取得費加算(しゅとくひかさん)とは?

取得費加算とは、相続や贈与によって取得した財産を売却する際、相続税贈与税として支払った税金を取得費に加算できる制度です。この制度を利用することで、譲渡所得税の計算上の取得費が増え、結果として納税額を抑えることができます。

相続や贈与で受け取った不動産などを将来売却する予定がある場合には、知っておくと非常に役立つ制度といえるでしょう。

取得費加算制度の概要

取得費加算制度は、二重課税を防ぐために設けられた特例です。相続や贈与で財産を取得した場合、その時点で相続税や贈与税が課税されます。その後、その財産を売却すると譲渡所得税が発生します。

このとき、相続税や贈与税で評価された価額がそのまま取得費になると、財産価値の値上がり分に対して二重に課税されることになります。これを防ぐために、支払った相続税や贈与税の一部を取得費に加算できる制度が設けられています。

取得費加算の目的 相続財産や贈与財産を売却する際の二重課税を調整するため
適用対象
  • 相続、遺贈死因贈与により取得した財産
  • 相続時精算課税の適用を受けた贈与財産

上記の表は取得費加算制度の基本的な目的と適用対象をまとめたものです。この制度は主に二重課税の調整を目的としており、相続や一定の贈与により取得した財産に適用されます。

取得費加算の計算方法

取得費加算額は、次の計算式で求めることができます。

  • 取得費加算額 = 相続税額 × 譲渡した財産の課税価格 ÷ 相続税の課税価格の合計額

上記の計算式は、売却した財産に対応する相続税額を計算するためのものです。全体の相続税から、売却財産に対応する分だけを取得費に加算します。

具体的な計算手順

  1. 相続財産全体の課税価格を確認する
  2. 支払った相続税の総額を確認する
  3. 売却する財産の課税価格を確認する
  4. 計算式に当てはめて取得費加算額を算出する

この計算手順は、売却する財産に対応する相続税額を正確に算出するためのステップです。実際の計算は複雑な場合があるため、専門家に相談することをおすすめします。

取得費加算の適用条件

取得費加算の制度を利用するためには、いくつかの条件を満たす必要があります。

対象となる取得方法 相続、遺贈、死因贈与、相続時精算課税の適用を受けた贈与
対象となる財産 土地、建物、株式、ゴルフ会員権など譲渡所得の対象となる資産
適用期限 相続開始から10年以内の売却(平成27年1月1日以後の相続等により取得した資産については、期限なし)

この表は、取得費加算を適用するための主な条件をまとめたものです。特に適用期限については、法改正により変更されている点に注意が必要です。

取得費加算の具体例

取得費加算がどのように税額に影響するか、具体例で見てみましょう。

例:相続した不動産を売却するケース

前提条件
  • 相続した土地の相続税評価額:3,000万円
  • 支払った相続税総額:1,000万円
  • 相続財産全体の課税価格:1億円
  • 土地の売却価格:5,000万円
取得費加算額の計算 1,000万円 × 3,000万円 ÷ 1億円 = 300万円
譲渡所得の計算
  • 取得費加算なしの場合:5,000万円 – 3,000万円 = 2,000万円
  • 取得費加算ありの場合:5,000万円 – (3,000万円 + 300万円) = 1,700万円

この例では、取得費加算を適用することで譲渡所得が300万円減少することが分かります。所得税率や住民税率によって異なりますが、税負担は大幅に軽減される可能性があります。

取得費加算の手続き

取得費加算を適用するためには、確定申告の際に必要な手続きを行う必要があります。

  1. 確定申告書の提出:譲渡所得の確定申告書に取得費加算額を記載
  2. 添付書類の準備:相続税の申告書や納税証明書のコピーなど
  3. 計算明細書の作成:取得費加算額の計算過程を明示
  4. 税務署への提出:確定申告期間内に提出

上記の手続きは、取得費加算を適用するために必要なステップです。準備すべき書類や計算方法は複雑なため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

よくある質問

Q1. 贈与税も取得費加算の対象になりますか?

一般的な贈与では取得費加算の対象とはなりませんが、相続時精算課税制度を適用した贈与については、納付した贈与税相当額を取得費に加算することができます。通常の暦年課税による贈与では適用されないため注意が必要です。

Q2. 取得費加算の申請期限はありますか?

取得費加算自体に申請期限はありませんが、財産を譲渡した年の確定申告期間内(通常は翌年2月16日から3月15日まで)に手続きを行う必要があります。確定申告を忘れると適用を受けられなくなる可能性があるため、注意しましょう。

Q3. 相続した株式を売却する場合も取得費加算は適用できますか?

はい、相続した株式を売却する場合も取得費加算の適用が可能です。株式の場合も、相続税評価額と支払った相続税額に基づいて計算します。特に上場株式の場合は、相続税評価額と実際の市場価格が異なることがあるため、専門家に相談することをおすすめします。

Q4. 取得費加算を忘れていた場合、過去に遡って適用できますか?

一定の条件下で、過去5年以内の確定申告であれば、更正の請求により取得費加算の適用を受けることができます。しかし、期限を過ぎると適用が困難になるため、財産を売却する際は事前に専門家に相談することをおすすめします。

Q5. 複数の相続人がいる場合、取得費加算はどのように計算しますか?

複数の相続人がいる場合は、各相続人が実際に納付した相続税額に基づいて計算します。具体的には、その相続人が納付した相続税額と、売却する財産の課税価格の割合で計算します。計算が複雑になるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

取得費加算は、相続や特定の贈与で取得した財産を売却する際に、支払った相続税や贈与税の一部を取得費に加算できる制度です。この制度を利用することで、譲渡所得税の計算上の課税対象額を減らし、税負担を軽減することができます。

取得費加算の適用には、相続や相続時精算課税による贈与で取得した財産であることが条件となります。計算方法は、支払った相続税額に、売却した財産の課税価格と相続財産全体の課税価格の割合を乗じるという形で行います。

この制度を活用するためには、確定申告時に必要書類を準備し、正確な計算を行う必要があります。計算が複雑な場合は、専門家に相談することをおすすめします。特に相続財産を売却する予定がある方は、事前にこの制度を理解しておくことで、将来の税負担を効果的に軽減することができます。

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