包括遺贈(ほうかついぞう)とは?

包括遺贈とは、遺言者が遺産の一定割合または全部を特定の人に贈与する遺贈の一種です。相続人以外の方に、相続財産の全部または一部を「3分の1」「2分の1」などの割合で遺贈する方法となります。

包括遺贈を受けた人(包括受遺者)は、相続人と同様の権利義務を持ち、遺産分割協議にも参加することができます。遺言で相続人以外の方に財産を残したい場合に有効な方法です。

包括遺贈とは

包括遺贈とは、民法第964条に規定されている遺贈の一種で、遺言者が遺産の全部または一部を一定の割合で指定して、相続人以外の人に贈与することを意味します。例えば「私の遺産の3分の1を友人Aに遺贈する」といった形で指定します。

包括遺贈を受ける人を「包括受遺者(ほうかつじゅいしゃ)」と呼び、この方は法定相続人と同様の権利義務を持ちます。遺産分割協議への参加や相続債務の負担など、相続人と同等の立場となります。

遺言者が自分の意思で法定相続人以外の人に財産を残したい場合に利用される重要な制度です。ただし、相続人の遺留分を侵害する場合は、遺留分減殺請求(現在は遺留分侵害額請求)の対象となる可能性があります。

包括遺贈の特徴 遺産の一定割合を指定する
包括受遺者の立場
  • 相続人と同様の権利義務を持つ
  • 遺産分割協議に参加できる
  • 相続債務も負担する
  • 相続税の申告義務がある

この表は包括遺贈の基本的な特徴と包括受遺者の立場をまとめたものです。包括受遺者は相続人と同様に権利と義務の両方を持つ点が重要な特徴です。

包括遺贈と特定遺贈の違い

包括遺贈と特定遺贈は、どちらも遺贈(遺言による財産の贈与)ですが、その方法と効果に大きな違いがあります。両者の違いを理解することで、遺言作成時にどちらを選択すべきか判断しやすくなります。

比較項目 包括遺贈 特定遺贈
指定方法 遺産の割合を指定(例:遺産の3分の1) 特定の財産を個別に指定(例:〇〇町の土地、預金口座番号△△△)
受遺者の地位 相続人と同様の権利義務を持つ 特定の財産のみを取得する権利を持つ
遺産分割協議 参加する権利がある 参加する権利はない
債務の負担 相続債務も割合に応じて負担する 原則として債務を負担しない

この表は包括遺贈と特定遺贈の主な違いを比較したものです。特定遺贈が「この財産をこの人に」と個別に指定するのに対し、包括遺贈は「遺産の〇分の△を」と割合で指定する点が最大の違いです。

包括遺贈のメリット

包括遺贈には、いくつかの重要なメリットがあります。遺言を作成する際に包括遺贈を検討する価値がある理由を理解しましょう。

  • 法定相続人以外の人に財産を残せる
  • 遺産の割合指定なので財産の増減に柔軟に対応できる
  • 包括受遺者が遺産分割協議に参加できる
  • 内縁の配偶者や事実婚のパートナーを保護できる
  • 財産リストの作成や詳細な財産調査が不要

包括遺贈の最大のメリットは、法定相続人以外の人に対しても法定相続人と同様の立場で財産を残せる点です。また、財産を具体的に特定する必要がなく、割合で指定するため、遺言作成後に財産状況が変わっても対応できます。

特に内縁関係のパートナーなど、法定相続人でない方を保護したい場合に有効な方法といえます。遺産分割協議にも参加できるため、自分の権利を主張する機会が確保されます。

包括遺贈のデメリット

包括遺贈にはメリットがある一方で、いくつかの注意点やデメリットも存在します。遺言作成時には以下の点も考慮する必要があります。

  • 相続債務も割合に応じて負担する
  • 遺留分を侵害する場合は減殺請求の対象となる
  • 遺産分割協議が複雑化する可能性がある
  • 相続税の申告・納税義務が生じる
  • 特定の財産だけを確実に取得したい場合には不向き

包括遺贈の大きなデメリットは、プラスの財産だけでなく、債務(借金など)も割合に応じて引き継ぐ点です。遺言者に多額の借金があった場合、包括受遺者もその負担を負うことになります。

また、法定相続人が持つ遺留分を侵害するような包括遺贈を行った場合、遺留分侵害額請求の対象となり、後に紛争が生じる可能性があります。相続人と包括受遺者の間で遺産分割協議が難航するケースもあります。

包括遺贈の手続き

包括遺贈を含む遺言が見つかった場合、包括受遺者はどのような手続きを行えばよいのでしょうか。主な流れを確認しましょう。

  1. 遺言書の発見と確認:遺言書を確認し、包括遺贈の内容を把握する
  2. 遺言書の検認自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認手続きが必要
  3. 遺贈の承認または放棄:包括遺贈を受け入れるか放棄するかを決定する
  4. 遺産分割協議への参加:法定相続人と共に遺産分割協議に参加する
  5. 各種名義変更手続き:不動産、預貯金など各財産の名義変更手続きを行う
  6. 相続税の申告・納付:相続税の申告期限(被相続人死亡から10ヶ月以内)までに手続きを行う

包括受遺者は相続人と同じ立場で遺産分割協議に参加します。相続放棄と同様に、包括遺贈も3ヶ月以内に限り放棄することができます。特に債務が多い場合には放棄を検討する価値があります。

包括遺贈を受ける場合も相続税の申告義務があるため、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。相続税の申告期限は被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内です。

包括遺贈の文例

遺言書に包括遺贈を記載する場合の文例を紹介します。遺言書は法的効力を持つ重要な文書ですので、表現には注意が必要です。

項目 文例
基本的な文例 「私は、私の全財産の3分の1を、友人の山田太郎(昭和50年1月1日生)に包括して遺贈する。」
複数人への分配 「私は、私の全財産のうち、2分の1を妻の鈴木花子(昭和52年4月1日生)に、4分の1を友人の佐藤次郎(昭和51年7月7日生)に包括して遺贈する。」
法定相続人と併用 「私は、私の全財産の3分の1を、内縁の妻である高橋明美(昭和55年10月10日生)に包括して遺贈する。残りの財産は、法定相続分に従い、私の法定相続人が相続するものとする。」

この表は包括遺贈を遺言書に記載する際の基本的な文例です。包括遺贈では割合を明確に記載することが重要です。受遺者の特定のため、氏名と生年月日を記載するのが一般的です。

遺言書の作成は専門的な知識が必要なため、公正証書遺言の作成をおすすめします。司法書士や弁護士などの専門家にご相談ください。

よくある質問

Q1. 包括遺贈と相続の違いは何ですか?

相続は法律上当然に発生する権利で、法定相続人が被相続人の権利義務を承継するものです。一方、包括遺贈は遺言によって初めて効力が生じ、相続人以外の人に遺産の一定割合を与える制度です。

ただし、包括受遺者は相続人と同様の権利義務を持ち、遺産分割協議にも参加できます。法律上は異なる制度ですが、実質的な効果はよく似ています。

Q2. 包括遺贈を受けると借金も引き継ぐのですか?

はい、包括遺贈では遺産の積極財産(プラスの財産)だけでなく、消極財産(借金などのマイナスの財産)も遺贈の割合に応じて引き継ぎます。これは包括受遺者が相続人と同様の権利義務を持つためです。

ただし、相続と同様に「限定承認」や「放棄」の手続きを取ることも可能です。被相続人に多額の借金があるようであれば、包括遺贈の放棄を検討する価値があります。

Q3. 包括遺贈で遺留分を侵害した場合はどうなりますか?

包括遺贈が法定相続人の遺留分を侵害している場合、遺留分権利者は包括受遺者に対して遺留分侵害額請求をすることができます。その結果、包括受遺者は金銭を支払うことで遺留分を保全することになります。

遺留分侵害額請求権は相続開始を知った時から1年、相続開始から10年で消滅時効となります。遺留分を侵害する可能性がある場合は、事前に専門家に相談することをおすすめします。

Q4. 包括遺贈と特定遺贈を併用することはできますか?

はい、遺言で包括遺贈と特定遺贈を併用することは可能です。例えば「不動産Aを友人Bに特定遺贈し、残りの財産の2分の1を友人Cに包括遺贈する」といった指定ができます。

ただし、特定遺贈が優先されるため、特定遺贈で多くの財産を指定すると、包括遺贈の対象となる財産が減少することになります。遺言作成時には両者のバランスに注意しましょう。

Q5. 包括遺贈を受けた場合、税金はどうなりますか?

包括遺贈を受けた場合も、相続と同様に相続税が課税されます。ただし、法定相続人以外の人が包括遺贈を受けた場合は、一般的に相続人よりも基礎控除額が少ないため、税負担が大きくなる可能性があります。

相続税の申告は被相続人の死亡を知った日から10ヶ月以内に行う必要があります。税金面での影響も考慮して、包括遺贈を検討することをおすすめします。

まとめ

包括遺贈は、遺言によって遺産の一定割合を相続人以外の人に贈与する制度です。包括受遺者は相続人と同様の権利義務を持ち、遺産分割協議にも参加できるという特徴があります。

特定遺贈が個別の財産を指定するのに対し、包括遺贈は遺産の割合を指定する点が大きな違いです。遺産の増減に柔軟に対応できるメリットがある一方、債務も引き継ぐというデメリットもあります。

法定相続人以外の人に財産を残したい場合、特に内縁関係のパートナーなどを保護したい場合に有効な方法です。ただし、遺留分を侵害する可能性がある場合は、事前に専門家に相談することをおすすめします。

包括遺贈を含む遺言書の作成は、法的な知識が必要です。遺言の効力を確実にするためにも、司法書士や弁護士などの専門家のサポートを受けながら進めることが望ましいでしょう。

相続は家族間のトラブルに発展しやすいテーマです。遺言者の意思を明確に伝えるためにも、適切な遺贈方法を選択し、わかりやすい遺言書を残すことが大切です。

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