • 破産管財人への報酬が不要なため、費用が抑えられる
  • 債権者集会がなく、裁判所への出頭回数が少ない
  • 財産の調査・換価手続きが省略されるため、手続きが簡単
  • 早期に借金問題を解決し、生活の再建に集中できる
  • 管財事件よりも弁護士・司法書士への報酬が安いことが多い

このリストは同時廃止の主なメリットを示しています。特に手続きの簡略化と費用の削減が大きなメリットです。資産をほとんど持たない債務者にとっては、負担の少ない方法と言えます。

デメリット

  • 裁判所の審査が厳格になる場合がある
  • 免責不許可事由がある場合、免責されない可能性が高まる
  • 破産管財人による詳細な調査がないため、債権者から異議が出やすい
  • 裁判所の裁量で管財事件に変更される可能性がある
  • 免責審尋が厳しくなる傾向がある
  • 特殊な事情がある場合(多額の債務、事業者破産など)は適さない
  • 過去に破産歴がある場合は適用されにくい

このリストは同時廃止の主なデメリットを示しています。特に裁判所の審査が厳格になる傾向があり、免責審尋でも詳しく質問されることが多いです。また、裁判所の判断で管財事件に変更される可能性もあります。

管財事件との比較

同時廃止と管財事件(通常管財・少額管財)の主な違いを比較してみましょう。

同時廃止 少額管財 通常管財
破産管財人 選任されない 選任される 選任される
予納金 15,000円〜20,000円程度 20万円〜40万円程度 50万円〜100万円程度
期間 3〜6ヶ月程度 6ヶ月〜1年程度 1年〜1年半程度
債権者集会 開催されない 開催される(通常1回) 開催される(複数回)
調査の程度 裁判所の書類審査のみ 破産管財人による調査 破産管財人による詳細な調査
適する場合 資産がほとんどない 少額の資産がある 多額の資産がある・事業者

上記の表は同時廃止と管財事件の主な違いを示しています。予納金や期間、手続きの複雑さに大きな違いがあります。どの方法が適用されるかは主に資産状況によって決まりますが、最終的な判断は裁判所が行います。

同時廃止に関する注意点

同時廃止による自己破産を検討する際には、いくつかの重要な注意点があります。これらを理解した上で手続きを進めることが大切です。

裁判所の判断と変更可能性

同時廃止かどうかは最終的に裁判所が判断するものであり、申立て後に管財事件に変更される可能性もあります。

裁判所の判断基準
  • 資産状況:換価可能な財産があるかどうか
  • 債務状況:債務額や債権者数
  • 破産原因:借入れの理由や経緯
  • 免責不許可事由の有無
  • 過去の破産歴
管財事件に変更される場合
  • 申立て後の調査で資産が発見された場合
  • 債権者から異議が出された場合
  • 詐害行為や財産隠しの疑いが生じた場合
  • 免責不許可事由が発見された場合
  • 特殊な事情があると裁判所が判断した場合
変更時の対応
  • 追加の予納金が必要になる
  • 手続きの期間が延びる
  • 裁判所への出頭回数が増える
  • 弁護士・司法書士への追加報酬が発生する可能性がある

上記の表は裁判所の判断基準と管財事件に変更される可能性についての注意点を示しています。管財事件に変更される可能性も考慮した上で、資金計画を立てておくことが重要です。

免責審尋と注意点

同時廃止の場合でも、免責審尋(裁判官との面接)は行われます。この審尋は重要な手続きであり、適切に対応することが免責許可を得るために重要です。

  • 出頭は必須:無断欠席は免責不許可事由となる可能性がある
  • 質問への回答は正直に:虚偽の陳述も免責不許可事由となりうる
  • 破産原因の説明:借入れに至った経緯を簡潔に説明できるよう準備
  • 資産状況の説明:財産がないことを証明できるようにしておく
  • 今後の生活計画:再建計画や再発防止策を考えておく
  • 服装や態度:清潔で礼儀正しい態度で臨む
  • 持参物:呼出状、身分証明書、印鑑など

このリストは免責審尋に関する主な注意点を示しています。同時廃止の場合、破産管財人による詳細な調査がないため、裁判所は免責審尋で詳しく質問することが多いです。事前に弁護士や司法書士と十分に打ち合わせをしておくことが重要です。

借金の免除と例外

自己破産により免責が認められると、原則としてすべての借金が免除されますが、以下のような例外があります。

  • 租税等の請求権:所得税、住民税、固定資産税など
  • 罰金・過料等:刑事罰としての罰金、交通違反の反則金など
  • 不法行為に基づく損害賠償請求権:詐欺や横領による損害賠償など
  • 悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権:故意に他人を傷つけた場合など
  • 養育費等の請求権:子供の養育費や配偶者への扶養料など
  • 雇用関係の請求権:従業員の給料など
  • 故意または重大な過失によって債務者が債権者に対して行う義務の履行をしなかったことにより生じた損害の賠償請求権
  • 保証人や連帯保証人の求償権:保証人が支払った場合の求償権

このリストは免責されない主な債務を示しています。同時廃止による自己破産を検討する際は、これらの債務が残る可能性も考慮する必要があります。特に税金や養育費など、重要な債務については別途対応が必要です。

まとめ

同時廃止とは、自己破産手続きにおいて、破産手続開始決定と同時に破産手続きを終了させる処理のことです。配当の見込みがない(換価できる財産がほとんどない)場合に適用される簡易な破産手続きであり、破産管財人が選任されず、債権者集会も開かれません。

同時廃止のメリットとしては、手続きが簡略化されること、費用が抑えられること、短期間で完了することなどが挙げられます。一方、デメリットとしては、裁判所の審査が厳格になる傾向があること、免責審尋が厳しくなることなどがあります。

同時廃止が適用されるかどうかは最終的に裁判所が判断するものであり、申立て後に管財事件に変更される可能性もあります。また、免責が認められるとほとんどの借金が免除されますが、税金や養育費などは例外として残ることに注意が必要です。自己破産を検討する際は、弁護士や司法書士などの専門家に相談し、自分の状況に合った方法を選択することが重要です。

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