賠償額の予定(ばいしょうがくのよてい)について詳しく解説

賠償額の予定とは、契約において債務不履行が生じた場合に支払うべき損害賠償額をあらかじめ契約で定めておくことをいいます。民法第420条に規定されており、契約違反や債務不履行が発生した際の損害賠償額をめぐる紛争を防止する目的があります。

例えば、借金の返済が遅れた場合の遅延損害金や、売買契約のキャンセル料、請負契約の納期遅延による違約金などが賠償額の予定として契約に盛り込まれることがあります。債務整理においては、この賠償額の予定が過大であるケースが問題となることがあります。

賠償額の予定の法的根拠

賠償額の予定の法的根拠は民法第420条に規定されています。この条文では、債務不履行の場合に生じる損害賠償の額をあらかじめ契約で定めることができること、そしてこの額について裁判所が増減することはできないことが基本原則として示されています。

ただし、この原則には例外があり、2020年4月の民法改正により、賠償額の予定が著しく過大である場合には、裁判所が一定の範囲で減額することができるようになりました。これは債務者保護の観点から導入された重要な改正点です。

民法第420条の内容
  • 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定できる
  • 裁判所は原則としてその額を増減できない
  • 賠償額の予定は履行の強制を妨げない
  • 違約金は賠償額の予定と推定される
  • 損害賠償額の予定が著しく過大な場合、裁判所は一定の範囲で減額可能(民法改正により追加)
改正民法の影響
  • 2020年4月施行の改正民法により、過大な賠償額の予定に対する司法的救済が可能に
  • 消費者契約法による制限も併せて適用される場合がある
  • 債務者保護の傾向が強まる改正内容

この表は賠償額の予定に関する法的根拠と、2020年の民法改正による変更点を示しています。民法改正により、過大な賠償額の予定に対する債務者保護が強化されました。

賠償額の予定の機能と種類

賠償額の予定には、主に以下のような機能があります。これらの機能は互いに重なり合う場合もありますが、契約の性質や当事者の意図によって強調される機能が異なります。

  • 損害の立証困難の回避:実際の損害の立証が難しい場合でも、あらかじめ定めた額を請求できる
  • 紛争予防:損害賠償額をめぐる紛争を未然に防止する
  • 履行確保:債務者に債務の履行を促す心理的圧力となる
  • リスク分配:契約不履行のリスクを当事者間で分配する機能
  • 解除に伴う清算の簡易化:契約解除時の精算を容易にする

上記のリストは賠償額の予定の主な機能を示しています。いずれの機能も契約の安定性と予測可能性を高める効果があります。

賠償額の予定の種類

賠償額の予定は、その性質や対象となる債務不履行の態様によって、いくつかの種類に分けることができます。主な種類は以下の通りです。

遅延賠償の予定
  • 債務の履行が遅れた場合の損害賠償額を定めるもの
  • 例:遅延損害金、遅延利息など
  • 一般的に元本や契約金額に対する一定割合で定められることが多い
不能賠償の予定
  • 債務の履行が不能になった場合の損害賠償額を定めるもの
  • 例:解約違約金、キャンセル料など
  • 契約金額の全部または一定割合で定められることが多い
不完全履行の賠償予定
  • 債務が不完全に履行された場合の損害賠償額を定めるもの
  • 例:品質不良・瑕疵に対する減額や賠償額など
  • 契約金額の一定割合や修復費用相当額で定められることが多い
解除に伴う賠償予定
  • 契約解除に伴う損害賠償額を定めるもの
  • 例:中途解約金、違約解除金など
  • 残契約期間や投下資本の回収等を考慮して定められることが多い

この表は賠償額の予定の主な種類とその特徴を示しています。債務整理を検討する際には、契約に含まれる賠償額の予定がどの種類に該当するかを確認することが重要です。

賠償額の予定と違約金の違い

賠償額の予定と違約金は、しばしば混同されることがありますが、理論的には異なる概念です。民法第420条第3項では「違約金は賠償額の予定と推定する」と規定されており、違約金は原則として賠償額の予定と扱われます。

ただし、違約金には「損害賠償の予定」としての性格だけでなく、「制裁」としての性格を持つ場合もあります。契約の文言や当事者の意思解釈により、その性質が判断されます。

項目 賠償額の予定 違約金(制裁としての性格を持つ場合)
目的
  • 損害の填補
  • 損害立証の簡易化
  • 債務不履行に対する制裁
  • 履行の強制
損害の有無との関係
  • 実損害がなくても請求可能
  • 実損害と予定額の差額調整は原則不可
  • 損害の有無にかかわらず請求可能
  • 履行強制と併用可能な場合がある
法律上の推定
  • 違約金条項は賠償額の予定と推定される
  • 制裁としての性格は明示的に示される必要がある
裁判所による増減
  • 著しく過大な場合のみ減額可能(改正民法)
  • 著しく過大な場合は公序良俗違反として無効となる可能性

この表は賠償額の予定と、制裁としての性格を持つ違約金の違いを示しています。実務上は明確に区別されないことも多いですが、債務整理においては性質の違いが重要になる場合があります。

過大な賠償額の予定と裁判所の介入

従来の民法では、賠償額の予定について裁判所は原則として増減することができないとされていましたが、2020年4月施行の改正民法により、著しく過大な賠償額の予定については裁判所が減額できることになりました。

この改正は、経済的弱者である債務者保護の観点から重要な意義を持ちます。特に消費者契約や中小企業が締結する契約において、不当に高額な賠償額の予定から債務者を守る役割を果たします。

過大な賠償額の予定の判断基準

賠償額の予定が「著しく過大」かどうかの判断は、以下のような要素を総合的に考慮して行われます。

  • 実際に生じた損害額との比較
  • 契約の性質・目的
  • 契約締結に至る経緯
  • 当事者の属性(事業者か消費者か)
  • 業界の慣行・相場
  • 履行の程度(一部履行されたか否か)
  • 債務不履行の態様・帰責性
  • 交渉力の格差

このリストは裁判所が賠償額の予定が「著しく過大」かどうかを判断する際の主な考慮要素を示しています。個別の事情によって判断が異なるため、専門家の意見を求めることが重要です。

消費者契約における制限

消費者契約の場合、消費者契約法第9条により、賠償額の予定に対する追加的な制限があります。同法では、事業者に生じる平均的な損害を超える賠償額の予定は無効とされています。

これは改正民法の「著しく過大」よりも低い基準であり、消費者保護のためにより厳格な制限を課しています。債務整理においては、この点も重要な検討事項となります。

法律 制限の基準 適用範囲
改正民法(第420条)
  • 「著しく過大」な場合に減額可能
  • 高い基準(明らかに不当な場合)
  • すべての契約
消費者契約法(第9条)
  • 「平均的な損害」を超える部分は無効
  • より低い基準(合理的な損害を超える場合)
  • 消費者契約のみ
借地借家法(第21条等)
  • 特定の上限が設定されている
  • 賃貸借契約

この表は賠償額の予定に対する各法律の制限基準と適用範囲を示しています。債務整理を検討する際には、適用される法律に応じた制限を考慮することが重要です。

賠償額の予定と債務整理の関係

債務整理において、賠償額の予定は重要な考慮事項となります。特に、過大な賠償額の予定が含まれている契約の場合、債務整理の方法によって取扱いが異なります。

債務整理の各手続きにおける賠償額の予定の取扱いは以下のようになります。

  1. 任意整理:賠償額の予定が過大である場合、減額交渉の対象となる
  2. 個人再生:再生計画において、原則として他の無担保債権と同様に扱われる
  3. 自己破産:免責の対象となる(ただし非免責債権に該当する場合を除く)
  4. 特定調停:調停条項の中で、賠償額の予定の減額について合意を目指す

このリストは債務整理の各手続きにおける賠償額の予定の基本的な取扱いを示しています。具体的な事案に応じて取扱いが異なる場合もあるため、専門家の助言を求めることが重要です。

債務整理における交渉ポイント

債務整理において賠償額の予定に関する交渉を行う際、以下のような点がポイントとなります。

過大性の証明
  • 実際の損害額との比較資料の準備
  • 業界の標準的な賠償額との比較
  • 当該契約における賠償額の予定の合理性の検証
適用法令の確認
  • 消費者契約法が適用されるか
  • 特別法による制限があるか
  • 改正民法施行前後どちらの契約か
契約内容の精査
  • 賠償額の予定の性質(損害填補か制裁か)
  • 契約条項の明確性
  • 説明義務の履行状況
履行状況の確認
  • 一部履行の有無とその程度
  • 不履行に至った事情・帰責性

この表は債務整理における賠償額の予定に関する主な交渉ポイントを示しています。これらの点について十分に検討・準備することで、より有利な債務整理の結果を目指すことができます。

賠償額の予定に関する注意点

契約締結時および債務整理を検討する際には、賠償額の予定について以下の点に注意する必要があります。特に、契約書の内容をよく確認し、過大な賠償額の予定には異議を唱えることが重要です。

  • 契約締結前に賠償額の予定条項の内容を十分確認する
  • 業界の標準的な水準と比較して不当に高額でないか検討する
  • 消費者の場合、事業者に説明義務の履行を求める
  • 契約書の保管を確実に行い、債務整理時に活用できるようにする
  • 賠償額の予定が発動された場合、その妥当性を専門家に相談する
  • 債務整理を検討する際には、賠償額の予定条項の取扱いについて専門家に確認する

このリストは賠償額の予定に関する主な注意点を示しています。特に、契約締結時の確認と債務整理時の専門家への相談が重要です。

裁判例にみる過大な賠償額の予定

過大な賠償額の予定に関する裁判例には、以下のようなものがあります。これらの事例は、賠償額の予定の妥当性を判断する際の参考になります。

過大と判断された例
  • マンション購入契約の解除に伴う違約金が代金の20%(最高裁判決)
  • 会員制リゾートクラブの中途解約金が入会金の80%(東京高裁判決)
  • 結婚式場キャンセル料が挙式直前で100%(消費者契約法適用事例)
  • 携帯電話の解約金が契約残期間の利用料金全額(東京地裁判決)
妥当と判断された例
  • 建設工事請負契約の遅延損害金が日当たり請負代金の0.05%
  • 不動産賃貸借契約の解約違約金が月額賃料の2ヶ月分
  • 商品売買契約の解除に伴う違約金が契約額の10%
  • システム開発契約の納期遅延違約金が契約金額の15%まで

この表は過大な賠償額の予定に関する主な裁判例を示しています。個別の事案によって判断が異なるため、自身の契約に当てはめる際には専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

賠償額の予定とは、契約において債務不履行が生じた場合に支払うべき損害賠償額をあらかじめ定めておく契約条項です。民法第420条に規定されており、損害の立証困難の回避、紛争予防、履行確保などの機能を持ちます。

2020年4月施行の改正民法により、著しく過大な賠償額の予定については裁判所が減額できるようになりました。また、消費者契約の場合は消費者契約法により、事業者に生じる平均的な損害を超える賠償額の予定は無効とされています。

債務整理において賠償額の予定は重要な考慮事項となります。任意整理では減額交渉の対象となり、個人再生では他の無担保債権と同様に扱われ、自己破産では原則として免責の対象となります。

契約締結時には賠償額の予定条項の内容を十分確認し、債務整理を検討する際には賠償額の予定の妥当性について専門家に相談することが重要です。過大な賠償額の予定については、民法や消費者契約法などの関連法令に基づいて減額や無効を主張できる可能性があります。

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