廃除(はいじょ)とは?
廃除とは、相続において特定の相続人を相続から排除する制度です。民法で定められたこの制度は、一定の法定事由があり、家庭裁判所の審判を経た場合にのみ認められています。
相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱を行った場合など、相続させることが不適切と判断される場合に適用されます。
廃除の意味と基本的な考え方
廃除とは、法定相続人であっても、一定の事由により相続権を失わせる制度です。通常、親族関係にある法定相続人は自動的に相続権を持ちますが、廃除によりその権利を奪うことができます。
この制度は、相続制度の根底にある「家族の絆」という考え方に基づいています。被相続人に対して著しく不当な行為をした相続人に対して、相続という利益を受ける資格がないと判断するものです。
廃除は被相続人の一存だけで行えるものではなく、必ず家庭裁判所の審判を経る必要があります。これは廃除が相続人の権利を奪う重大な決定であるためです。
廃除の法定事由
民法では、廃除の事由として以下の3つが定められています。これ以外の理由では、廃除は認められません。
- 被相続人に対する虐待・重大な侮辱
- 著しい非行
- その他の著しい非行
上記の事由は、具体的にどのような行為が該当するかは事例ごとに判断されます。例えば、長期間の介護放棄、暴力行為、詐欺的行為などが該当することがあります。
虐待・重大な侮辱 |
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著しい非行 |
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上記の表は、廃除の法定事由となる行為の具体例を示しています。ただし、これらはあくまで一例であり、個々の事例において家庭裁判所が総合的に判断します。
廃除の手続きの流れ
廃除の手続きは、以下の流れに沿って進められます。
- 申立て:被相続人が家庭裁判所に廃除の申立てを行います
- 審理:家庭裁判所が事実関係を調査し、廃除の要件を満たすか審理します
- 審判:家庭裁判所が廃除を認めるかどうかの判断を下します
- 確定:審判が確定すると、廃除の効果が生じます
上記の流れは廃除の基本的な手続きを示しています。実際には、申立てに必要な書類の準備や証拠の収集など、細かな作業が必要となります。
申立ては被相続人が行うのが原則ですが、被相続人に判断能力がない場合は、成年後見人などが代わりに申し立てることもできます。
廃除と推定相続人の廃除の違い
廃除には、「相続人の廃除」と「推定相続人の廃除」の2種類があります。この違いを理解することが重要です。
相続人の廃除 | 被相続人が死亡した時点で相続人となる者を対象とします。相続開始後に効力が生じます。 |
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推定相続人の廃除 | 被相続人の生存中に、将来相続人となることが見込まれる者を対象とします。審判確定時から効力が生じます。 |
上記の表は、廃除の種類による対象者と効力発生時期の違いを示しています。推定相続人の廃除は将来の相続に備えた制度です。
例えば、親が生きている間に子を推定相続人として廃除した場合、その子は親の相続権を失います。ただし、この場合も家庭裁判所の審判が必要です。
廃除の取消し
一度廃除の審判が確定しても、状況の変化によっては廃除を取り消すことができます。例えば、廃除された相続人が被相続人と和解した場合などです。
廃除の取消しには、以下の手続きが必要です。
- 被相続人による取消しの意思表示:被相続人が廃除を取り消す意思を示します
- 家庭裁判所への申立て:廃除取消しの申立てを行います
- 審判:家庭裁判所が取消しを認めるかどうかを判断します
上記の流れは廃除取消しの基本的な手続きを示しています。廃除の取消しにより、相続人は相続権を回復します。
廃除の効果
廃除が確定すると、廃除された相続人には以下のような効果が生じます。
- 相続権の喪失:法定相続分に基づく相続権を失います
- 遺留分の喪失:遺留分請求権も失います
- 代襲相続の発生:廃除された相続人の子がいる場合、代襲相続が発生します
- 相続人の減少:相続人が減ることで、他の相続人の相続分が増加します
上記のリストは廃除による主な効果を示しています。特に注意すべきは、廃除されても代襲相続は認められる点です。
例えば、親が子を廃除しても、その子の子(孫)には代襲相続権があります。これは、廃除の効果が廃除された本人のみに及ぶためです。
よくある質問
廃除は遺言で行うことができますか?
いいえ、廃除は遺言だけでは行えません。必ず家庭裁判所の審判を経る必要があります。遺言に廃除の意思が記載されていても、家庭裁判所の審判がなければ効力はありません。
廃除の審判にはどのくらいの期間がかかりますか?
事案の複雑さによって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年程度かかることが多いです。当事者間で争いがある場合や、証拠の収集が難しい場合はさらに長期化することがあります。
廃除された場合、財産は一切相続できないのですか?
廃除された相続人は法定相続分を失いますが、被相続人が遺言で別途財産を与えることは可能です。ただし、廃除された相続人には遺留分請求権はありません。
廃除の申立てには費用がかかりますか?
はい、家庭裁判所への申立手数料や切手代のほか、弁護士や司法書士に依頼する場合は、その報酬が必要です。複雑な案件では数十万円程度の費用がかかることもあります。
被相続人が死亡した後に廃除の申立てはできますか?
いいえ、被相続人の死亡後は廃除の申立てはできません。廃除は被相続人の生存中に行う必要があります。死亡後に問題が発覚した場合は、相続欠格や相続人の排除など別の制度で対応することになります。
廃除についてのまとめ
廃除は、被相続人に対して虐待や重大な侮辱を行った相続人など、相続させることが不適切と判断される場合に、家庭裁判所の審判を経て相続権を失わせる制度です。単なる親子関係の不仲や意見の相違だけでは廃除の事由とはならず、法定の事由に該当する重大な行為が必要となります。
廃除には「相続人の廃除」と「推定相続人の廃除」の2種類があり、それぞれ対象や効力発生時期が異なります。また、状況の変化により廃除を取り消すこともできます。
廃除が確定すると、相続権や遺留分請求権の喪失などの効果が生じますが、廃除された相続人の子には代襲相続権があります。この点は、単なる相続放棄や相続欠格とは異なる重要な特徴です。
廃除は相続人の権利を奪う重大な決定であるため、慎重な判断と適切な手続きが求められます。相続問題で廃除を検討する場合は、専門家への相談がおすすめです。